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枝窪歩夢さん |
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裁判以外の手法に注目
消費者の“お金”に関するトラブルが急増している。こうしたトラブルを短期・低額で解決する手段として注目されているのが、「ADR」という裁判以外での紛争解決方法だ。トラブルが多い現代の“駆け込み寺”として期待されている。
ADR(AlternativeDispute Resolution)とは、「裁判外紛争解決手続き」という意味で、裁判によることなく、法的なトラブルを解決する方法のこと。
扱っているのは証券あっせん・相談センターなどの各機関で、国民生活センターでも4月1日(水)から専門機関が開設される。どんな解決方法なのか─。
東証2部銘柄の新規公開時に公募に応じた60歳の女性。その後キャンセルを申し出たが、証券会社の担当者に「キャンセルできない」と言われ、損失を被った49万円の賠償を求め、証券あっせん・相談センターに申し立てた。あっせん委員は、「証券会社側に説明不十分な点はあるが、申し立てた女性にもキャンセルの意思表示に不明確な点があった」として、証券会社が女性に25万円を支払うことで和解した。
同センター所長の金子得栄さんは「証券取引に詳しい弁護士があっせん委員のため、裁判に比べて非常に低コストで、迅速に解決ができます」と話す。あっせんした半分程度が和解している。
同センターは、証券会社などで構成する日本証券業協会の一部門で、2008年6月にADR機関として唯一ADR法に基づく法務大臣の認証を取得している。取り扱うのは、同協会会員の行う“有価証券取引”に関する顧客からの相談や苦情、申し立て。あっせん委員による「あっせん」は請求する損害賠償金額に応じて2000円〜5万円の申し立て金がかかる(苦情相談は無料。問い合わせはフリーダイヤル0120-25-7900)。
一方、4月1日にスタートするのが国民生活センターのADR機関。同センターに寄せられた相談の中で、「重要消費者紛争」と認められたものを紛争解決委員会(委員15人)で和解の仲介や仲裁により解決を図る。相談や仲介は無料。
最近の消費者からの年間相談件数は、07年度までの11年間で当初の2.6倍の105万件に増加。中でも金融・保険サービス関係が4倍強の17万2000件弱(07年度)ある。証券あっせん・相談センターでも、あっせん申し立て件数は20年度が約260件と過去最高になりそうで、全体の相談件数も20年度は過去最高の8500件に達する見通しだ。
国民生活センターADR準備室の枝窪歩夢(あゆみ)さんは、「消費者の権利保護法が整備される中で、保険や投資信託などの銀行での販売、金融商品の複雑化、それに貯蓄から投資へ、という流れが相談件数の増加につながっているのでは」と話す。
相談の中身で最も多いのは、「商品の仕組みやリスクの説明不足と高齢者に複雑な商品を販売したこと」(証券あっせん・相談センター)、「サラ金・フリーローン関係」(国民生活センター)。相談者はシニアが多いという。
「どのADR機関に相談していいか迷う場合は、とりあえず近くの消費生活センターに電話をかけてみてください」と枝窪さん。1人で悩まずに、相談してみると解決方法が見つかるかもしれない。
国民生活センターのADRについての問い合わせ
総務部ADR準備室:TEL03-5475-1979 |
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