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  横浜・川崎版 令和3年1月号  
「全ては運命の導き」  イリュージョニスト・プリンセス天功さん

東洋と西洋が融合したような幻想的なステージ衣装を背にほほ笑むプリンセス天功さん。“永遠の24歳”だ。「アメリカで私をモデルにしたアニメが放映され、キャラクター人形も販売されました。その際にキャラクター性を守る契約をしているので、私の年齢は24歳で固定されています。実際の年齢は言えません。そのほか髪の長さや体重の増減などいくつもの約束事があり、違反すれば膨大な違約金が発生します。ライフ(生涯)契約なので、死んだらやっと許してもらえます(笑)」
3月、有楽町で舞台「ザ・イリュージョン」開催
 「全て運命(カルマ)の導きです」。そう艶然と話すのは、世界的なイリュージョニストのプリンセス天功さん。若くして、過激な「脱出マジック」で有名な初代・引田天功の二代目を襲名以降、日本はおろか世界を股に掛け幻想的な舞台を上演。さらには吉本新喜劇の公演にも出現するなど、神出鬼没な活躍を見せている。3月には「コロナ禍」で苦しむ東京でイリュージョンを披露するという天功さん。「私のイリュージョンは全部、ラッキーをつかんでもらうことをモットーにしています。大変な時代ですが、当日は公演でのひとときを楽しんでいただき、幸せな気分を持ち帰ってもらいたいですね」

 天功さんのイリュージョンはまさに“魔法”。舞台では空中に浮遊し、水上を歩き、さらには屋内でヘリコプターを用いたマジックを披露するなど、誰も思いつかない奇想天外なアイデアにあふれている。「全て私が夢で見た世界を具現化したもの。公演の度、毎回新しい演目を構築しています。当日も皆さまがあっと驚くイリュージョンを披露します」と意気込みを語る。

 天功さんは生まれつき病弱だったという。幼少期から、アメリカで最先端の治療を受けるため、日米をひんぱんに行き来する日々。ある日、母親から「18歳までの命かもしれない。好きなことをやりなさい」と言われ、舞台女優を志望する。「いつ死んでもおかしくないなら、舞台に立ち多くの人に私の顔を覚えてもらい、生きた証しとしたかったのです」

 くしくも母のいとこが引田天功事務所の社長であり、高校生活の途中で上京し、初代・天功に師事することに。「破天荒な人でした。億のお金を一晩で使い果たしたこともありましたね。怖い面もありましたが、私はかわいがってもらいました」

 師の体調不良で「脱出マジック」の代役を引き受けたことも。危険なものだったが、「クライアントから、女性の方がインパクトがあると言われ…。私も当時体の調子が思わしくなく、長くないと思っていましたので、ここで死んでも皆が私という存在を覚えてくれるなら…」と出演を承諾。悲壮な決意だった。

アイドルデビューも
 1978年、マジックをしながら歌う異色のアイドル・朝風まりとしてデビューを果たす。「歌手の先輩は皆優しく、親身に接してくださいました。楽しかったですね」

 しかし、天功さんは再び奇術の世界に呼び戻される。79年に師が心筋梗塞で死去。翌年、後援会が天功さんに“二代目”として白羽の矢を立てたのだ。「アイドルとしての私を応援してくださるファンのこともあって最初はお断りしましたが、『これも運命』と思い定め、引き受けました」

 襲名後は「脱出マジック」のほか、幼少時にアメリカのテレビで見た当時の日本にはなかったレビューショーのスタイルも取り入れ、初代の後を追うだけではなく、自分にしかできない“引田天功像”を探っていった。「ただ、私が継いだことをよしとしない人たちから壮絶ないじめを受けました」。つらく苦しい思いで心がくじけそうになった矢先、ディズニー社の社長が天功さんの舞台を目に留め、契約。これが転機となる。

アメリカで大成功
 活躍の場をアメリカに移した天功さんのイリュージョンは大好評。さらに、アニメ「テンコー&ザ・ガーディアンズ・オブ・ザ・マジック」も製作・放映され、全米の子どもたちが天功さんのキャラクター人形を買い求めた。まさにアメリカン・ドリームを体現したのだ。90年には女性として史上初、米国「マジシャン・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。「マジックは“パクり”が横行する世界。日本も例外ではありません。だからこそ、私の夢をもとにしたイリュージョンのオリジナル性が評価されたのだと思います」

 アメリカでの成功を皮切りに日本に“逆輸入”の形で凱旋(がいせん)を飾ったほか、世界各地でイリュージョンを披露。年間約300回もの舞台を踏んだ。北朝鮮にも呼ばれ、当時の金正日(キム・ジョンイル)総書記の前で上演している。「観客はほぼ軍の高官ばかりでしたが、皆声を上げ喜んでいました。普通の人と変わらぬ反応に、逆に私が驚かされました(笑)」

 また、変わったところでは吉本新喜劇ともコラボレーションし芸人たちと掛け合いもするなど、常に新しい挑戦を続けている。

 しかし、代名詞の「脱出マジック」で命に関わるけがをしたことも一度や二度ではない。脱出には成功はしたものの想定外の爆発に巻き込まれ、重度の一酸化炭素中毒になり、病院で全身の血を取り換えたことも。「全てを捨てて逃げたいと思ったこともありました」と苦笑する。

いつも万全の準備
 現在は健康そのもの。自宅にあるジム施設で体調を管理しているほか、毎日ピアノや三味線も練習。いつ何があっても大丈夫なように万全の準備をしているというが、「コロナ禍」のため、世界での公演はお預けとなってしまっている。「これは地球全体の“運命”なのだと思います。個人個人で悩む問題でなく、今こそ世界の全員が手を取り合い乗り越えていくべきだと思います」


©TENKO
◆「プリンセス天功 ザ・イリュージョン2021
     〜withコロナの日々に、魔法の瞬間を〜」◆

3月6日(土)午後1時半、有楽町よみうりホール(読売会館7階、JR有楽町駅すぐ)で開催予定。
 「withコロナ」の日々に魔法の瞬間(とき)を—。大人だけでなく、親子でも楽しめるイリュージョン・ステージ。
 出演:プリンセス天功。
 全席指定4500円。問い合わせはインターナショナル・カルチャー Tel.03・3402・2171

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