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  東京版 平成21年5月上旬号  
“思索と詩作”の創作家  絵本作家/葉祥明さん

食べるための仕事とやりたいことがきれいに分かれていたという葉さん。「絵本作家、画家、詩人…。肩書はいろいろだけど、本業は人間です」と笑う。
 
   
絵や絵本、文章 独自の世界観表現
 絵本作家の葉祥明さん(62)=大田区=は人間の心を含めた地球上のあらゆる問題をテーマに創作活動を行う。「簡素な生活の中で“自分らしさ”を探究したい」とシンプルライフを始めたのは20代前半から。ビジネス優先の生き方ではなく“思索と詩作”を楽しみながら、独自の世界観を絵や言葉で表現する葉さん。母親や子ども、若者たちへ温かなまなざしを向け、「『もっと違う生き方がある』と求めている人の何かの入り口になる作品をつくりたい」とほほ笑む。

 月に5日、絵を5枚描いて1枚2〜3万円で売り、残り25日は読書や自然観照など知性、感性を磨く生活─。そんな独自のスタイルを選んだ葉さんは「イラストは生計手段。大切なのは、ものを考える自由な時間」と話す。

 転機は学生だった1970年代。ヒッピーや学生運動、就職活動に励む若者が多い中、「どのパターンでもなく、ぼくの生き方を探した」という葉さん。当時、フリーのイラストレーターを目指していたが、「見聞を広めろ」という父の教育方針もあって1年間のアメリカ“遊学”に。ブラックパンサー党やベトナム反戦の運動など世界の潮流を肌で感じ、「自分とは何か、人生とは何か考えた」。
先人に自分重ねる
 映画「青春の光と影」(68年)と出合ったのもそのころ。モラトリアム期に放浪しながら自分や世界について考えた主人公の青年を見て「あれはぼくだ」と自分を重ねた。映画の根幹を支える1冊の古典作品が葉さんをさらに刺激したという。「夢中で読んだ」というその本はアメリカの思想家H・D・ソロー(1817〜62)の代表作「ウォールデン─森の生活」。2年2カ月にわたる森での一人暮らしを記録した同作は絵本作家の故ターシャ・テューダーなど後世の詩人や作家にも大きな影響を与えたという。

 質素な生活の大半を精神的な営みに割り当て、心の動きと日々の様子を記録したソローに感銘を受けた葉さんは、「ぼくはこの現代版。都会に住むソローになる」。当世の地位や評価を求めるのでなく、「後世の“ものを考える”若者の参考になればそれでいいんです」。

 「自分で絵を描きストーリーも生み出せる」と1972年、創作絵本でデビュー。その後、オリジナル・キャラクターの「ジェイク」や絵本「地雷ではなく花をください」など数々の作品を発表、海外でも読まれてきた。

 最近では、命や宇宙の根源をテーマにした講演などで中高年女性の人気も高く、「ぼくは知的探究で培った世界観を、絵や文章で分かりやすく伝える役」。

絵の中に風が吹く
 きれいな色彩と広々とした視点の作品には、日々のストレスや物欲から意識が解放されていくような心地よさがある。ヒーリング・アートと呼ばれることについて「阿蘇の広大な景色がぼくの心の原風景」という葉さん。かつて作品を見た人の「葉さんの絵の中には風が吹いている」という一言に自分の絵の本質を気づかされたと明かす。「“空間”を描いたぼくの絵には見る人の心の中も映っている。人によっては無心になってその絵の世界に入り、包み込まれた感じになるようです」

 葉さんの弟で、葉祥明阿蘇高原絵本美術館(熊本県阿蘇郡)の葉山祥鼎館長は「阿蘇は人を受け入れる盆栽的な優しさ、もう一度頑張ろうという気にさせる場所」と語り、美術館の眼前に広がる四季の移ろい、丘また丘の景色を楽しむ。「車いすの人がここで絵を見たあと、美術館の外の丘に出ると不思議とはだしで歩き出したこともありました」

「面白い時代」
 ここ40年間で仕事が増える一方、「何度か心身の不調が起きた」と葉さん。「自由業だけど不自由業になっていた」と笑うだけに、残りの人生を考えたときあらためて実感するのは「思索と詩作の時間の大切さ」だという。

 悲惨な事件や不況、生活不安…。混迷の現代をあえて「面白い時代」と表現する葉さんは、既存の枠組みや常識で理解できない現象に悲観するのでなく、新たな価値観が生まれる変化の過程と位置づける。重い病気と闘う人や受験、就職でもがく若者、男性社会の中の女性など、「(いや応なしに置かれた境遇の中で)自分とは何かを考えざるを得ない人たちに、ぼくは『求める先はあるよ』と言いたい」と語りかける。誰かに導きを求めるのではなく、自分自身の中に価値尺度を持とうとする生き方につながると考えるからだ。

 「英知は一人ひとりの中にあるもの」と葉さん。本を読み、絵を見て自然に触れる。苦しみや悲しみで内向きになるのではなく、「この生き方でいいのだろうか」という問いかけを毎日、自分に向けてみる。そんな知的探究の生活を続ける葉さんは「人の意識に働きかけるようないい本を、これからも出していきたい」と笑顔で語った。

よう・しょうめい【本名=葉山祥明】 (絵本作家、画家、詩人)
 1946年熊本県出身。創作絵本「ぼくのべんちにしろいとり」でデビュー。著書に「風とひょう」(ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞)、「イルカの星」など多数。自作の詩「母親というものは」がリリー・フランキー著「東京タワー」(扶桑社刊)で引用される。北鎌倉と故郷の阿蘇に個人美術館がある。

「木を植えよう」(C)YOH Shomei
「ジェイク」(中央)は、ふみの日記念切手(92年)や、「MOTTAINAIプロジェクト」に賛同するルー大柴さんのTシャツキャラクター(07年)に採用
 
◆北鎌倉葉祥明美術館企画展
「星の王子さま─習作一展」22日(金)まで。新作絵本展「しろくまのピナーク」23日(土)〜7月24日(金)。JR北鎌倉駅徒歩7分。年中無休。一般700円。
問い合わせ:0467-24-4860
HP:http://www.yohshomei.com/(外部サイト)

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