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  横浜・川崎版 平成29年7月号  
原爆の悲劇 読み継ぐ  女優・大原ますみさん

現在、横浜市に住む大原さんは、女優活動のほか、歌手としてディナーショーなどに出演することも。「県民コーラスの会 トライアングル」の指導者も務めている。「中高年の人たちが『みんなで楽しく歌って健康に』との思いからレッスンにいらっしゃいます。6月の発表会は大盛況でした」
朗読劇「夏の雲は忘れない」10周年記念公演
 被爆者の手記や詩を基に女優たちが自ら制作した朗読劇「夏の雲は忘れない ヒロシマ・ナガサキ 一九四五年」。朗読はもちろん企画や雑務も分担し、今夏は「10周年記念公演」を全国各地で開催する。戦後72年の今、16人の女優は全員70代以上に。多くが空襲や疎開の記憶を持つが、74歳の大原ますみさんは「私には戦中の記憶はない」と話す。ただ、終戦直後の焼け野原は鮮明に覚えている。「戦争の語り部が少なくなりつつある今、(朗読劇で)読み継ぐ責任は重みを増していると思います」

 第2次世界大戦さなかの1942(昭和17)年11月に生まれた大原さんは、生後間もなく東京都内の生家を離れ、山梨県に疎開。終戦直後、東京に戻ったが、空襲に遭った地には、家屋のコンクリート製の土台だけが残っていた。「幼い私には、それが“爪痕”とは分からなかった」。戦争の犠牲になった家族がいなかったこともあり、「戦争を『遠いもの』のように感じていた」と明かす。だが、「夏の雲は忘れない」と同趣旨の朗読劇を合わせれば“読み継ぎ歴”は23年に。「原爆の朗読劇がライフワークになるとは、若いころは思ってもいませんでした」

 子どものころからバレエとピアノを習っていた大原さんは高校卒業後、宝塚音楽学校を経て宝塚歌劇団に入団。64年に初舞台を踏み、3年後には「紫式部」のヒロイン役に抜てきされた。「トップ娘役」として、男役の鳳蘭、安奈淳と共に「ゴールデントリオ」と呼ばれたほどの人気。「役にも恵まれた宝塚時代は楽しかった」と振り返る。

 74年の退団後は舞台に加え、映画やテレビドラマにも活動の幅を広げた。しかし、「思うようにいかず迷ってばかり。今、思えば周りの声に左右され過ぎました」。試行錯誤を重ねた末、85年に「やっと転機の作品に出合えた」とかみしめる。それは、心を病んだ女性を描いた一人芝居「ビラはふる」。劇作家・演出家の村井志摩子が原爆の悲劇と向き合った3部作「広島の女」の一つだった。文化庁芸術祭賞を受賞した舞台への出演を通し、「演じる意味を、それまで以上に深く考えるようになった」。同じ年から上演を重ねた原爆の朗読劇「この子たちの夏」を見たこともあり、「40歳を超えてから戦争に強い関心を抱くようになった」と力を込める。「戦争は遠いどころか、常に私たちの目の前にある問題と気付きました」

出演を志願
 中村たつ、渡辺美佐子、高田敏江…。客席から見た「この子たちの夏」では、原爆のすさまじさだけでなく、戦争体験を持つ女優たちの表現力にも衝撃を受けた。「声だけなのに、心の中に情景が立ち上がってきた。『すごい』としかいいようがない」。朗読劇を主催していた「演劇制作体地人会」に出演を志願し、94年からキャストに名を連ねた。しかし07年秋の地人会解散に伴い、その後の公演は白紙に。大原さんを含む女優18人は急きょ「夏の会」を結成し、「夏の雲は忘れない」の台本を作っている。08年夏の初演まで、「準備期間はたった半年。『よくできたな』と今でも思う」。

 《げんしばくだんがおちると ひるがよるになって 人はおばけになる》

 会場の地元の子どもを朗読に加えるなど、独自の取り組みも反響を呼び、各地から出演依頼が相次いだ。ただ、初演から「10周年」の今、大原さんは「体の状態を考え、出演を見合わせている人もいる。続けるのも簡単ではない」と率直だ。それでも福島の原発事故などへの憤りを、公演に向けるエネルギーへと変える。「核の暴走、戦争の惨禍…、『これからは絶対ない』なんて言えるわけがない」

 「10周年」を「あくまで通過点」と位置付ける。「みんなで『すごく老いて見苦しいと思われる前に、やめようね』とは言っている。でも、それはまだまだ先と考えています」


過去の「夏の雲は忘れない」公演
「夏の雲は忘れない ヒロシマ・ナガサキ 一九四五年」
 ◆東京・杉並公演◆

 8日(土)、座・高円寺2(JR高円寺駅徒歩5分)で。午後2時開演、同5時開演の昼夜2公演。

 構成・制作:夏の会、演出:城田美樹、出演:大原ますみ、長内美那子、渡辺美佐子(以上昼・夜)、大橋芳枝、高田敏江、山口果林(以上昼)、岩本多代、寺田路恵、柳川慶子(以上夜)。

 全席自由一般2500円、小中学生1000円。夏の会 Tel.090・8004・1985

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