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  東京版 平成19年2月上旬号  
無声映画の魅力を伝えたい   活弁/澤登翠さん

散歩やカフェ巡りが好きという澤登さん。「ついつい街行く人にセリフをつけてしまいます(笑)」
 
活弁生活35年 古くて新しい話芸で
 「映画は人間の過ぎ来し方を映したもの。生きるヒントが描かれています」。東京都出身の澤登翠(さわと・みどり)さんは、ことし芸歴35周年を迎える活動写真弁士(活弁)。無声映画を上映中にその内容を語りで表現、解説する職業で、現代劇から時代劇、洋画など手掛けた作品は500本以上。16日(金)に行われる「活弁in学士会座」では、「大切に語っていきたい」という思い出の作品「散り行く花」を上演する。

 銀幕の阪東妻三郎や大河内傳次郎が大立ち回りを演じれば、チャプリンやキートンが所狭しとかけ回る。スクリーン右手では和洋楽団の生演奏が行われ、左手ではタキシード姿の澤登さんが多彩な語りで会場を酔わす。

 トーキー映画の登場でいったんは姿を消した活弁。第2次世界大戦後、2代目松田春翠さんらを中心に復興の兆しが見え、1959(昭和34)年、無声映画鑑賞会が始まった。「現代の人が楽しむためによみがえった、映画と語り、音楽の三位一体でおくる伝統話芸です」と澤登さん。

 幼少時代から映画好きという澤登さんは「テレビ名画座」の大ファンで、妹と大好きな女優のまねをしていたほど。マリリン・モンローやグレタ・ガルボにあこがれ、映画館には月10回近く通ったという。本好きの父や祖父の影響で自らも読書好きになり、法政大学卒業後は出版社に勤めたが、「組織になじめず、すぐに辞めました」。

 そんな折、無声映画鑑賞会で「瀧の白糸」を見たのが活弁生活の始まり。72年10月、語りは春翠師匠だった。「大好きな2人(原作=泉鏡花、監督=溝口健二)の作品なので見に行くと、舞台のような臨場感。音楽や弁士の調子で作品が変わるのが面白いじゃないですか(笑)」。抑えきれない感動を伝えると、「そんなに興味があるならやってみなさい」と春翠師匠。当時では珍しい若手の女性弁士が誕生した。

 修業はじっくり台本を書くことから。落語や歌舞伎、義太夫などを見ては、諸先輩から話芸を盗んだ。大事なのは「今の時代の弁士としていかに作品を解釈するか」。男女の差異や身分の問題など、現代と異なる価値観も「ギャグや解説で自由に表現できるのが弁士のだいご味」と澤登さんは説明する。

 
毎月恒例の鑑賞会の様子。「1997年、群馬県で『街の灯』を見たチャップリンの長女ジェラルディンさんが『言葉は分からないけど感動した』と抱きしめてくれました」と澤登さん。
 弁士として"食えない時期"はテレビのリポーターやラジオのDJ、司会などをしながら、両親に頼ることもあった。「今で言うパラサイト・シングルの先駆けでしたね(笑)」

 「客の反応がない。才能がないのでは」と何度も活弁を辞めようと思ったが、父や師匠のさりげない言葉が支えに。春翠師匠による技術的な指導はなかったが、「話芸は自分で作っていくものだから」と励ましてくれた。「20年前、亡くなる前日まで舞台を続けた先生は芸一筋でした」と今も敬愛してやまない。

 何より元来の映画好きという性分が弁士という仕事を好きにさせた。「どんなに落ち込んでも映画を見ると元気になれた。実際に(現場で)俳優を“目撃”しているような感覚になるんですよ」

 「昔から対人関係が苦手だった」ことも映画にのめり込む原動力に。「わたしの素顔まるごとでなく、無声映画が主役だからこそ、自分を表現できるんですね」。映画を介することで自分が"自由"になり、客とつながっていく。「だから、活弁の仕事はやめられない」と、澤登さんははにかむ。

 数々の海外公演のほか、文化庁芸術祭優秀賞も受賞した。最近では年100回の公演や執筆業、中高年向けの活弁講座と忙しい。今回で20回目となる学士会公演では、D・W・グリフィス監督の「散り行く花」を上演する。

 同作は15歳の少女と中国人青年のはかない恋と死を描いた無声映画の傑作で、澤登さんにとって特別な作品。89(平成元)年、川崎市民ミュージアムでの公演では、映画評論家の故淀川長治さんがかけつけ、「(澤登は)静かに語ったほうが、個性が出るよ」と人づてにコメントをくれた。「淀川先生は芸術の持つ “花と毒”を豊かに鋭く、独特の優しい言葉で話してくれる人でした」。映画を通して深く人間を見つめる、温かく、かつ厳しいまなざしを学んだという。

 10月には学士会館で35周年記念イベントを行う予定の澤登さん。「映画とは"矛盾に満ちた人間そのもの"。現在を考える材料がたくさんあります」。悲恋やわびしさ、人間の弱さなど、普遍的な価値観を多くの人と考えたい。無声映画の面白さを届けるため、今日も澤登さんは舞台に立つ。


「活弁in学士会座」&澤登翠のシネマトーク
上映作品は「キートンの探偵学入門(44分)」「散り行く花(67分)」。一般前売り2500円(当日3000円)。

日時 : 16日(金)午後6時半開演
場所 : 神田錦町 学士会館(地下鉄神保町駅すぐ)
電話予約 : (TEL)03-3292-5955
『マツダ映画社』
お問い合わせ(TEL)03・3605・9981

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