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  横浜・川崎版 平成28年2月号  
よみがえれ、フクシマのバラ  横浜ばら写真の会

事故前(写真上) 事故後(下)

2枚とも、岡田さんが同じ場所から撮影したもの。荒れ果てた園内の様子(写真下)が原発事故が引きおこした惨劇を物語っている
3月、埼玉県和光市で写真展開催
 かつて福島県双葉町に日本中のロザリアン(バラ愛好家)を魅了したバラ園、双葉ばら園があった。「日本で最も美しく個性的」といわれ、2011年6月の世界バラ会議の会場に決定していたが、東京電力の原発事故以降、人は二度と入ることができず、荒れ果ててしまった。かつての美しいバラ園を写真でよみがえらせたい、そしてフクシマを忘れない—。そんな思いから、「横浜ばら写真の会」は、双葉ばら園で10年に渡って撮りためたバラの写真と、園主・岡田勝秀さんが撮った事故前の園内と事故後の写真を展示する写真展を企画している。ことしは、埼玉県の和光市民文化センターで3月8日から6日間開催する。

 園主の岡田さんが40年かけて作り上げた双葉ばら園。2万坪の敷地内にモダンローズ、オールドローズなど700種類、約7500株のバラが植えられ、絵画のような風景を作り出していた。毎年5万人以上の観光客が訪れるほどの人気だったが、東日本大震災の原発事故で閉園せざるを得なくなった。

 「横浜ばら写真の会」では、毎年双葉ばら園で撮影会を行っていた。会員は皆無類のロザリアンだ。会員の1人、杵淵英美さんもこれまでに何度も双葉を訪れ、生気あふれるバラをカメラに納めてきた。震災後、双葉町役場が埼玉アリーナに仮役場を設けた時、杵淵さんは岡田さん宛てに見舞いの短い手紙を出した。その手紙が岡田さんの手元に届くまで3週間かかった。しばらくして、杵淵さんは岡田さんから感謝の手紙を受け取った。

 2012年秋、杵淵さんは個展を開催した。その時、横浜ばら写真の会の指導者であり写真家の松田久子さん(67)は、岡田さんに撮ってきてもらった震災後の荒廃したバラ園の写真集を作り、会場に置いた。かつて人々を迎え入れた白いバラのアーチは無残な枯れ枝の固まりに、丁寧に刈り込まれていた木々は伸び放題、純白だった女神像は薄汚れている。反響は大きかった。


松田久子さん
防護服着用で撮影
 「お客さんが写真集を見て泣いたと聞いて、それなら大きな写真で見せなくちゃと、すぐに会場を予約しました」と松田さん。ただしそれなりの規模の写真展にするには100万円近い運営費がかかる。試行錯誤の末、会場で募金を集め、後払いすることにした。展示には「私たちが愛したバラ園—福島・双葉に美しいバラ園があった—」と題した。初日にNHKが取り上げてくれたこともあり、写真展は大成功を収める。その後、福島や仙台を回り、2014年には書籍化された。

 そもそも岡田さんの写真集を作ることになったのは偶然だった。本当は震災から1年になるのを機に、在りし日のバラの写真だけを小規模で展示する予定だった。松田さんは、岡田さんのもとへ写真展開催の承諾を取りに行った。

 「でも岡田さんは『うん』とは言ってくださらなかった。それだけ心に受けた傷が深かったんです。当然ですよね。我が子同然のバラを置いて逃げなくてはいけなかったんですから」。しかし松田さんも後には引けなかった。「この恐ろしい理不尽さをなんとかして伝えなくてはならない、という思いが強くなっていきました」

 ふと岡田さんが「俺の撮った写真があるんだけど」と、かつて花の盛りの園内を撮った写真を見せてくれた。それを見た時、松田さんの頭上に何かがぴかっとひらめいた。

 「『今度双葉に戻った時、今のバラ園の写真を撮ってきてくれませんか? 昔の写真と同じアングルで撮って、写真展をやりましょう』と提案したら、やっと『いいよ』と言ってくれました」

 約束通り、岡田さんは一時帰宅のたびにバラ園の写真を撮ってきてくれた。制限時間のある中、防護服を着用し首から放射線測定器を下げての作業は重労働だ。それらの写真が杵淵さんの個展に置いた写真集になり、今も続く写真展「私たちが愛したバラ園」に発展したのだ。

 「東京でやった写真展には岡田さんもいらしてくださって、その時初めて明るい言葉を聞きました。『めげないで前向きにやる』、その言葉を聞けただけでもやってよかった」と松田さん。

 震災から5年。前に進まなくてはいけないが、取り戻せないものもある。「フクシマを忘れないで」。バラのメッセージから目をそむけてはならない。


かつて双葉ばら園で撮影された一枚
双葉町の光(かこ)と影(いま)
 3月8日(火)〜13日(日)、和光市民文化センター(東武東上線和光市駅徒歩13分・バスあり)サンアゼリアで。

 横浜ばら写真の会と双葉町在住イギリス人との合同展示。無料。問い合わせは斎藤 Tel.090・5793・3800

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