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  今月の旅情報 平成26年1月下旬号  
天然の“いけす”で地魚を堪能  富山県/東部

くろべ漁協の加工場で干物作りに当たる女性部のメンバー。「それぞれの魚に合った塩加減や乾燥具合にしています」
 沿岸部から急に深く—。特異な地形の富山湾は暖流系と冷水系を合わせ、魚介類約500種の命を育む「天然のいけす」。旬のブリをはじめホタルイカやシロエビが有名だが、少量多種の「地魚」を生かした食文化も地元の人たちによって培われてきた。富山県東部の黒部漁港などを巡り、ご当地ならではの美味を求めた。

魚介類約500種が生息
 富山湾の大陸棚は狭く、水深1000メートル以上の海底谷が沿岸からわずか10〜20キロ沖に連なる。浅い部分に暖流が流れ、深い場所は冷水域。漁港から漁場までは20分足らずで、ブリやアジといった暖流系、甘エビや紅ズワイガニなどの冷水系双方がとれる。日本海で水揚げされる魚介類は約800種とされるが、その6割以上が富山湾にすむ勘定だ。「生きが良い」という意味の富山の言葉「きときと」は、この地の魚の代名詞のように使われる。

 黒部漁港に隣接する魚の駅「生地(いくじ)」(Tel.0765・57・0192)の直売所「とれたて館」では、数え切れないほど多種の地魚が並ぶ。冬は旬のヒラメや紅ズワイガニの人気が高い一方、「カレイだけで10種以上の日もある」と支配人の富山俊二さん(61)。くろべ漁協の直営だけに、「黒部の海を知り尽くした店員に何でも聞いて」と笑顔を見る。

 隣の「できたて館」では、鮮度抜群の刺し身のほか、同漁協女性部の手作業による一夜干し「生地の塩物(しおもん)」を自分で焼いて味わえる。ニギス、ナメタガレイ、カマス、沖の女郎とも呼ばれるヒメジ…。取れたての魚を薄味で加工しているとあって、凝縮されたうま味が口中に広がる。防腐剤や着色料を一切加えない「塩物」は、季節によって魚種が異なる。通信販売で“四季の味”を注文する人も少なくない。

 黒部市生地地区は、北アルプスの山々を発した地下水が湧く「清水(しょうず)の里」でもある。魚の駅をスタート地点にした「まち歩きマップ」を手に、「清水巡り」をして、おいしい水を飲み比べるのも一興だ。北陸新幹線は来年春の開業予定。東京駅から黒部市の黒部宇奈月温泉駅までは2時間ほどと見込まれ、首都圏からの誘客の期待も高まっている。


細工かまぼこの絵付け体験。赤や黄、緑に着色したすり身をチューブ状の袋から絞り出し模様を描く。出来上がったかまぼこは持ち帰って味わえる
かまぼこに絵付け
 富山湾の魚と伝統の職人芸—。かまぼこの食文化が発達した富山では、「昆布巻きかまぼこ」など独特のかまぼこが見られる。

 タイをかたどった色鮮やかな「細工かまぼこ」もその一つ。富山では婚礼の引き出物などに使われる縁起物だ。黒部漁港に近い生地蒲鉾(かまぼこ)有限会社(Tel.0765・56・8064)では、細工かまぼこの絵付け体験(要予約)ができる。代表取締役会長の中陳和悦(なかじん・わえつ)さん(65)は「見た目も味も満足していただきたい」。すり身に「生地の清水」を加えた上、低温で一晩寝かせる“坐り”の技法が、「魚のおいしさと弾力ある食感を併せ持つ製品を生む」と語る。


(手前から)ゲンゲのすし、吸い物、空揚げ
“新食感”のゲンゲ料理
 嫌われものから人気ものへ—。体全体が軟らかいゼラチン質に覆われたゲンゲは、底引き網に掛かる深海魚。一緒に網に入った甘エビなどを傷めてしまうため、漁師からは嫌われていた。名前の語源は「下の下」とされるほどだ。

 だが近年、ゼラチン質に含まれるコラーゲンの人気もあり、白身魚のゲンゲは一躍人気魚種に。では「気になる味は?」というと、「くせがなく、うま味が濃い」となかなかの評判。魚津駅前の料理店「万両」(Tel.0765・24・7796)では、ブームのはるか前の30数年前からゲンゲ料理を提供する。地元では「定番」とされる吸い物を口にすると、熱々のゼラチン質が口中をくすぐり“ふわふわの新食感”が体感できる。すしや空揚げは、「地酒の味を引き立たせる」とも。鮮度落ちが早いため、鮮魚では首都圏にほとんど出回らないこともあり、旅行者の注文は多い。調理する若井貞寛さん(35)は「富山湾の恵みの一つとして味わっていただければ…」と話す。
【富山湾の魚に関する問い合わせ】
富山県水産漁港課 Tel.076・444・3292

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