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山崎 元さん |
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経済評論家・山崎元さんに聞く
昨年末ごろから、ギリシャの財政が危機的状況と見られて始まったユーロの金融危機。ところが国の借金を示す債務残高の対GDP(国内総生産)比率がギリシャの約1倍(欧州委員会)を大きく上回る約2倍(財務省)となっているのが日本。そのため日本の財政事情について注目が集まっている。果たして、日本はギリシャのようになる危険性があるのか?経済評論家の山崎元さん(楽天証券経済研究所)に日本の国債について聞いた。
国債とは、平たく言えば国の借用証のこと。10年なら10年満期で元金に利息を付けて返還すると政府が約束している。今年度の日本の予算では、税収など歳入の半分以上に当たる約44兆円(財務省)が国債でまかなわれた。国債という借金で支出をまかなう状態が30年以上も続き、日本の借金は約900兆円(財務省)もある。このままでは日本もギリシャの二の舞に見えるが…。
日本の国債購入者「国内」が90%以上
しかし山崎さんは、「日本の国債がただちにデフォルト(債務不履行=返済期限がきても借金が返せない)になるようなことはありません」ときっぱり。
その理由は、「日本の国債の保有者がゆうちょ銀行、国民年金、厚生年金などの公的年金、民間銀行、生命保険会社、それに個人などの日本国居住者・法人で約94%を占めているから」(山崎さん)。
日本の場合、主に国内でお金を集めて国内に支出している。要は、日本という一家の中で父親から長女が借金して自分の子どもに貸しているような形であり、約70%を海外からの購入に頼るギリシャや同40%のアメリカとは大きく違う点だという。一方で、国債の消化余力が乏しくなっており、近い将来、消費税増税が必要との見方もある。
国際金融機関など海外の購入比率が高いほど、その国の返済能力は厳しく見られる。危ないと見られたらその国債は売られて、他国の通貨や国債に投資し直す。現に、今回のギリシャ発の金融危機で、円が買われユーロや米ドルに対して円高となった。これは、「円=日本経済の信用力の高さの証明」と山崎さんは見る。約1400兆円と世界でもトップクラスの個人金融資産や調和を優先する国民性などが日本の強みと海外からは見られている。
債務増え続ければデフォルトの恐れ
ただ、日本の状況に問題がないかというとそうではない。「債務がこのまま増え続ければ」ということが前提だが、そうなると将来、政府が借金を返せないこと(=デフォルト)も起こり得る。すると円の信用力が急激に低下し、国債価格が暴落(長期金利の急騰)、ハイパーインフレーション(超インフレ)が起きて物価高騰を招く。第2次世界大戦敗戦直後の日本でも起こった。
こうなると、「自分は国債なんて1円も買ってないから国債が暴落しても大丈夫」とは言えない。ましてや、ゆうちょや民間銀行、生命保険などの金融機関は個人から預かったお金で国債を大量に購入している。これら金融機関が保有する国債の価値が大きく目減りすれば預貯金を払い戻すこともできなくなる—。
危険度感じ取る3つのポイント
では、どこまでが国の適正な債務水準なのか。山崎さんは、「その基準を国が設けていないし、金融専門家でも論議されたことがない」と話す。そこで山崎さんに、国の経済の危険度を感じ取るポイントを挙げてもらった。(1)長期金利の上昇(2)物価上昇(3)円安—、この3つが同時に起こって、それが長期化するようだと黄信号。「円が紙切れ同然になる」ということはないが、銀行などに預けている預貯金が実質、目減りし始めることも。
仮に円の危険信号がともった時に慌てないためには、「預貯金や国債だけとか株や金だけというのではなく、資産を分散しておくことが大切」と話す。物価、金利、為替レートの動きに、日ごろから関心を持っておくことがよいようだ。 |
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