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定年時代
 
  東京版 平成19年1月上旬号  
新春に響く名調子   3月に90歳/菊乃家〆丸さん

チンドン太鼓を抱え街頭に立つ菊乃家さん
 
 「東西東西(とざいとーざい)」。声高らかに始まるチンドンの名調子。多くの「定年世代」にとって懐かしい響きだが、2007(平成19)年の新春で、芸歴76年目を迎えるチンドン屋がいる。3月で満90歳になる菊乃家〆丸(しめまる)さん=本名・大井正明、墨田区=だ。

 「あたし元気だしね。やめる気なんて全くないよ」と、歯切れの良い江戸っ子言葉で話す。孫のような弟子とコンビを組み、得意の口上を響かせる。

 「世の中は、浮きも沈みも苦も楽も、心の舟のかじのとりよう」

 書家でもある菊乃家さんが、よく書く言葉だ。

 数知れぬほど味わった「人生の浮き沈み」。弟子たちは「心のかじとりはチンドン同様円熟の域」と、決して怒らない師匠を慕う。菊乃家さんがチンドン屋を始めたのは14歳のとき。チンドンで三味線を弾いていた母親のハルさんが、チンドン太鼓を買ってきたのがきっかけだった。ハルさんの商売道具のはずだったが、当時小学生の菊乃家さんにとっては格好の遊び道具。「おふくろは結局使わなかったけど、あたしが覚えちゃった」と菊乃家さん。小学校を卒業した昭和初期はチンドン屋の全盛期とあって演じ手が足りず、何度も頼まれた末、チンドン屋に加わった。

チンドンは健康に最高
 「嫌だったけど『あんちゃん上手だね』とほめられると、うれしくてね」

 17、18歳で弟子を持ったが、戦時色が濃くなるとともに仕事が急減。看板を下ろして造幣廠(ぞうへいしょう)に勤め、地雷作りをさせられた。これが菊乃家さんにとって「たった一度の宮仕え」。

 「上の人の言うことは何でも絶対。あたしはそれがだめだった」

 大戦の空襲で自宅は焼け落ちたが、終戦後に安定した職場を去った。「焼け跡のクズ鉄拾い、コークス屋、空き缶拾い、とにかく何でもやった」と振り返る。チンドン屋を再開したのは1949(昭和24)年ごろ。戦後復興とともに依頼が増え、昭和30年代からチンドン1本で生計を立てた。

 「チンドンは健康に最高にいい仕事。重い太鼓を抱え1日10キロ、20キロと歩くからね」
 子どものころ胃腸が弱く、胸膜炎で死にかかったそうだが、チンドン屋になってからは病気知らず。

 「でも収入はつまらない仕事。貯金とは無縁の人生だった」

 
自宅で妻のさな江さんと一緒にくつろぐ菊乃家さん
 妻のさな江さん(86)と顔を合わせ笑い飛ばす。戦後の住まいは空襲を逃れた民家で「居間兼台所兼洗面所だけ」。夫婦と子ども5人、ハルさんの8人家族が8畳余りの同じ部屋に寝起きした。  昭和30〜40年代は80日間以上、全く休めない時もあったが、50年代に入って仕事が減った。60歳で書道を習い始め、今は師範の資格を持つ菊乃家さん。

 「80歳になったら書道の先生になろうと思っていた」しかし、廃業する仲間が増える中、チンドン太鼓を持ち続けた。「(書道は)あたしより上手な人はいっぱいいるし、やっぱりチンドン一筋だよ」

 笑いを誘う粋な語り口が「名人」と評される菊乃家さん。落語の噺(はなし)などを参考にするほか、いろいろな人との会話から、ヒントを得る。

 「チンドン屋は広告屋。おもしろく聞いてもらわなきゃ」。落語家や講談師を思わせる話術にひかれ、弟子志願の人がやって来る。

 昭和とともに消えゆくかと思われたチンドン屋だが、ここ数年、若いチンドン屋が増えている。菊乃家さんに弟子入りした後、独り立ちする人も多い。

 「今はチンドンだけでは食っていけないのにねえ。でもやめろと言ってやめた人はいない。やっぱり組織の中で『黒を白と言われても…』という人ばかり。あたしと同じだね」

 後継者たちをひょうひょうとした口調で評するが、顔に自然と笑いじわができる。昨年8月、弟子たちが浅草で数え90歳の卒寿記念公演「菊乃家チンドン外伝」を催した。「若い人は派手でいいね。今までのやり方ににとらわれず、自由にやったらいいんだよ」

 菊乃家さんは「チンドンは形だけなら2〜3年もあればできるよ」と話す。「でも奥があり、そのまた奥がある。これでいいということはないんだよ」

 チンドン屋はチンドン太鼓の「親方」とドラム、楽士の3人が組むのが基本だが、宣伝内容に合わせて、人選ができるまでには相当の年数を要する。

 「気楽な稼業に見えるだろう。でも気楽に見えるようになるまで芸を磨くのは大変なんだ」。そして「とざいとーざい」から始まる幾種類もの口上を披露してくれた。日本最高齢のチンドン屋の声には、新春をことほぐような「つやと張り」があった。


『チンドン』
問い合わせは TEL:03-3612-3780

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