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日本国債、なぜ低金利? 千葉商科大大学院教授・伊藤宏一さんに聞く |
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「国債の消化を外国に頼る国と自国で消化する国との差はきわめて大きい」と伊藤さん |
ユーロ圏で起こった債務危機。政府の債務残高の増加がデフォルト(債務不履行)を引き起こすのではと懸念され、ギリシャ国債の長期金利(新発10年物国債の流通利回り)は30%以上に上昇(既発国債価格は下落)した。一方、GDP(国内総生産)比200%を超え世界でも飛び抜けた債務残高水準にある“借金大国”日本。しかし、日本国債の長期金利は1%前後で低位安定している。なぜなのか。千葉商科大学大学院教授の伊藤宏一さんに聞いた。
「国の借金、増え続けると危険」
注目されているギリシャの財政。償還期限を迎えたギリシャ政府発行の国債が償還できない(デフォルト)となれば、イタリアなどほかのユーロ経済圏の国債にも影響を及ぼすことは必至だ。それが、きっかけとなって日本を含む世界主要国の長期金利が上昇して、すでに発行されている国債価格が下落すると懸念されている。
このギリシャの債務はGDP比160%の水準、これに対して日本は200%を超える。この数字だけをみると、日本がギリシャより金利が高くてもおかしくはない。なぜ、日本は低位安定しているのか。
「それは、日本の銀行が国債を買っているからです」と伊藤さんは話す。銀行はわれわれ国民の預金を企業に貸し出そうとするが、デフレ下で企業の設備投資意欲が低いため借り手が少ない。そのため銀行は運用を図るために国債を購入し、間接的に国民が国債を購入しているという構図になっている。
巨額の対外純資産
銀行が国債を購入している資金は国民の預金だけではない。企業が銀行に預けた余剰資金も間接的に国債を買い支えている。さらに巨額の海外資産もある。
「日本の対外純資産は250兆円以上あるといわれています。そこから生み出される利子や配当収入が月1兆円、年間では12兆円にもなるのです」と伊藤さん。
一方でギリシャは発行する国債のほとんどを外国が買っている。そのため政情不安や財政危機ということがほかの国に伝わると新発国債の金利を上げないと売れないため、金利が高くなる(既発国債の価格は下落)というわけだ。
そもそも、こうしたユーロ危機が起こったのは2008年のリーマン・ショックが原因だ、と伊藤さんは言う。「この時、金融危機を食い止めるために各国が財政出動をしたんです」。国債を大量に発行して得た資金で内需拡大や雇用対策などを行い、危機は収まったかにみえた。しかし、今度は各国政府の債務が大きな問題になってしまったのである。
ローン負担増も
金利が上昇するとわれわれの生活に及ぼす影響は大きい。特に住宅ローンを変動金利で組んでいる場合、金利が上昇して返済負担が重くなったりする。
日本では、今のところ国債を新規に発行しても銀行などが購入しているため、ギリシャのような状況になるのは予想しにくい。しかし、「5年、10年先となると話は別。このまま借金が増え続けるのは危険」と伊藤さんは警鐘を鳴らす。「1400兆円といわれる個人金融資産がだんだんと目減りしていき、今後3年〜5年で新発国債を購入しきれなくなるという見方がある」と話す。そうなると海外からの購入に頼らざるを得なくなったギリシャの二の舞いだ。
それまでにやらなくてはいけないのが財政再建。国の予算は年間支出が90兆円を超えているのに収入は大幅に下回っており、およそ半分を国債という借金で賄っている状況。ファイナンシャルプランナー(FP)でもある伊藤さんは、「収入の4割が借金返済になると家計は破綻する」と話す。そうならないための支出削減策として、国会議員の定数減や公務員給与引き下げ、国の無駄な資産売却などを挙げている。 |
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