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  東京版 平成28年2月上旬号  
ジャズの本場ニューヨークで半世紀  ジャズベーシストの中村照夫さん

「アメリカは絶えず己のアイデンティティーを問われる社会。ジャズはその成り立ちから差別に苦しんできた黒人たちの存在証明そのものだった」と中村さん
自身のアイデンティティー、リズムに刻む
 日本人の海外旅行が自由化された1964年、一人の男がアメリカの大地に降り立った。彼こそ徒手空拳から、日本人ジャズミュージシャンのパイオニアとして50年、ニューヨークで音楽活動を続けてきたジャズベーシスト・中村照夫さん(73)だ。「私は大好きな音楽の世界に飛び込み、50年間、自分のアイデンティティー(個性)をリズムに刻んできました」。現在プロデューサーとしても活躍している中村さんだが、このほど約5年ぶりのニューアルバム「ニューヨーク・グルーヴ」をリリースした。

 中村さんは東京・神田の出身。日大芸術学部在学中からバンド活動を通してベース演奏の経験があったという。転機は当時のベストセラー「何でも見てやろう」(小田実著)。同書に触発され、大学を中退し渡米。「明確な目的もないまま船に乗りました。ただ、本場のジャズは聴きたかったかな」と述懐する。

 バスの乗り放題チケットで貧乏旅行。西海岸から東海岸へ、ジャズのたどった歴史をさかのぼるように旅をした。ゴールとしたジャズの中心地・ニューヨークに着いた時には約1年が経過していた。早速ジャズハウスに通い本場の演奏をかぶりつきで鑑賞したが、「気付くと手元には360ドルのみ。懐が心細くなりニューヨークで働き始めました」。

 最初は日本人コミュニティーのつてで仕事を仲介してもらい料亭に就職。だが単調な毎日に嫌気がさしすぐに転職。その後も新聞配達や弁当配達のほか、さまざまな職種で働いた。そして時にはベースを担いで、バーや結婚式場での演奏も引き受けた。

 これが幸いした。いつしか中村さんのベースの腕前が口コミでミュージシャンらに伝わり、渡米後約5年目にしてドラムの名手ロイ・へインズに見いだされ、彼のバンドの一員としてプロデビュー。全米各地を巡り一流のミュージシャンらに囲まれ腕を磨いた。

「ベースはバンドの心臓」

©Teruo Nakamura
 それから複数のバンドを巡ったのち独立し自らのバンド「ザ・ライジング・サン」を結成。全米アルバムチャートトップ10入りを果たした名盤「マンハッタン・スペシャル」を引っ提げ79年、ついにカーネギー・ホールに立った。

 徒手空拳から日本人ジャズマンとして快挙を成し遂げた瞬間だった。成功の秘訣(ひけつ)を聞くと、「必要なのは、自己のアイデンティティーを常に強く示し続けること」と語る。

 当時は人種間の葛藤が火花を散らした時代。中村さんも渡米後差別された経験はいろいろあったという。さらに「ジャズとは差別に苦しむ黒人たちのアイデンティティーの発露。その中に日本人が交じっているのを良しとしない人もいました」。

 だが一流ミュージシャンらは中村さんのベースの腕とアイデンティティーを認めてくれた。「黄色人種(中村さん)を外し『黒人である俺をバンドに雇え』とすごんだベース奏者もいましたが、当時所属していたバンドのリーダー、スタンリー・タレンタインは『お前がテルオ並みにベースを弾けるなら雇ってやる』と啖呵(たんか)を切って追い払ってくれました」。

 他に例を挙げると、大御所サクソホン奏者アーネット・コブが中村さんの演奏を聴き、「お前のベースは船の碇(いかり)だ」と言われた時とてもうれしかったという。「ボーカルを口、ピアノを手、ドラムを足に例えると、ベースはバンドの心臓。他人に心音が聞こえないようにベースの音は観客に届きづらいが、ベースが一定の音を刻み続けなければ、バンドは音の波間を揺らぎやがて沈没するでしょう」と誇らしげに語る。

 現在、ジャズは人種に関係なく誰でもが楽しめる時代となった。だが、「人種間の葛藤という根っこが切られたため、かつての緊張感はなくなり、音楽の進化もなくなったのでは」と警鐘を鳴らす。

 ジャズの本場で50年間生き抜いてきた中村さん。今後は「その経験に最新のデジタル技術なども取り込み、より進化した音楽を作っていきたい」と熱く語る。

「NEW YORK GROOVE(ニューヨーク・グルーヴ)」
 昨年末発売の最新アルバム。全7曲収録。参加アーティスト:中村照夫(ベース)、レニー・ホワイト(ドラムス)、ジェイ・ロドリゲス(サクソホン)ほか。CD2592円、LP4104円。ラッツパック・レコード(株)Tel.03・5468・0090

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