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  茨城版 令和3年4月号  
現代社会の縮図、コミカルに描く  映画監督・池田暁さん

音楽好きな池田さんは劇中、トランペットを吹く場面などで音楽を効果的に使用。今作では「戦争になったら隅に追いやられる芸術の立場から、戦争を描いてみたいと思った」と言う
映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」公開中
 いつからか、何のためかも忘れて川向こうの町と戦争をしている—。そんな架空の町、津平(つひら)町を舞台に、一人の軍楽隊員と周囲の人々を淡々かつ、ユーモラスに描いた映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」が公開中だ。同調圧力が強く、マニュアル通りに行動する思考停止の社会が招く“危険性”を描いた同作は、第21回「東京フィルメックス」審査員特別賞を受賞。監督の池田暁さん(45)は、「この映画は架空の時代・場所の話ですが、よく見ると現代の縮図なんです」と話し、架空の町を描くことで、現代社会の疑問点を“鏡”のように映し出した。

 「チャプリンの映画『モダン・タイムス』が好き」と話す池田さん。同作は、労働者が機械の一部分のようになっている社会をユーモアたっぷりに描いたチャプリン代表作の一つ。「子どものころはコメディーとして見ていましたが、大人になってから見ると(社会に対する風刺など)違う面が見えてきました。『モダン・タイムス』は、映画の理想的な形だと思います」。映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」は、そんなチャプリンへの思いが反映された作品。「現代は想像し、自分で考えることが希薄」と感じている池田さんは、戦争だけでなく地球環境などいろんな問題を自分で想像し、考えることが重要だと思っている。同作には、「一市民として感じる疑問や憤りを映画のキャラクターに浸透させました」。

 物語の主人公は兵隊・露木。彼は朝、楽隊が奏でる音楽で起き、兵舎で制服に着替えて準備体操。「きょうも向こう岸からの脅威が迫ってきています。どんな脅威かは忘れましたが、みなさん、とにかく頑張りましょう」。体操が終わってからの、“肝心なことは忘れてしまう”夏目町長のあいさつがおかしい。この後、露木は自分の持ち場である太津(たつ)川下流へ行き、午前9時から食堂での昼食休憩を挟んで午後5時まで向こう岸の敵に向かって銃を撃つ。“仕事”が終われば、煮物店で煮物を買って晩飯を食べて、寝るという決まり切った毎日だ。露木はその後、軍楽隊に異動し毎朝、軍楽隊の一員としてトランペットを吹くことに…。

忖度や自己責任論
 そんな露木に代表される津平町の人びとは「疑問や不満があっても、役割や規則に自らをあわせて生きるほうが楽」と考えている。しかし、それは無力な庶民が“危険”にさらされることにもつながっていく。物語が進むにつれ、食堂のおばさん自慢の息子は戦死し、露木の同僚も敵の鉄砲に撃たれてけがをし、兵隊を失職。「ぼんやりしているが戦争の悲惨さは変わらない」と認識させられる。町長への忖度(そんたく)が横行し、マニュアル重視で融通が利かず、安易な自己責任論や男性優位がまかり通る—。そんな社会をコミカルに描く。「映画を見ている人が『あれ、もしかして自分もそうかな』と思い当たる部分もあるのでは」と池田さん。

 同作には、“食堂のおばさん”を演じた片桐はいりや“物知りな煮物店のおじさん”役の嶋田久作など、個性豊かな俳優が多く出演した。キャスティングにもかかわった池田さんは、「その役にあっていると思う人を選びました。個性的な俳優さんがそろったことで、映画のキャラクターが際立ったと思っています」と満足げ。また、「感情をあまり表現しない」という池田さん独特の演出スタイルも映画全体を特徴付けた。俳優が話すせりふは抑揚がなくほとんど棒読み、動きもまるでロボットのよう—。この独特な演出は、見ている人に「想像してもらう余白や、自分で考える空間をつくってあげたい」という池田さんの計算からなされている。

日本人監督で初受賞
 1976年、東京出身の池田さんは文教大学在学中から自主映画製作を続け、長編4作目となる「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」が初の全国公開の映画となった。それまでの作品は、「映画祭とか、短期間の劇場公開」だったが、それら独特の感性で作られた映像作品は高く評価され、初の長編映画「青い猿」(2007年)は「第29回ぴあフィルムフェスティバル」観客賞を受賞。長編2作目の「山守クリップ工場の辺り」(13年)では、第43回ロッテルダム国際映画祭、第32回バンクーバー国際映画祭グランプリなどを受賞した。今作は、映画を通じた異文化交流を目指し00年に創設された映画祭「東京フィルメックス」で「私たちが忘れがちな質問を投げ掛けている」と評価され、日本人の監督として初の審査員特別賞に輝いた。

 池田さんは大学進学を前に映画学校で脚本や美術を学び、鈴木清順監督の作品などで美術を担当した木村威夫の薫陶を受けた。しかし、全国公開の商業映画となった「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」を撮るまでに10年以上もかかって苦しんだ。

社会性もある娯楽が理想
  途中、30代半ばには「このまま自主映画を撮っていても、商業映画を撮れるとは限らない。今後、どうやって生計を立てればいいのか」と悩んだ。そして、「この作品で監督は最後になるかもしれない。だったら自分の好きなことをやろう」と開き直って撮ったのが「山守クリップ工場の辺り」だった。淡々と手作業でクリップを生産している男が、ある人と出会って変化していく様子を描いた同作が映画祭などで好評だったことに自信を持ち、映画監督としての道を進み続ける。

 チャプリンの映画とともに漫画家・水木しげるの描く世界が好きで、「大人になってからも読み返している」と話す池田さん。「水木さんの漫画のように、笑いや悲しみの要素を娯楽として見てもらいながら、社会性にも気付いてもらえる映画が理想」と言う。独自の演出スタイルを持つ映像作家としては変わらないものの、次作では「新しいことにもチャレンジしたいですね」と構想を練っている。


©2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト
「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」
 監督・脚本・編集・絵:池田暁、出演:前原滉、今野浩喜、橋本マナミ、片桐はいり、嶋田久作、きたろう、竹中直人、石橋蓮司ほか。105分。日本映画。

 USシネマつくば(Tel.029・839・5255)ほかで上映中。

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