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  東京版 令和2年9月下旬号  
コロナ禍の“骨格”残す  作家・海堂尊さん

海堂さんは、「新型コロナウイルスに関する(医療の)情報集積は、これまでの病気と比べても目覚ましい」と指摘する。「コロナ黙示録」には、「知り得る限りの最新の知見を反映させた。今、読み返しても、『これは違う』という箇所はない」。「コロナ禍」における、多くの日本人の対応については、「マスク着用の徹底など、世界的に見ても秀でている。政府のお粗末さをだいぶ救っています」
小説「コロナ黙示録」執筆
 “コロナ時代”の原初を小説に—。「チーム・バチスタの栄光」を皮切りに医療ミステリーのベストセラーを生み出す作家・海堂尊(たける)さん(58)は、「コロナ黙示録」を政府の緊急事態宣言期間中に執筆した。政治や行政の混迷、腐敗をコロナ禍の「骨格」と見定め、「それを正確に残す必要があると考えた」。新型コロナウイルスに関する情報は膨大でありながら、「それらは分断、ごちゃ混ぜにされてしまい、真実が見えにくくなっている」と指摘する。フィクションの形を取った理由をこう語る。「問題の全体像が分かりやすくなり、読む人の記憶に残る。コロナ時代の必読書と自負しています」

 安保(あぼ)首相・明菜夫人、酸ヶ湯官房長官、小日向都知事、黒原検事長…。「実在の人物とは全く関係ありません」と、海堂さんは冗談めかしたような笑みを見せる。医師と作家の仕事を両立させた時期もある「医学博士」。7月に出版された「コロナ黙示録」執筆の動機を「フラストレーション」と言い表す。豪華クルーズ船での感染拡大などに、「いったい何をやっているんだと…」。政府の緊急事態宣言が出た4月7日からペンを執り、全国で解除となった5月25日に書き終えた。「日本の『コロナ禍』を大きくした最大の要因は、政府の対応のまずさ。忖度(そんたく)報道もあって、それが多くの人たちに伝わっていない」

 千葉県出身の海堂さんは千葉大学医学部卒業後、外科医を経て、病理解剖や組織診断、細胞診断を行う病理医に。40代半ばで小説「チーム・バチスタの崩壊」を執筆し、2005年に「第4回『このミステリーがすごい!』大賞」を射止めている。翌06年、「チーム・バチスタの栄光」と改題され、デビュー作に。その後も、架空の地方都市「桜宮市」を主舞台にした作品は相次ぎベストセラーとなり、多くは映画化・テレビドラマ化もされている。

 「面白い物語を書きたい」という欲求は強い一方、それぞれの作品で日本の現代医療が抱える問題を浮かび上がらせる。救急医療の過酷さ、疲弊する地域医療、それらが引き金となる医療過誤訴訟…。医師としては、CTやMRIを用いた死亡時画像診断「オートプシー・イメージング(Ai)」の提唱者として知られ、小説のほとんどにもその話題を盛り込む。「死因究明は医療の向上、医学の進歩に大きな役割を果たす。『Ai』はその切り札になり得るのに、普及に向けた課題はまだ多い」。一般向け科学書「死因不明社会」なども著している海堂さんは、これらに関する施策に、さまざまな利害や思惑が絡む現実も知る。「医療は政治、行政、そして司法とも密接な関わりを持つ。それらに関心が向くのは必然でした」

「全体をつなげる」
 それだけに、新型コロナウイルスに対する厚生労働省の対応には、「全く驚かなかった。毎度のことと…」と苦笑する。とはいえ、「森友学園」をめぐる公文書改ざんなどへの憤りも募る中、「コロナ黙示録」では、「政治の動きも含め、(今年)5月までに起こったことの全体をつなげた」。院内感染、豪華クルーズ船での感染防止策の失敗・船内の混乱に拍車を掛けたキャリア官僚、政府による布マスク配布…。「物議を醸す中身かな?」と言いながらも、「事実をねじ曲げ、誰かを不当におとしめるような書き方はしていない」と明言する。作中では、桜宮市の病院がクルーズ船感染者の受け入れ先となり、“海堂作品”でおなじみの登場人物たちが人命救助に奔走する。「事実に忠実な骨格に、肉付けとして創作を絡めた二重構造」。海堂さんにとって、感染症を扱った創作は、これが初めてではない。10年前に書き上げた「ナニワ・モンスター」では、09年から翌年にかけて流行した新型インフルエンザのパンデミック騒動を活写した。水際作戦、PCR検査…。今、「予言の書」ともいわれるが、「新型コロナは、あのときのウイルスよりはるかに厄介」と語る。「ただね、『ナニワ・モンスター』を読み返せば、政府が過去に学んでいないことがよく分かる。過去の教訓を踏まえて現状を理解しないと、未来に向けた方針は立てられない」

「言論の自由大切」
 海堂さんは「コロナ黙示録」を5月の連休明けに、いったんは書き終えた。「あとは推敲(すいこう)だけ」と考えていたが、「検察庁法改正案、今国会成立断念」の報を受け、最終章を中心に書き直している。「個人が情報、主張を発信できるネット社会の『声』が、うねりとなって政治を動かした。日本の未来に希望が持てる出来事です」。「小さな英雄」と題した「コロナ黙示録」の一章には、公文書改ざんを無理強いされ、自ら命を絶った“まっとうな地方官吏”への哀惜がにじむ。「『なかったこと』にしないためにも言論の自由は大切。そう念じて僕はぎゃあぎゃあ言い続けます」

 今は医療の第一線を離れているが、「医療はどんなときも、人々に徹底的に奉仕する」との信条は揺るぎない。「僕は右翼でも左翼でもなく“医翼主義”です」。その定義を明快に説明する。「命や健康を守る『医』を政策の要とすべき。『霞が関』や『永田町』にその声はなかなか届かないけれど、あきらめるわけにはいきません」

「コロナ黙示録」
 2020年、東京五輪を前にした世界に、新型コロナウイルスが襲来。豪華クルーズ船「ダイヤモンド・ダスト号」では、感染者が発生した。後手に回る政府の対応。桜宮市の東城大学医学部付属病院は、クルーズ船の患者受け入れを決める。一方、北海道の雪見市救命救急センターでは院内感染が発生。重症となった医師が、ヘリで同病院に搬送されてきて…。

 「田口・白鳥コンビ」など“海堂作品”の常連たちが登場する「世界初の新型コロナウイルス小説」。 ((株)宝島社・1760円)

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