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  今月の旅情報 令和4年11月下旬号  
原発事故、被災地の“今”へ  福島県/いわき市ほか

「原子力災害考証館 furusato」。東電福島第一原発事故に関わる裁判記録なども目にできる。里見さんは「原子力災害は福島県民だけでなく、国民一人一人が向き合うべき問題。多くの人たちと一緒に考えを深める場にしていきたい」
被災地めぐる「Fスタディツアー」
 福島県いわき市の名湯・いわき湯本温泉。創業327年の老舗ホテル「古滝屋」の館内には、東電福島第一原発事故後の“声”を伝える、手作りの資料館がある。古滝屋館主の里見喜生(よしお)さん(54)が昨春開設した「原子力災害考証館 furusato」。里見さんは震災の年の秋、被災地を巡る「Fスタディツアー」を立ち上げ、自らガイド役を務め続ける。「被災地の『今』を見て、知って、感じていただければ…」

 毎分5トンもの湯量が自慢の「美人の湯」—。いわき湯本温泉へは、東京から特急電車で2時間余りだ。一方、温泉街から約50キロ北には東電福島第一原発。2011年の東日本大震災と原発事故発生後、1695(元禄8)年創業の古滝屋は1年4カ月間もの休業を余儀なくされた。「16代当主」である里見さんは「廃業も考えました」。

 休業中はボランティアの宿泊場所、避難した高校生の「寄宿舎」などに施設を開放。第一原発がある同県双葉郡内に向かう「Fスタディツアー」を、仲間の協力も得て同年11月にスタートさせた。「復興の『F』、福島の『F』、FACT(事実)の『F』…、いろんな思いを『F』に込めた」。コースは避難区域見直しに伴い“北上”を重ね、今は「第一原発20キロ圏内」を中心に案内する。第一原発と同種の原子炉を持つ第二原発が見える富岡漁港、全国から大勢の花見客を集めたJR夜ノ森駅前桜並木…。長大な防潮堤が海と陸を隔てるように続き、幹線道路沿いには真新しい公共施設やショッピングセンターが立つ。半面、住宅地には雑草が伸び放題で除染が手つかずの空き家が、今なお数多く残る。「日程は、お客さまの希望を伺った上で調整させていただいています」。それでも11年に及ぶツアーの催行回数は1600回以上、延べ参加人数は約6500人に上る。


富岡漁港から東電福島第二原発を望む。里見さんは「事故前の福島第一原発と外観も似ている」と話す
 古滝屋9階に「原子力災害考証館 furusato」が開館したのは震災10年後の昨年3月。震災前は宴会場だった20畳の和室に、里見さんが集めた原発関連の書籍や資料、パネルなどを展示している。部屋の真ん中には、第一原発が立地する同県大熊町の捜索現場を“再現”。津波で父親と妻、次女を亡くした木村紀夫さん(57)が、被災地の活動を通して知り合った里見さんに共鳴し、自ら遺品や写真を配している。

 古滝屋の5つの風呂は、「源泉かけ流し100%」。里見さんは「疲れた心と体を癒やしてもらうのが温泉旅館。震災後、『身の丈に合ったサービス』をしていく中、その本質に気付かされた」と笑みを見せる。昨秋、考証館は隣の20畳の和室にも展示スペースを拡大。「多くの人が『自分事』としてこの問題を捉えることが、風化を防ぐと信じています」

「語り部」の津波体験も
 「Fスタディツアー」のコース上にない「いわきのおすすめ」も紹介したい。観光名所として有名な塩屋埼灯台の近くに「いわき震災伝承みらい館」(Tel.0246・38・4894)がある。土・日曜日と祝日には、「震災語り部」が体験談を聞かせている。  語り部の一人・小野陽洋(あきひろ)さん(31)は祖母を気遣い避難をためらううち、自宅2階で津波に襲われた。「いったんは首元まで波に漬かった。祖母を片手で抱えて、波の中で10分間耐えた」。波を受ける直前の46秒間は動画を撮影。その映像を映しながら訴える。「自分と同じ過ちは絶対しないで!」。「語り部」の時間は午前10時半からと午後2時からの2回。無料。


「さんまのポーポー焼き」を手にする遠藤さん
「さんまのポーポー焼き」
 塩屋埼灯台の南にある「ごはん・カフェきゅういち」(Tel.0246・38・2191)。一番人気は「さんまのポーポー焼き」(定食1000円)だ。サンマにネギとショウガ、みそなどを加え、ハンバーグ状にして焼いた郷土料理。店を切り盛りする遠藤玲子さん(57)は、「サンマの食感を生かすため全て手作業」と話す。「味の決め手は熟成みそと食材の切り方。さんまのポーポーメンチバーガー(600円)も好評です」。遠藤さんの両親は民宿を営んでいたが、津波で大きな被害を受け、やむなく閉店。親子が「再出発」と位置付ける同店は仮店舗を経て、隣接の多目的宿泊施設と共に19年春に正式オープンした。

◆ Fスタディツアー ◆
 古滝屋前発着で、所要時間約4時間。古滝屋のマイクロバスか乗用車に同乗。4500円(車代含む)。

◆ 原子力災害考証館 furusato ◆
 入館無料。午前10時〜午後4時(古滝屋宿泊者は応相談)。無休。
 問い合わせは古滝屋 Tel.0246・43・2191

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