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宮崎市から南へ延びる日南海岸は昭和40年代、新婚旅行のメッカとして名をはせたあこがれの地だった。また、日南市飫肥(おび)は、NHK連続テレビ小説「わかば」で脚光を浴び、さらには、焼酎ブームを支える生産地としても熱い視線が注がれている。そんな宮崎の多彩な魅力を求めて旅をした。
東京・羽田から飛行機で1時間40分。冬でも暖かい日差しに“太陽と緑の国”を実感する。宮崎は、昭和35(1960)年に昭和天皇の5女・島津貴子さん夫妻が新婚旅行で訪れたことでブームが沸き起こった。5年後、川端康成原作「たまゆら」のドラマ放映でさらに人気を高めた宮崎をハネムーナーとして訪れた定年世代も多いことだろう。往時のにぎわいを想像しながら、宮崎県商業振興課の亀澤保彦主幹の案内で一路南に向かった。
■日南海岸を行く
国道沿いのワシントンヤシが南国気分を盛り上げ、プロ野球の読売巨人軍のキャンプ地・サンマリンスタジアムを過ぎると、ほどなく青島入口に。
青島神社までは約800メートルを歩く。ヤシ科のビロウ樹5000本が生い茂る周囲約1キロの小島は、どことなくユーモラス。その中央にたたずむ青島神社は、日向神話「海幸彦・山幸彦」ゆかりの縁起があり、縁結びにご利益があるそうだ。青島は“鬼の洗濯岩”と呼ばれる波状岩に囲まれ、干潮時にはこの上を歩くこともできるという。
海を眺めながらのドライブは快適だ。南に行けば行くほど空が青くなり、静かにきらめく冬の海に日向灘の雄大さを感じる。中でも堀切峠は日南海岸随一の絶景ポイント。フェニックスの並木と、冬はポインセチア、夏はハマユウ越しに見る海はまるで絵はがきのよう。
峠を越えれば、間もなく日南市。海岸線沿いには、サンメッセ日南、鵜戸神宮など、見どころも多い。
日南市内の漁港・油津、大堂津を抜けた先の南郷町では、あちこちでビニールハウスが目に付く。ここで栽培されるマンゴーは完熟もの。その中から多くの条件を満たしたものが「完熟マンゴー『太陽のタマゴ』」として県から認定を受け、5月から7月にかけて市場に出回る。とろけるような果肉と甘さは宮崎の太陽がはぐくむのだろう。
大小の島々を眺める高台に建つ「道の駅なんごう」では、カツオのたたきの混ぜご飯風「カツオ飯」と、マグロの胃袋を甘辛く煮た「ごんぐり煮」を昼食に。どちらも漁師町ならではの逸品。県最南の串間市沖に浮かぶ幸島には、イモを海水で洗う野生の“文化猿”が約100頭、最南端の都久井岬には“御崎馬”と呼ばれる野生馬がいる。動物たちは旅人の心を癒やしてくれる。
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豫章館の庭園で織部燈籠の
説明をする野脇一喜わん |
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大手門酒造。斬新なボトルラベルの
「是々」を手にする國定憲太郎専務(右)
と奥田孝幸さん |
■小京都あり、
蔵元ありの日南
今度は一路北へ向かい、県内で最も多く蔵元が残っている日南市へ戻る。「それでも30年前と比べると半分です」と、迎えてくれたのは市内油津にある京屋酒造(TEL0987・22・2002)の社長・渡邊眞一郎さん(55)。天保5(1834)年創業の6代目で、県の酒造組合会長も務める。一次、二次仕込み共にかめ仕込みを守る貴重な存在で、これにより自然な発酵を促し、まろやかな焼酎ができるのだという。原料の甘藷(かんしょ)は有機肥料のみで、こうじ米も無農薬の“アイガモ農法”で取り組んでいる。こうしたこだわりから生まれるのは8割以上が芋焼酎。「甕雫(かめしずく)」「かんろ」など、年間25、000石を生産する。イモの皮むきから瓶詰め、ラベル張りまで、多くの人々が手間暇を掛けた焼酎作りの現場は、ブームとは別に、焼酎本来の力強さがあふれていた。
翌日は九州の小京都・飫肥へ。天正16(1588)年、伊東祐兵(すけたけ)の入城以来、14代280年に及び栄えた伊東家51,000石の城下町は、なかなか趣き深い。白壁の武家屋敷や蔵、こけむした石垣、コイが泳ぐ水路など往時の面影を残す飫肥城周辺を、日南市観光ガイドボランティア(TEL0987・31・0606、要予約)の野脇一喜(かずよし)さん(64)に案内してもらった。まずは豫章(よしょう)館へ。最後の藩主・祐相(すけとも)が、廃藩置県で知事に任じられた後、移り住んだ屋敷だ。枯れ山水の庭園にもソテツやシュロが配され、南国情緒たっぷり。裏手には飫肥杉の美しい山々と酒谷川が見え、「金魚鉢型の川は天然の要塞」(野脇さん)という意味をかみしめた。
堂々たる大手門は樹齢100年以上の飫肥杉で、くぎを1本も使わずに建てられた櫓(やぐら)門。昭和53(1978)年に復元された。城内には、藩主や側室の住まいだった「松尾丸」、伊東家の「歴史資料館」に、小学校もある。
また、飫肥はポーツマス講和条約全権大使だった小村寿太郎の生誕地でもある。城周辺には生家や旧藩校振徳堂、遺徳を顕彰した「国際交流センター小村記念館」なども。
本町商人通りまで出ると、大手門酒造(TEL0987・25・1701)がある。明治28(1895)年創業という歴史を持ちながら、インテリアデザインを手掛けるなど、挑戦を続けている。
それにしても、復刻版の芋焼酎「銀滴」のパワフルな味には圧倒された。伝統が醸し出す味がずしんと心に残った。
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