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定年時代
 
  東京版 平成21年9月下旬号  
“喪失”から再出発  評論家/樋口恵子さん

環境や少子化をテーマにした活動も続ける樋口さん。「戦後、わたしたちは長寿を楽しむ一方、資源や富をむさぼってきた。今、こういう問題に気付いた以上、“食い逃げ”せずに行動していきたい」
 
   
「人生100年時代の航路描く」
 長年、女性の雇用差別撤廃運動や高齢化問題に取り組んできた評論家の樋口恵子さん(77)は「(わたしたちは)人生100年時代の航路を描く責任がある」と話す。乳がん手術や東京都知事選挙落選…。人生後半で体験したいくつもの“喪失”を受け入れ、「新しく結んだ人間関係を心のはかり(天秤)に掛けてきた」と樋口さん。自らの体験を胸に、代表を務めるNPOの活動や講演など現在も全国を忙しく回る。

出会いが心の支え
 厚生労働省が2009年7月に発表した日本人の平均寿命は女性86.05歳、男性79.29歳。100歳以上の人口も全国で4万人を超え(同9月発表)、「今や人生100年時代」と樋口さん。「老老介護」や“おひとりさま”の老後、住まい、就労…。高齢期の生き方の手本がない長寿社会を「人生100年丸」の船出に例え、「想像もつかない海へ航海に出る初代乗組員として、次の世代のための航海図を作る責任がある」と語る。

 「人生50年で七転び八起きなら、これからは倍の十四転び十五起き」と樋口さん。病気や死など中高年期の挫折や別れの多さを指摘しながらも、「その体験を受け入れて耐え、新たに生まれてくる目の前の他者との関係を結び直すことが大切。それによって自分自身の成長や人と深くかかわる体験につながる」とかみ締めるように話す。

 

10数年続いている歳末名物「女たちの討ち入りシンポ」の様子=NPO高齢社会をよくする女性の会提供
   
介護問題に危機感
 肺結核を患い、戦後の混乱期を病床で過ごした樋口さん。幼少期には「将来子どもを持つのは難しい」といわれるほど重い腎臓炎も経験したが、出産・再就職を経て71年、フリーの評論家に。

 代表を務める「高齢社会をよくする女性の会」(=WABAS。05年にNPO認証)を立ち上げたのは樋口さんが50歳の時。「女性は子育てを終えると、しゅうとの介護を一手に背負わされていた」。当時の人口推計などから「国民総介護時代が来ることは予想できた」というだけに、就労の場から何度も離れ、自分自身の老後の保障を失っていく女性の多さに驚いたという。

介護 分かち合う社会に
 「女性の自立、日本社会の自立のためにも男女を平等にして介護を社会的に分かち合う必要がある」と高齢社会にかかわる問題の研究や政策提言、地域活動などを行ってきた。

 “介護保険(00年施行)前夜”の98年には、「老老介護」の共倒れの現実に直面した。脳こうそくで倒れた夫の介護を始めて1年半。大学での講義などで多忙な時、樋口さん自身に乳がんが見つかり手術を受けた。

 入院先では「手遅れになった乳がん患者の女性と出会った」。胸のしこりに気付きながら、はいかい症状のあるしゅうとの介護に追われた中年女性。しゅうとをみとった後に診察、手術を受けたが助からなかったという。いろいろな思いを胸に樋口さんは「この運動をやってよかった。(課題はあるものの)介護保険制度実現の1つのきっかけになったのでは…」と振り返る。

カナリアのように
 「女性と仕事の未来館」初代館長や政府の審議会委員など多くの要職も務めたが、「自分たちは炭鉱の中のカナリアと同じ」と樋口さん。危険にいち早く気付いて声を出すのも、社会の中央ではなくその周辺にいるからだという。落選必至といわれた都知事選挙(03年)に70歳で出馬したのも、そんな思いがあったからだろう。

 現職知事に大差で敗れたものの、短期間で80万票以上を獲得した樋口さん。「老いの蛮勇に同情してくれたのかな」と今でこそ笑うが、当時は「社会的に葬られた」と思うほど落ち込みが激しかったという。「人間関係のリトマス試験紙だった」と振り返る選挙だけに複雑な思いも入り交じるが、「失ったものだけを見ては駄目。そこで得た新たな出会いを心のはかりに掛けてバランスをとってきた」と淡々と話す。

 高齢者や利用者の立場から活動を続ける樋口さん。08年にはWABASの署名運動などが実を結び、「介護従事者の待遇改善に関する法律が盛り込まれました。人間と人生を支える介護が日の当たるものになってきたことがうれしい」とその成果を確かめる。

 生と死の間の“老い”の時間が長くなり新たな問題も山積みだが、それは平和と豊かさの賜物(たまもの)だと樋口さんは考える。「障害者や高齢者の人権を、と言えるのも長寿の時代になったから。人生100年時代は他者の人生100年を大事にする時代です」

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