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認知症対応などで活用
成年後見制度を補完する制度として「遺言信託」(遺言による信託設定)が注目されている。約200万人といわれる認知症患者などに対し、成年後見制度を利用する人はまだ低水準。利用しやすい遺言信託の登場で同制度の普及に弾みがつきそうだ。
「成年後見制度を補完」
「認知症の配偶者や知的障害者の子を持つ方で遺言信託を利用するケースが目立つ」と話すのは蒲田公証役場公証人の遠藤英嗣さん。具体的な例では、高齢の夫が認知症の妻では財産管理ができないので二男を「受託者」、妻を「受益者」として遺言(遺言信託)した。夫の死後は、二男が認知症の母の生活費などに充てる信託財産を管理する。
信託とは、人を信じて財産を託す仕組みのこと。託す人を委託者といい、託される人を受託者、受託者が信託財産の管理・運用で出した成果を受け取る人を受益者と呼ぶ【別表参照】。
2年前に新信託法が施行されたのを機に、新信託法による遺言信託を選ぶ動きが出始めているという。遠藤さんは、「福祉型遺言信託と福祉信託契約は後見制度を補完する制度として利用できる」と今後、信託の利用が増えることを予想する。
介護保険制度と同年に発足した成年後見制度。同制度は法定後見と任意後見に、法定後見はさらに後見、保佐、補助の3つに分かれる。その利用件数はまだ低水準で、法定後見が2万件台(後見のみ)、任意後見の契約数は7120件(昨年)。約200万人といわれる認知症患者や増え続ける高齢者人口に比べ、まだ利用の動きは鈍い。実際、任意後見人を選ばないうちに判断能力がなくなり、法定後見を申し立てるケースが増えているという。認知症になった後では、介護保険による介護契約やデイサービスなどの契約はできない。判断力があるうちに後見か信託を選択しておきたい。
成年後見人や任意後見監督人を家庭裁判所が選ぶ成年後見制度より、「信託の方が委託者(遺言者)の考えで財産管理がしやすい」と遠藤さん。信託する財産(不動産と金融資産)の運用に不安がある場合は、例えば「金融資産を商品先物取引など投機に使わず銀行預金にする」と遺言に書くとよい。
「遺言信託」には遺言による信託設定と信託銀行による遺言作成・執行サービスの2つがある。 |
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