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安田まゆみさん |
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阿部純二さん |
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意外に少ない妻の年金額
年金分割が施行されたのが2年前の2007年4月。当時は、「これを機に“熟年離婚”が増える」と予想されたが、実際は減少している。この背景には、「妻がもらえる年金額が予想以上に少ない」ということがあるらしい。年金分割制度導入後、妻の年金額はいくらになったのか─。
厚生労働省(平成20年「人口動態統計の年間推計」)によると、離婚件数は02年の28万9836件をピークに減少、08年は約25万1000件に落ち込んだ。
また、年金分割の施行以後、相談件数は結構あるが、実際に年金分割を請求したのは約1万5000件(07年4月〜08年7月累計、社会保険庁調べ)。関心の高さに比べ請求が少ないのは、「思ったより妻のもらえる年金額が低いからでは」と話すのはファイナンシャル・プランナーの安田まゆみさん。
安田さんによると、一般的な生涯平均年収500万〜600万円のサラリーマン世帯の夫の老齢厚生年金額(報酬比例部分=2階部分)は約120万円。夫が30歳の時に結婚し婚姻期間37年とすると、夫婦で年金を半分に分割しても妻がもらえる年金額は年48万6000円程度。
専業主婦の妻が離婚した場合、65歳から受け取る国民年金は満額でも年間79万2100円(月額6万6000円)。分割した年金と合わせても年127万8100円にしかならない。
07年4月に施行された年金分割は、婚姻期間を対象に夫の厚生年金や共済年金など(報酬比例部分)の加入記録を最大2分の1に分割し、妻名義に移し替える。ただし、分割やその比率は夫婦の合意による。合意できない場合は、家庭裁判所の決定。
さらに08年4月には「3号分割」(3号とはサラリーマンの妻=第3号被保険者)が成立、第3号被保険者であった期間を対象に合意に関係なく夫の厚生年金の報酬比例部分を妻と2分の1ずつに分割する。
「よくあるのが、夫の年金額をそのまま分割すると勘違いすることです」と話すのは社会保険労務士の阿部純二さんだ。
実際に年金分割の対象となるのは、あくまで婚姻期間中の厚生年金の加入記録(標準報酬記録)。
さらに、「注意しなければいけないのは、妻が65歳前に離婚した場合、“振替加算”は付かなくなること」(阿部さん)。夫の厚生年金に、妻の“扶養手当”ともいうべき加給年金が付いている場合、妻が65歳になると、妻が受給する老齢基礎年金に“振替加算”される。ちなみに“振替加算”年額は1942年4月2日〜43年4月1日生まれの女性で13万600円。
離婚で年金がいくら分割されるかを事前に知りたい場合は、社会保険事務所に年金手帳、戸籍謄本を持参し、「年金分割のための情報提供請求書」を提出する。1人で請求することも、夫婦で請求することもできる。
年金分割についての問い合わせは最寄りの社会保険事務所へ。 |
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