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  東京版 平成19年7月上旬号  
音楽は“祈り”それがわたしの心   バイオリニスト/久保陽子さん

夫の弘中孝氏とは、桐朋学園の同窓生。「わたしがコンクールに出るためのピアノ伴奏を彼にお願いしたのが出会いでした」
 
 日本を代表するバイオリニストの久保陽子さん (63) は14日 (土) 、浜離宮朝日ホールでコンサート「久保陽子トリオ『ピアノ三重奏名曲集』Vol.3」を開催する。久保さんがふるさと奄美大島 (鹿児島) で3歳の時、初めてバイオリンを手にして以来、実に60年がたつ。同コンサートでは、ピアニストで夫の弘中孝氏らとともに円熟のトリオ演奏を聴かせる。「小さいころから音楽に接してきた自分にとって演奏することは "祈り"のようなもの」と語る久保さんが自身のルーツなどを振り返った。

夫らと円熟の演奏
 久保さんは幼少時からバイオリンを始めたとはいえ、いわゆる"音楽エリート"ではない。「音楽好きが縁でお互い顔も見ずに結婚した」という両親の下で、久保さんは3歳になると父からバイオリンの手ほどきを受けた。とはいっても当時は終戦直後の混乱の時代。父は薬局を経営していたが生活は楽ではなく、久保さんが弾いていたのは父お手製のブリキのバイオリン。「まさに子どもの遊びのようなものでした」

 しかし久保さんが5歳の時、転機が訪れる。当時人気の石井みどり舞踊団が船で沖縄公演に向かう途中台風に遭い、しばらく奄美大島に停泊。船には石井氏の夫で著名なバイオリニスト折田泉氏も乗っていた。これを聞いた両親は早速、折田氏を訪ね、久保さんの実力をみてもらうことにした。

"決死"の奄美脱出

 演奏を聴いた折田氏は一言。「この子には才能がある。このままにしておくのは両親の罪です。わたしが面倒をみるので東京に出てらっしゃい」。自宅の住所を書いた紙切れをくれたという。

 折田氏の言葉に両親は決意し、周囲の反対を押し切り久保さんを東京に送り出すことにした。

 しかし当時の奄美はアメリカ領。子どもの"留学"は認められなかった。困った両親は最終手段として、とっぴな行動に出た。離婚して母が娘を連れ鹿児島の実家に戻るという形で島を出たのだ。その時、母は28歳、折田氏の住所が書かれたメモ以外何も頼るものもなく、母娘は"決死の覚悟"で奄美を後にした。ようやく上京がかなったものの折田氏との出会いからすでに3年が過ぎていた。それでも折田氏は「よく来たね」と待っていてくれたという。このエピソードが久保さんの原点だ。

 「台風が来たことによる偶然と両親の果敢な行動がなかったら、今の『久保陽子』はなかったでしょう。本当に奇跡だと思います」

 
バイオリンの練習をする4歳のころの久保さん
コンクールで頭角現す
  "奇跡の切符"を手にした久保さん親子はとにかく必死で頑張りぬいた。周囲は英才教育を受けてきた子どもたちばかり。ハイレベルな教育に遅れないように練習につぐ練習の毎日を送った。実家の事情で仕送りが途絶え、うどんばかり食べて空腹をしのいだ時もあった。「それでも何とかなると思っていました。頑張り屋さんの母はつらかったと思いますが、わたしはノーテンキでしたから」と久保さんは明るく笑う。

 久保さんは、村山信吉、斎藤秀雄、ジャンヌ・イスナールら各氏に次々と師事し、バイオリンの腕を上げていった。桐朋女子高等学校音楽科を卒業した 1962年、世界のひのき舞台「チャイコフスキー国際コンクール」に挑戦、見事3位に入賞した。久保さんの実力が次第に認められ、翌年、フランス政府給費留学生としてパリに留学。その後数々の国際コンクールで入賞を果たし、日本を代表するバイオリニストに。

自己のレーベルも設立
 「年をとればとった分だけ別の世界が開けてきました。少なくとも今のわたしは、パガニーニなど偉大な作曲家よりも長生きしてますし(笑)」と久保さんは現在の心境を語る。演奏会のほか、東京音楽大学の教授職、CD制作…と年を重ねてますますエネルギッシュに活動している。特に60歳を記念したCD制作を機に、自身のレーベル"KUBO YOKO"を設立したことは、久保さんの音楽の幅を広げた。「生演奏と全く違うCD制作を経験することで、逆に演奏そのものの完成度が高まってきました」と久保さん。

 「生演奏の魅力はその時々で違うこと。聴いてくれる人のエネルギーが演奏に反映していくんです。14日の演奏会は気心の知れた3人でやりますので、喜びにあふれたものになると思います」

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