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  埼玉版 令和7年6月号  
“ピアノ&太鼓”で新しい「音」を  太鼓奏者 林英哲さん

弟子たちでつくる「英哲風雲の会」の活動を支えるなど、後進の育成にも情熱を注ぐ林さん。これまで芸術選奨文部大臣賞や旭日小綬章などに輝き、2022年には福岡アジア文化賞の「大賞」を受賞した。外国籍の受賞者が多い中、林さんの前の日本人大賞受賞者は、アフガニスタンなどで人道支援活動を行った中村哲。「『そういう、すごい人に行く賞が僕に…』とびっくりした」。後に海外からの推薦が多かったと聞き、「『僕の音楽は国境を超えて理解されている』と、あらためて励まされる思いでした」
7月、ジャズピアニスト山下洋輔とコンサート開催
 日本の太鼓を舞台芸術の域にまで高めてきた林英哲(えいてつ)さん(73)と、ジャズピアニスト・山下洋輔とのコンサート「乾坤一擲(けんこんいってき)」が7月、都内で開催される。初共演から40年。当初は“異種格闘技戦”とも呼ばれたが、すぐに「あうんの呼吸」となった2人は、互いの音に感応し合い“新しい音楽”を創ってきた。どんな即興にも面白がって応える山下とのライブには、「大船に乗ったような気持ちで臨める」と林さん。「予定曲はあっても、それがステージでどう展開していくか…。そこから湧き上がる興奮と感動は『生(の演奏)』ならではです」

 山下洋輔が弾く「ボレロ」は、ラベルの名曲が大胆にアレンジされた“ジャズファン必聴”の人気曲。1985年の初共演時、太鼓の独奏奏者としてはキャリアが浅かった林さんは、山下の変幻自在なフリージャズに「畏怖に近い感情を抱いていた」と明かす。「ボレロ」のピアノに懸命に合わせていたが、「最後にミスをしてしまった」。「練習と寸分たがわぬ演奏」が身に染みていた林さんの謝罪に、山下は笑ってこう返した。「『きょうはああいうふうにやりたかった』と思えばいいんです」。林さんは「『失敗ではなく、そこで新しい何かが生まれた』という捉え方。『音楽に決まりきった正解はない』と目を見開かされました」

 広島県東城町(現・庄原市)に生まれた林さんは、美術家の横尾忠則に憧れ18歳で上京。71年、美術大学志願から進路を変え、新潟・佐渡に発足したばかりの太鼓芸能集団「おんでこ座」(後に「鬼太鼓<おんでこ>座」に改称)に加入した。「強引に誘われて…、できるだけ早く美術の道に戻るつもりだった」。ところが、中学・高校時代、ドラムをたたいていた林さんは、たちまち集団の中心に。伝統芸能・郷土芸能の太鼓をショーアップしたパフォーマンスは海外公演でも喝采を浴び、当時、ボストン交響楽団の音楽監督を務めていた小澤征爾の目に留まった。

 小澤の発案で「鬼太鼓座」とオーケストラのための太鼓協奏曲が作られ、76年に小澤の指揮で同楽団と共演。「小澤さんに恥をかかせられないと…。初めて『太鼓の世界で生きていく』と腹をくくった」。世界的指揮者、レナード・バーンスタインらの激賞も受けた林さんは回想する。「日本の太鼓が、海外でこれほど評価されるとは…。僕自身、すごく驚きました」

独奏の「太鼓音楽」
 だが82年、30歳の誕生日を目前に集団を離脱。「(集団をめぐる)トラブル続きで疲れてしまった」と言う林さんは「太鼓をやめようと考えた」と振り返る。しかし、周囲の叱咤(しった)激励を受け、前例のなかった独奏奏者としての活動を決意。高い櫓(やぐら)台に載せた大太鼓に正対しバチを高々と掲げる「正対構え」、大きさや材質が異なる太鼓群の同時打ち…。打法や演出、衣装、道具類など、全て自ら創るステージは、やがて芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えた「太鼓音楽」と、国内外で広く認知された。84年にはニューヨークのカーネギー・ホールで太鼓を打ち鳴らし、以後はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団など各国のオーケストラと数多く共演。そのステージは、日本と欧米にとどまらず、アフリカや南米、中東、オーストラリアなどにも広がった。作曲・編曲もする林さんは、もともと美術家志望とあって、「絵を描くような発想で音を重ね、ステージ構成を練り上げる」。90年代からは伊藤若冲や藤田嗣治ら美術家がテーマの舞台作品を手掛け、海外公演も成功させた。「日本人が日本の伝統に根差して生み出すものが、人種や民族、宗教の垣根を越えて喜ばれる。『オリジナリティーには力がある』と今は確信を持って言える」。山下と行動を共にしたアフリカツアーの記憶も鮮明だ。「(聴衆の)みんなが踊って歌って…、ロックのコンサート会場のようでした(笑)」

20余年ぶりの「乾坤」
 山下との共演はこれまで100回近く。03年にはデュオ・アルバム「KEN—KON」を発表し、「乾坤価千金(あたいせんきん)」と銘打った全国ツアーを繰り広げた。それから20余年…。今春、全曲新録音によるオリジナルアルバム「英哲 THE 大盈(たいえい)」を発表した林さんは、「演奏となると年齢は気にならない。それは83歳の山下さんも同じはず」とよどみない。7月の「乾坤一擲」では、「ボレロ」に加え、ピアノと大太鼓が“格闘”する「大団円」など、人気の定番曲を中心に聞かせる。「ステージは2人の感性の赴くまま。ゴールが見えない長距離に挑んでいる感じなのに、なぜかバテない。演じているうちに体内にパワーが湧いてくる」。太鼓との出合いは「偶然」だったが、演奏歴は既に半世紀を超える。今の心境をこう話す。「葛藤も多かったけれど、今は『太鼓が好き』と言える。未開拓の分野で新しい表現の創造という自己実現ができた充実感があります」


photo by Sakae Oguma
コンサート「乾坤一擲」
 7月15日(火)午後6時、東京国際フォーラム(JR有楽町駅徒歩1分)ホールCで。

 ピアノ:山下洋輔、太鼓:林英哲。予定曲:ラベル「ボレロ」、林英哲「大団円」、山下洋輔「アクプントゥーラ」ほか。

 全席指定。S席9000円、A席8000円。ジャムライス Tel.03・3478・0331

◇ 林英哲さんアルバム情報 ◇
「英哲 THE 大盈(たいえい)」 (アールアンフィニ、3850円)

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