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井戸美枝さん |
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破たん時は契約条件に影響
米サブプライムローンに端を発した金融危機で米AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の日本の保険会社が売却される可能性がある中で、大和生命が経営破たんした。保険の不安にどう対応すればよいのか。
「あわてて解約したりしないことです」と話すのはファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)の井戸美枝さん。「生保売却の報道で不安になって解約や保険金の支払いを中止して契約が失効してしまうのは損。本人に既往症があれば新たな保険に加入できないこともあるし、年齢が高くなると保険金も高くなり、老後のプランが狂ってしまうことも」。
AIGは日本でアリコジャパン、AIGスター生命、AIGエジソン生命の生保3社と損害保険会社のAIUの事業を展開している。サブプライム関連の損失で経営不安となって日本での生保事業を売却する方針が報道されているが、売却後も経営主体が代わるだけなので契約者個人の保険商品の契約内容はまったく変わらないと言う。
だが、大和生命の場合のように生保の破たんとなると話は別だ。
保険商品は生命保険契約者保護制度で保護され、破たんした時点の責任準備金などの90%までが補償されるものの、保険契約が新会社に移行する際に責任準備金の減額や予定利率など基礎率の変更が行われる可能性があります。
このため保険金額の減額や保険料が上がる可能性があり、契約移行後一定期間内に解約すると契約金条件変更後の解約返戻金などからさらに一定の割合で削減される制度もある。
過去のケースをみると破たんした生保の資産内容によって責任準備金の削減率はまちまち。削減率が0%だった東京生命のケースもあれば千代田生命などのように10%削減された生保もあった。
さらに影響が大きいのは予定利率(資産運用による一定の運用収益を見込み、その分を保険料から割り引く割引率)。現在の引き下げ後の予定利率は3%を基準にそれ以下の利率となるが、これも破たん生保の資産残高によって違い、第百生命は1.00%で東京生命は2.67%だった。
50歳以上の人は予定利率が5%などのときに契約したものが多い。「生保の破たんで保険金をいくらもらえるか、いくら減るかという点に目が行きがちですが、新会社へ契約が移行した後は保険料をいくら払うかも注意すべき」と井戸さん。
予定利率が以前より下がれば支払う保険料は高くなる。
「生保とは長い付き合い。会社の格付などを参考に健全な生保を選ぶことが大切です。その後はあちこち乗り換えたりせず、いま加入している保険をベースに見直していくといいですよ」と井戸さんはアドバイスする。
以下、生命保険の破たんについてQ&Aでまとめた。
Q.生保が経営破たんした際に90%が守られる責任準備金とは。
井戸「責任準備金とは、生命保険会社が将来の保険金、年金などの支払いに備えて、保険料や運用収益など税源として積み立てている準備金のこと。解約返戻金の原資とほぼ同じというイメージ。解約返戻金は契約者が保険を解約した際に受け取るもの。」
Q.保護制度で全商品が補償されるのか。
井戸「個人と法人の契約はおおむね補償される。商品でいうと養老保険や終身保険、個人年金保険、定期保険、それに変額個人年金や変額年金も補償の対象になるが、確定拠出年金や企業年金、国民年金基金など企業年金系は補償の対象外。」
Q.破たんで保険金の減額幅が大きくなる商品は?
井戸「定期保険など掛け捨て型の保険ではもともと責任準備金の額が少なく、責任準備金などの削減や予定利率の引き下げの影響は少ない。しかし、個人年金保険や養老保険、終身保険など貯蓄性の高い保険ほど責任準備金の積立額が大きいので、破たんの影響は大きい。ただし、養老年金の払込が完了し満期を迎えたのに預けっぱなしにしている場合は、そのままにしていても問題はなく、全額補償される。」
生命保険会社が破綻した場合の保険契約の取扱いに関する問い合わせは生命保険契約者保護機構TEL03-3286-2820、詳細はホームページ(http://www.seihohogo.jp/)で。 |
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