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  茨城版 令和5年2月号  
「骨髄移植の現実知って!」  映画プロデューサー・堀ともこさん

娘との闘病体験から、「この映画に懸ける思いを全て丈監督に話しました」と語る堀さん。病院に入院中の主人公・楓が、いつ果てぬともしれぬ闘病に絶望し自殺を考えたとき、同室で同病の少年が訴えた言葉「価値のない命なんて一つもない。命は親からの贈り物。今、生きていることに、全て意味がある」は、脚本を担当した丈監督の考えたセリフだが、「私の気持ちそのものです」
映画「いちばん逢いたいひと」が24日から公開
 白血病など血液疾患の難病で、骨髄移植を必要とする患者は毎年少なくとも2000人いるという。(公財)日本骨髄バンクでは、より多くの患者を救うためドナー(骨髄など造血幹細胞の提供者)登録を呼び掛けているが、残念ながらドナーは不足気味で全ての患者を救うことができないのが現状だ。そんな骨髄移植の現実を映像化した映画「いちばん逢いたいひと」が24日から公開される。映画の企画を一から立ち上げたプロデューサー・堀ともこさん(55)は、自身も白血病を患った娘を支え、ドナーからの骨髄移植で最愛の家族が救われた経験を持つ。堀さんは訴える。「“命のバトン”をつなぐため、多くの人に白血病や骨髄移植の現実を知ってもらい、関心を持ってほしい。そんな思いでこの映画を作りました」

  映画「いちばん逢いたいひと」は、白血病で倒れた少女・楓と、骨髄移植が間に合わず娘を亡くしたIT企業経営者の柳井の2人が主人公。骨髄移植をめぐる双方の立場の明暗をくっきり対比させる形で物語が進む。娘を救うため汚職に手を染め、家族も社会的信頼もなにもかも失った柳井。ただ、「自分の生きた証しが欲しい」とドナー登録し骨髄を提供。それが、楓の命を救う。罪を償うべく刑事に連行される前に柳井はつぶやく。「いいことするって、気持ちいいね」—。

 映画はドナー登録から、骨髄を提供する過程を丁寧に映像化。「骨髄移植に関心があるが、どうしたらいいの?」という人の背中を優しく押すような内容となっている。また、楓と家族が共に病と闘う姿を通して、終わりの見えない闘病の現実をリアルに描いている。

 「楓は自分の娘がモデル」と語る堀さん。映画では温かな家庭に支えられた楓だが、モデルとなった堀さんの娘の状況はもっとシビアだった。堀さんは娘の発病の直前に離婚し別居。父(前夫)のもとに残された12歳の娘は、中学受験のストレスや母と引き裂かれたことで部屋に閉じこもり、そのさなかに倒れたという。「親権は相手にあり、満足に娘と顔をあわせられませんでしたが、娘が倒れたと聞いて何とか相手に頼み込んで娘を病院に連れて行きました」と堀さん。

 すると、診断の結果は白血病。白血球、赤血球、血小板になる予定の細胞が「がん化」する難病で、完治には抗がん剤治療のほか、白血球など血液細胞を生み出す骨髄の移植を必要とする。ただし患者に適合する骨髄を提供できるのは、家族でも4分の1以下。「一番確率の高い息子(娘のきょうだい)の骨髄は適合せず、親族にもドナー登録を求めましたが、全て不適合でした」

骨髄提供に高い壁
 最後の命綱が、善意の人々から提供される骨髄バンクだった。親族以外では数百〜数万分の1といわれる適合者が運よく見つかったことで、病院入院から約1年で退院することができたという。「私も少しでも恩返しをしようとドナー登録し、骨髄を提供しました。ドナー登録だけなら献血センターで簡単にできます。しかし、骨髄を提供する段になると医者から後遺症があるかもしれないことが説明され、体の検査は何回もされました」。そして、全身麻酔による骨髄摘出手術で1週間近く入院することに。「費用は患者側が持ちますが、それ以外のドナー側の負担が大きく、漠然とした善意に頼るだけでは骨髄提供者は増えないと実感しました。年齢制限もありますしね」

 堀さんはこの現状を少しでも改善したいと、骨髄移植を待ち望む白血病患者たちの“声なき声”を、「多くの人が見る映画で訴えられないものか? 影響力のある人にドナー登録を訴えてもらいたい」と思案。それまでのキャリアを投げ捨て、40歳過ぎで映画製作の世界に飛び込んだ。

前半生は声楽家
 堀さんは幼少時からスポーツに打ち込んできたが、高校のときに体を壊し大きな挫折を味わった。その後、ピアノが弾けた堀さんは合唱部の顧問にスカウトされるが、そこから声楽の才能を見いだされ、音楽大学、大学院に進み、卒業後はドイツに留学。同国でオペラ歌手として活躍し、ベルリン国立歌劇場の舞台に立ったこともある。「ただ、自分はなりたくて声楽家になったわけではないので、周りに流されるまま歌っていた感じでした」

 その後、結婚を機に歌手を引退。30代後半で帰国し専門学校でピアノや声楽を教えていたが、2009年、堀さんが42歳のとき娘が白血病に倒れた。「幸い、娘は1年で退院できましたが、同じ病院で療養していた隣室の娘さんは骨髄の適合者が現れず亡くなったため、素直に喜べませんでした」。その娘はアイドルグループ「嵐」の大ファンで、病を治してコンサートに行くことを心の支えにしていたという。「患者さんにとって“スター”の存在は何物にも代えがたいもの。流されるまま歌手をやっていた自分もかつてはそのような存在であり、患者さんたちの心の支えになれたかもしれないということにいまさらながら気づかされました」

 しかし、堀さん自身は発声の練習を長くしていなかったため、オペラ歌手への復帰は現実的ではないと判断。「“夢のバトン”をつなぐべく、映画製作と並行して芸能事務所設立に関わり、将来の“スター”を育てています」

“声なき声”伝えたい
 「いちばん逢いたいひと」の製作で、映画の世界に飛び込んだ目的の一つは達成したが、まだまだ映画作りを続けていくという。「さまざまな事情で困難を抱えた人々の、広く訴える手立てのない“声なき声”を多くの人に届ける、そんなお手伝いを続けていきたいです」


©TT Global
「いちばん逢いたいひと」 日本映画
 11歳の女の子・楓は、ある日突然に倒れてしまい、「急性骨髄性白血病」と診断される。骨髄バンクを経て、骨髄を提供し彼女を救った男もまた、白血病で娘を失っていた。白血病を克服した少女と、そのドナーになった男の数奇な運命を描いた感動作。

 監督:丈、出演:倉野尾成美(AKB48)、崔哲浩ほか。106分。日本映画。

 24日(金)から、USシネマ千葉ニュータウン(Tel.0476・48・2126)ほかで公開。

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