|
介護や医療サービス 入居契約前に確認を
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)制度が始まってまもなく2年になろうとしている。高齢者世帯が増加する中で高齢者住宅がデンマークや英国などの諸外国と比べ不足しているのが日本の現状。このため政府は、「介護や医療と連携して高齢者の生活を支援するサ高住の供給を促進することが不可欠」と判断している。ただし、「サ高住は施設によって同じ棟内に設置する介護事業者や医療サービスの質にバラつきが大きい」という見方もあり、入居を決める前に確認することが大切だ。
サ高住が登場してからまだ日が浅く社会の認知度が低いせいか、「サ高住は高齢者が十分な介護や医療サービスを受けて、安心して住める住宅なのか」という声も一部には聞かれる。
安否確認と生活相談
しかし、そもそもサ高住における「サービス」とは安否確認と生活相談のこと。社会福祉法人や医療法人、指定居宅サービス事業所職員などケアの専門家が少なくとも日中同じ棟内に常駐し、これらのサービスを提供できる体制ができていればよい。サ高住内に併設する介護や医療サービスの質までは登録基準で定められていない。
厚生労働省老健局高齢者支援課の山口義敬・高齢者居住福祉専門官は、「サ高住で行われるサービスは安否確認と生活相談だけ。後は介護保険や健康保険を利用するサービス。その意味では在宅で訪問介護や医療を受けるのと同じなんです」と話す。ただ、サ高住には通常、同じ建物内に介護や医療機関が併設されていることから、これら介護や医療機関の質は入居者にとって関心が高い。
安否確認などのほかにサ高住の利点といえば、「たとえ長期入院や入居者の介護度が上がっても事業者が一方的に住み替えや退去を迫ることはできない」(山口専門官)ということ。契約により高齢者の居住の安定が図られている点は安心だ。
高齢者の居住の安定確保に関する法律(改正法、平成23年10月20日施行)により始まったサ高住の登録制度。建設計画も合わせるとサ高住として登録されているのは現在、10万9239戸(平成25年3月31日、有料老人ホームを含む)。
補助や税優遇
政府は住生活基本計画によって今後、サ高住の供給促進を図る方針。そのために例えば、サ高住の建設や改修費に対して、国が民間事業者や医療法人、社会福祉法人、NPOなどに新築費用の10分の1(上限100万円/戸)を補助するほか、所得税や法人税で5年間40%の割増償却を認めるなどがある。
サ高住には登録基準があり、この基準をクリアしなければならない。ハード面では(1)床面積原則25平方メートル以上(2)構造・設備が一定の基準を満たすこと(3)バリアフリー(廊下幅、段差解消、手すり設置)の3点。サービス面では、安否確認や生活相談のほか食事の提供、清掃・洗濯といった家事援助などだ。
高齢者住まい法が改正された背景には、高齢者単身・夫婦世帯が急激に増加していることがある。2010年に全世帯の19.9%を占めた高齢者の単身・夫婦世帯。これが2020年にはさらに増えて24.7%とほぼ4分の1を占めるようになる、と予想。高齢者世帯の増加が、合計42万人いる特別養護老人ホーム申し込み者を増やしていると見られ、申し込み者の中には要介護度の低い人もいるというのが実情だ。
日本の場合、高齢者住宅は諸外国よりも不足している。介護先進国といわれるデンマークでは高齢者人口の8.1%が高齢者住宅を利用しているのに対し、日本では0.9%とかなり低い。政府では、2020年までにサ高住など高齢者向け住宅の利用率が有料老人ホームなどの施設と並んで高齢者人口の3%〜5%になることを見込んでいる。
政府によるサ高住の供給促進という追い風があることで、最近、建設業者が不動産所有者へ土地活用や相続税対策の一環としてサ高住を提案するケースが急増している。
不動産活用に詳しい、高田吉孝・青山財産ネットワークス財産コンサルティング事業本部第二事業部事業部長は「土地の有効活用としてオーナー(地主)に提案されるプラン10件のうち8件はサ高住」と話す。建設業者が土地所有者(オーナー)にサ高住の建設プランを提示する際には、介護事業者や医療施設とセットにする場合が多いという。
しかし、そのサ高住内にある介護や医療のサービスが悪かったりするとサ高住の空室率も高くなるという。「借入金でサ高住を建てたりすると、空室率が高くなった場合、収支が回らなくなるケースも出ている」と高田氏。入居を検討する時には、サ高住の中身をよく調べて選択を間違えないようにしたい。 |
|  |
|