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  東京版 令和6年2月下旬号  
現代の視点で「源氏」読み解く  作家・山崎ナオコーラさん

「ミライの源氏物語」の“もと”を連載した月刊誌「なごみ」の読者には、90歳を超す茶道の師匠もいると聞き、「『こんなことを書いて怒られないかな?』と不安でした」と、山崎さんは明かす。しかし、「読者の皆さまから『古典の授業の延長みたいな気持ちで読む必要はないと、あらためて思えました』など、共感の言葉をたくさんいただきました」。紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」の放映も始まり、「これを機に、もっと多くの人が『源氏』に親しむようになればと願っています」
エッセー集「ミライの源氏物語」がドゥマゴ文学賞受賞
 現代の視点から「源氏物語」を読み解く—。作家の山崎ナオコーラさん(45)による「ミライの源氏物語」は、千年以上前の昔と今を隔てる“社会規範の壁”に着目したエッセー集だ。容姿差別や性暴力、身分制度が生む貧困、年齢差別…。山崎さんは「それらに違和感を持っちゃう自分を肯定しながら楽しめる。それは、今だからできる読み方では…」と話す。同書は昨秋、「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」を受賞。「素晴らしいアプローチの源氏物語読本」という選考委員の歌人・俵万智の激賞を受け、声を弾ませる。「私も将来は『源氏』全文の現代語訳に挑みたい。できれば和歌の訳は、俵さんにお願いして…(笑)」

 毎年変わる「ひとりの選考委員」によって受賞作が決まる「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」。「第33回」の受賞記念対談で、山崎さんは「ナオコーラ版『源氏物語』全訳」を自身の「野望」と明言しながらも、「(作中の)和歌の現代語訳は難しい」とこぼしている。「それなら、和歌の訳は私に別注してもらえれば…」との俵の言葉に、「ぜひお願いします」。与謝野晶子、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴、角田光代…。これまで多くの作家が「現代語訳」を手掛けているが、「共著というのは、なかったのでは…。でも、より良いものができるのなら、全然あり。『実現するかも』と思っています」

卒論は「浮舟論」
 福岡に生まれ、埼玉で育った山崎さんは、「もともとすごく内気な性格」。早くから「源氏のとりこ」になった理由をこう話す。「紫の上や浮舟…、ヒロインの多くは受け身なのに物語を動かしていく。私はそこにはまりました」

 國學院大学では日本文学を専攻し、卒業論文のテーマは「浮舟論」。卒業後は会社勤めの傍ら小説を書き始め、26歳のとき、年の離れた男女の切ない恋愛を描いた「人のセックスを笑うな」(2004年)で「文藝賞」に輝き、作家デビューを果たしている。「コーラ好き」にちなんだペンネームに、デビュー作のインパクトあるタイトル…。「(私は)地味な若者だったけれど、本を手に取ってもらおうと、あえてとんがって…。でも実は今、少し後悔しています」と苦笑する。

 デビュー後も「ニキの屈辱」(11年)や「美しい距離」(16年)など、平易な文章で繊細な心理をつづった小説を次々著し、5度も芥川賞候補に。「結局、賞にはあまり縁がなくて…」と言うものの、自身の出産・子育て体験をもとにした「母ではなくて、親になる」(17年)などエッセーの人気も高く、「おかげで今年、デビュー20周年を迎えられます」と笑みを見せる。

 そんな山崎さんにとって「新しい文学の可能性の探求」を目的に掲げる「ドゥマゴ文学賞」は「久しぶりの賞」。選考委員を務めた俵は、山崎さんにとって憧れの歌人だ。その俵は選評に、「『古典をなぜ読むのか?』という古くからある問いに対して、これほど明快で深い、それでいて新しい答えに、私は出会ったことがない」。山崎さんは口元をほころばせる。「(ドゥマゴ文学賞は)従来の権威とは無縁の賞。その上、俵さんに評価していただけてすごくうれしい」


「ミライの源氏物語」
山崎ナオコーラ著
(淡交社・1760円)
未来へのバトン
 「ミライの源氏物語」は、「茶のあるくらし」を提案する月刊誌「なごみ」(淡交社)での連載に加筆修正の上、14章それぞれに題名を付け昨春出版された。容姿差別の「ルッキズム —末摘花」、「ロリコン —紫の上」、「マザコン —桐壺更衣と藤壺」、「性暴力—女三宮など」、年齢差別を表す「エイジズム —源典侍」…。山崎さんは「源氏」を単にあがめるのではなく、作者の紫式部についても、「平安時代にあった古く差別的な規範と無縁ではなかった」と指摘する。「作中では普通の恋愛のように描かれているけれど、現代では性暴力や誘拐といってよいシーンもかなりあります」。半面、「受け身の人間が物語を動かすには、心理描写や構成がよほど優れてないと。『源氏』は、私にとって小説の先生のような存在です」。現代の価値観だけで「源氏」を批判する気持ちはなく、「差別などの描写にモヤモヤ感を抱いても、本との対話を通して考えを深められる。それが読書の豊かな世界」と、言葉に力を込める。「そんな思いから『こういう風に読んだら面白いのでは…』という提案をいっこいっこ書いたつもりです」。そして、古典を読む意味を「今を忘れ、未来を考えず、過去に戻ることではない」と断言した上で、本のタイトルに込めた思いを語る。「『源氏』は千年以上、時代の変化に応じた読み方をされてきた。現代の私たちが未来の読者にバトンを渡すためにも、『今だからできる読み方』を探りたいと考えました」

 自身は性別にとらわれることなく、「なぜ人間はカテゴライズ(分類)をしてしまうのか?」という問題意識を、絶えず創作に反映させる。自著のプロフィール欄に「『誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書く』が目標」と記す山崎さんは、「身の回りの小さな出来事を通し、人間の本質や社会全体を見つめていきたい」とも。構想中の「ナオコーラ版『源氏物語』全訳」については、「人間は人それぞれだし、恋愛しないという生き方もあっていい。女性だから、男性だからというのではなく、性別を気にしなくても楽しめる『源氏』を目指します」と意気込みを見せる。さらに、「主語がなくても大抵(意味が)通じるといった日本語の特性を生かした、読みやすいものに。私の生涯の目標の一つです」。

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