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「ポイントを付与する目的が消費だけでなく、環境への貢献や節電などを意図したものにますます広がっていく」と予想する冨田さん |
商品などを購入したら付いてくるポイント。最近では、家電エコポイントなど政府系のポイントも増え、発行規模は民間だけで年間1兆円を超えているという。消費者への生活行動に大きな影響力を持つようになったポイント。近頃のポイント事情は?
震災の義援金に
「ポイントがすっかり定着した」と強く印象付けられたのが、東日本大震災被災者へ義援金としてポイントを寄付する動きだ。フィットネスクラブやレストランなど約3万5300店舗と提携する共通ポイント大手「Tポイント」(運営はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株))では「これまで1億5600万円(1ポイント1円換算)が義援金として福島、宮城、岩手に加えて茨城、千葉、栃木各県に寄付された」(Tポイント広報)と言う。個人にとって、日常の消費でたまったポイントはある意味“もらいもの”。現金よりも寄付しやすいという側面がある。なお、Tポイントでは7月末まで義援金を受け付けており、寄付の総額はさらに増えてくる見通しだ。
政策との連動も
ポイントの動向に詳しい野村総合研究所(NRI)のコンサルタント、冨田勝己さん(35)は、「ポイントのために消費行動を変える人たちが年々増えている」と話す。「どうせ物を買うならポイントが付く店で買った方が得」という考えだ。こうした消費者の行動パターンは逆に政府や企業からある目的に誘導されやすいともいえる。
例えば、総務省が推進した地デジ化。家電エコポイントの規模縮小間際には地デジ対応テレビを購入しようと大勢の消費者が家電量販店に押しかけた。
個人消費刺激策として国土交通省がつくった住宅エコポイントや、環境対策として環境省が設けたエコアクションポイントなど、政策と連動した政府系のポイントが増えている。「政府の補助金や住宅控除などは1件ごとの額は大きいが対象者となる人数は限られる。これに対してポイントは1件ごとに小さな額でより多くの人々に影響を与えられる」と冨田さん。また、企業でも消費者の節電意識を高めるために、節電した人を対象にポイントを付与する動きも出始めている。
「踊らされずに」
生活のいろんなところで付くようになったポイント。それだけに消費者は、ポイントに踊らされずに、使えるポイントかどうかを見極めることが大切になっている。
「1、2カ月に1回しか行かない店でポイントカードを作ってもカード枚数が増えるだけ。ポイントが付くからお得なのではなく、ポイントは使ってこそお得ということをよく分かってほしい」と冨田さんは話す。
いろいろな場面で
民間のポイントで顕著なのが、数多くの提携先で利用できる共通ポイントの勢力拡大。中でも二大勢力となってきたのがTポイントと「Ponta(ポンタ)」(運営は(株)ロイヤリティマーケティング)だ。カードを所有している数は「Tポイントが約3700万人、ポンタも約2000万人」(冨田さん)といわれており、多くの人がどちらかのポイントカードを持っている。
ここまで勢力拡大したのは、生活のいろんな場面でポイントを使えるから。例えば10種類のポイントカードを持っていた主婦、これまで1年間で各200ポイント(1ポイント1円で換算して200円相当)しかたまらず、使わないまま有効期限が切れることも多かった。それが共通ポイントカードにすると、年間2000ポイント(2000円)たまることになり、お得感が増すことに…。
Tポイントと提携しているスポーツクラブやレンタルショップなどを利用している都内在住の主婦Aさん(48)。ある程度ポイントがたまるとTポイント提携のカフェで友人とコーヒーを飲むのが楽しみと話す。
集約化進む?
「1989年にヨドバシカメラが始めた」といわれるポイントカード。「規模は民間だけで約1兆円超」(冨田さん)と、1兆円を超えるペースは電子マネーより早いという。
しかし、20年以上が経過して消費者はポイントにより利便性を求めるようになった。一方で、ポイントを消費者に提供している企業の側も、販売促進費の一環としてポイントを設けているため、集客や利益にどれくらい効果が出ているかを見極めるようになってきている。
今後、数多くのポイントが乱立する群雄割拠の状態から、集約化の方向になってくる見通しだ。 |
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