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「若いころから年金生活を目標に仕事をしている欧州の人々に比べ日本人は定年後の生活目標が定まっていない人が多い」と話す園部照雄さん |
現役時代に仕事で海外に赴任していた元ビジネスマンたちは多い。しかし、定年後にかつて駐在していた国に対し年金の受給申請を怠るケースが結構多いという。特に、欧州の中でも年金受給額が高いフランスでは、「有資格者のうち受給しているのは15%程度」と関係者は推定、「大半の人が資格はあるのに申請していない」と話している。
「意外と高額」の例も
「税金を払ったまま帰国し、有資格者なのにフランス政府に請求しないのはもったいない」と話すのは、フランスクラブ(港区)を主宰する園部照雄さん(69)。同クラブは、フランス駐在経験者の知識や経験を生かそうと提案している有料会員組織。園部さんは、2000年まで11年間フランスに滞在し日本の新聞を海外に届ける仕事をしていた。その経験をもとに01年から始めたのが、フランス滞在経験のある元ビジネスマンの年金申請手続きだ。
「受給率15%」
園部さんによると、日本人のフランス年金受給資格者(65歳以上)は推定1万人程度。このうち実際にフランス政府に申請し受給しているのは約1500人に過ぎないという。
フランスで3カ月以上就労し年金に加入していた場合、受給資格がある。受給資格年齢は段階的に引き上げられているが、前倒しでも受給可能だ。
それなのに受給有資格者の大半が申請していないのはなぜか。
「日本のサラリーマンが毎月受け取る給料はすでに会社経由で税金が支払われているのがほとんど。そのため海外においても納税意識が薄く、外国政府から年金をもらえることを知らない人が多い」と園部さん。それに、日本人の滞在期間は大体3〜4年。その間に税金を支払っていたとしても「たいした金額にならないのでは」と思いがちなことも理由の一つとなっている。
ところが滞在3〜4年で年50〜60万円(年金はユーロ建て。為替の変動で円の手取り額も変化する)の支給を受けるケースが多い、と園部さん。「金額をいうと、たいていの人が『本当にそれだけもらえるの』と驚く」と笑う。フランスはベルギーやオランダ、イギリスなどに比べざっと倍の税金を納める税金の高い国として知られ、それだけ受給額も高くなるという。
フランスの年金には基礎年金、補助年金、カードル年金の3種類がある。現地法人で管理職として赴任することが多い日本人は、ほとんどがこの3種類の年金に加入している。そのため数年しか滞在していなくてもまとまった年金額になるというわけだ。
園部さんは「年金をもらわないままだと国家的損失にもなる」とも話す。申請していない人が8500人と仮定して、年50万円を20年間もらうとすると合計850億円。「このお金を日本で消費すれば、日本経済にそれだけ寄与できる」(園部さん)というわけだ。
12カ国と保障協定
心当たりがある人は、最寄りの年金事務所や年金相談センターで相談を。フランスを含め日本と社会保障協定を結んでいる国はドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランドと全部で12カ国(11年1月現在)あり、年金事務所などで年金申請書提出が可能。
フランスの場合、年金事務所で扱うのは3種類のうち基礎年金だけになるが、当時の年金番号を忘れてしまった場合も、あきらめずに会社名や住所を書いて申請すればフランス政府が調べてくれる可能性がある、という。
補助年金やカードル年金は民間会社に委託されているため、個人で申請することになる。この場合、有料になるがフランスクラブを運営するアミ・インターナショナル(港区、ファクス03・5777・5288)などが代行手続きを行っている。 |
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