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  千葉版 平成30年10月号  
味わってほしい! 読書の愉悦  作家・中山七里さん

「ミステリーの書き手の多くは、まずトリックを考える」と中山さんは指摘する。「それだと登場人物が種明かしのための『将棋の駒』のようになってしまう恐れがある。僕はテーマを設定した上で謎解きを含めて、ストーリーを創る。自分の場合、そうしないと、登場人物が生き生きと動いてこない」。3日間、ペンを手にすることなく、文章1万字分を細部まで考える創作スタイルだ。「だから書き始めたら早い。品質を保った上で締め切り厳守です」
“小説の職人”自任する「どんでん返しの帝王」
 「どんでん返しの帝王」の異名を持つミステリー作家・中山七里(しちり)さん(56)は“小説の職人”を自任する。「時間がたつのを忘れてしまうマイナス。そんな“読書の愉悦”を僕の作品で得ていただければ…」。会社に勤めていた48歳でデビューした後は、さまざまな作風の作品を量産する。今夏発行の新作「連続殺人鬼カエル男ふたたび」は、最初期の話題作の続編で、猟奇性をまとった社会派ミステリーだ。「2冊通しての『一気読み』がお勧めです(笑)」

 青春・音楽ミステリーと猟奇・社会派ミステリー。中山さんは2009年の第8回「『このミステリーがすごい!』大賞」のため、二つの長編小説を執筆した。大賞に輝いた「さよならドビュッシー」(応募時タイトル「バイバイ、ドビュッシー」)と、最終候補作の「連続殺人鬼カエル男」(同「災厄の季節」)。「このミス大賞」の略称で知られるコンテスト史上、2作を最終選考に進めたのは、中山さんただ1人だ。2作応募の理由を歯切れ良く語る。「正反対の(作風の)二つを出せば、『どちらかは(大賞を)取れるだろう』と…。作戦ですよ(笑)」

 岐阜県に生まれ育った中山さんは、小学生のころからコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズや、モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズなど、推理小説に熱中した。

 高校時代に書いた小説を「江戸川乱歩賞」に出したが、2次選考で落とされた。「才能がないと思って、いったん作家になるのはあきらめた」。大学卒業後、会社に就職し、営業の仕事に没頭した。だが40代半ばのころ、作家・島田荘司のサイン会に出掛け、「今、書かないと一生書けない—。そんな思いが湧き上がった」。創作再開後、第6回「このミス大賞」への応募作は、最終選考の対象になった。「このときの選考委員評を参考にして書いたのが(第8回の)2作です」

量産と読者本位
 作家デビューに当たって「量産、サービス精神・読者本位」を自身に課し、2年後には会社を退職。連載14本を並行させたこともあるという中山さんは、こう言い切る。「量産で内容が薄くなるなんて絶対ない。書けば書くほど、うまくなるのは作家も同じ」。量産の手段として取材は必要最小限に抑え、資料を読み込むこともあえてしない。これまでの膨大な読書量、鑑賞した映画の記憶…。「それらが僕のデータベース。あとは想像力の勝負です」。会社勤めの経験も、創作の糧と捉えている。「結果として人間観察ができた。(登場人物の)心理描写に生きている」

はがき84枚が「宝」
 「音楽・青春」「猟奇」のほか、「法廷」や「人情もの」など、さまざまなジャンルの作品を書き分ける。自らはテーマを決めず、編集者の意見、希望をくみ上げるのがモットーだ。小説の創作をすし職人の仕事に例える。「マグロしか握らないという職人に、客は付かない。僕にとってのお客さまは読者。最初の読者である編集者が『いらない』というものは出せません」。映画化もされたデビュー作「さよならドビュッシー」出版後、読者から寄せられたはがき84枚を「一番の宝物」と明言する。「僕が頂いてきた“読書の愉悦”は、今の自分の『魂の財産』になっている。僕の小説で“読書の愉悦”を得てくださる人がいれば、恩返しできた気持ちになれます」

“ネットの悪意
 そんな中山さんの「もう一つのデビュー作」ともいえる「連続殺人鬼カエル男」。10年近くたって手掛けた続編に「僕自身、作家としての成長を感じている」と充実感を漂わせる。前作の事件に関係した精神科医の自宅で爆発が起きたのを皮切りに、「カエル男」は再び凶行を繰り返す—。残虐なシーンがあるサイコスリラーの体裁を取りながらも、心身喪失者の行為を罰しないとする刑法第39条をテーマの軸とした。加えて「現代はネット社会。そこで無名・匿名の悪意が拡散し、形となる怖さも(作中に)落とし込んだ」。とはいえ、自分の意見や主張を小説に込める意図はない。「テーマは、読者を物語の世界に引き込むための素材です」

 多くの作品が読者を驚かせる結末とあって、いつからか「どんでん返しの帝王」の“称号”を持つ中山さんは笑みを見せる。「今度も、どんでん返しの“多重仕掛け”です」。意外性に富んだストーリー展開で、「前作と新作の『一気読み』をさせたい。(読者を)眠らせない」と声を弾ませる。それだけに、読みやすい文体も追求する。「せりふと地の文の割合、句読点や『?』『!』などの場所、数にも気を使う。僕は“小説の職人”ですからね」

「連続殺人鬼カエル男ふたたび」
 埼玉県飯能市で起きた「カエル男連続猟奇殺人事件」から1年足らず。千葉県松戸市の精神科医宅で爆発が起き、粉々になった上、炭化した死体が見つかる。精神科医は、稚拙な犯行声明文で住民を恐慌に追い込んだ「カエル男」と関わりがあった人物。やがて「カエル男」の凶行と思われる事件が埼玉県内、東京都内で相次ぐ…。
 (宝島社・1620円)

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