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定年時代
 
  東京版 平成21年2月上旬号  
人間関係の“あや”を表現  俳優/木場勝己さん

予備校時代、学費をすべて使い込むほど映画にはまった木場さん。「いつか映画を撮りたい。恋愛ものの作品で一度話が進んだのに、スポンサーに逃げられてしまった」
 
主演の舞台に意欲
 東京・下町育ちの俳優、木場勝己さん(59)は「ぼくの生活環境は人。人間関係が生活の中心」と話す。少年期の吃(きつ)音症やいくつもの断念を経験して“心の揺れ”を楽しむ芝居にたどり着いた。さまざまな人間心理が盛り込まれた主演舞台「ワーニャ伯父さん」(19日〜)ではロシアの文豪チェーホフ(1860〜1904)の世界に挑む。「どうしようもない人たちが右往左往している」。“人を面白がる”名手の演技が楽しみだ。

 小柄だが、がっちりした体格にワイルドな口ひげがよく似合う。自らを「根は小心者で淡泊」と評する木場さんの物腰は柔らかい。「電車の中は人間観察の宝庫」と、けいこ場へは電車で通う。降車駅を間違える人の多くが時計を見てごまかすことに気がつけば、独り言で演劇批評を始めた人の後を思わずついていったことも。「自分は、見て面白がるタイプです」

▽芸名は出身地から
実家は材木業。芸名は出身地の江東区木場からとった。新派や新国劇が好きな父に連れられ、幼少期は人形町の寄席や明治座で芝居を見た。貯木場のいかだの上で野球をするなどやんちゃに過ごしたが、田舎のない自分には雄大な“大地感”が乏しいと分析し、「変化の激しい環境の中で微細な人間関係に触れてきた」と振り返る。

▽吃音の少年時代
新藤兼人監督の映画「午後の遺言状」(95年)では“頭のおかしい”脱獄囚、テレビでは「銭形平次」(87年)の八五郎や、主人公の教師と対立する高慢な校長(「3年B組金八先生」第6、7シリーズ)など、多彩な役を演じてきた木場さん。

 特に、そのつやのある深い声への評価は高いが、小学校に入るころから吃音の症状があったという。

 「少し年上の仲間にどもりの人がいて、まねをしてからかっていた。それが原因と思っていたけど、役者になってから“どもりの役”をやっても吃音に戻らなかった。悩みや二者択一を迫られたときにくる内的プレッシャーだったのかな」。結局、6年生の時に腎臓の病気で半年近く学校を休み静養しているうちに吃音も治り、「その後は、おしゃべりに変わりました」。

▽対話の妙を知る
 高校時代は落語にどっぷり浸かり、5代目柳家小さんに弟子入りの手紙を出すもやんわりと断られた。予備校時代は映画狂で映画監督を夢見たが、映画界が斜陽になると大学を辞め、俳優養成所に通った。

 蜷川幸雄らの櫻社を経て、同世代の劇作家、竹内銃一郎と演劇活動を10年以上続けた木場さん。「テーマの多くは笑いと暴力。激しいロック調の音楽にのせて長せりふを叫んでいるような感じだった」というが、経済的な理由で解散。

 30代になり家族も増えると、収入の道を得るためテレビにも出るように。フリーの俳優として来る仕事を選ばなかったという。経済的苦労や年齢的な肉体の衰えなど「いくつもの断念がある中で、自覚的な演技を考えるようになった」のは40代半ば。TPT(シアタープロジェクト東京)旗揚げ公演「テレーズ・ラカン」など英国人演出家デビッド・ルボーとの出会いが転機になった。

 ルボーとの仕事を通して、対話の大切さを実感したという。他者から働きかけられたときに起こる心理の変化や身体的反応…。口にする言葉よりも視線やしぐさに本音が出ることは日常的にあるが、木場さん自身、いい意味で脱力ができたのだろうか。「会話の中で生まれてくる小さなドラマの積み重ねが面白い。せりふの腹(気持ち)が据われば、叫ばなくても伝わるはず」

▽名戯曲は「現代的」
 場面ごとの人間描写や会話の妙味を追求したとされるチェーホフの戯曲は、そんな木場さんにぴったりだ。

 没落を自覚しながら道楽の限りを続けてしまう既得階級など、「チェーホフ作品の登場人物は“だらしない人”ばかり」と木場さんは笑う。それぞれが問題を抱えながら前向きに解決しようとせず、わき道にそれたり、余計なことをしたり…。「ついつい『バカだねぇ』と言いたくなる人が出てくるあたりは立川談志さんがよく言う“人間の業の肯定”にも似ています」。時代の行き先が分からずに右往左往している姿は「今の日本にそっくり。現代的」と楽しそうだ。

 チェーホフ四大戯曲では「三人姉妹」「桜の園」に続き今回が3作目となる「ワーニャ伯父さん」。憎悪や嫉妬(しっと)の念など、登場人物の思いや本音が何の変哲もない日常の中で交差していく。

 「役者はいい格好をしたがるもの」と笑う木場さん。魅力的な役に見せようとつい手を加え過ぎることもあるというが、「それをやればやるほど『ワーニャ伯父さん』の世界から遠ざかるような気がしている。ばかな面やウェットな部分、ドライな部分も等価に入れていくことが必要かな」。今日も木場さんの人間観察は続く。


2008年『チェーホフ短編集』より
 
「ワーニャ伯父さん」
19日(木)〜3月1日(日)、あうるすぽっと(地下鉄東池袋駅直結)で。

19世紀末、ロシアの片田舎。ワーニャは亡き妹の娘ソーニャと懸命に土地を守り、ソーニャの父である老教授に仕送りをしながら慎ましく暮らしていた。そんなワーニャたちのもとへ老教授が若く美しい後妻を伴って帰郷したことから彼らの生活は一変する…。

原作:アントン・チェーホフ、演出:山崎清介、出演:木場勝己、伊沢磨紀、小須田康人、松本紀保。全席指定5000円。全12回公演。開演時間など詳細は問い合わせを。華のん企画TEL:03-5917-4845

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