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  東京版 平成22年10月下旬号  
“常識を覆した男”の半生が舞台に  リンゴの無農薬栽培に成功した木村秋則さん

「かまど消し」。無収穫の時期、木村 さんについたあだ名だ。「かまどの火 を消す。つまり『役立たず』よりひど い意味」と、つらい過去を笑い飛ばす 木村さん。「わたしをそう呼んで一番 笑った人が、今は一番の理解者です」
 「絶対不可能」といわれたリンゴの無農薬・無肥料栽培。その“常識”を覆した木村秋則さん(60)=青森県弘前市=は、10年もの収穫ゼロに直面した。「わたしな、それでも投げ出さなかったのな」。屈託のない笑顔と津軽弁。孤立と困窮に苦しんだが、「(農業の)常識をすべて捨ててから道が開けた」と話す。独自の自然栽培で育てたリンゴは今や“奇跡のリンゴ”と脚光を浴びる。その半生は舞台化され、11月5日(金)から都内で上演される。

 津軽の秀峰・岩木山を望む木村さんのリンゴ畑。1988(昭和63)年春、リンゴの白い花が一面に咲いた。無農薬栽培に挑んでから10年…。すべての木が枯れかかった畑が“再生”した光景だった。木村さんは回想する。「一番忘れられないです」

 舞台「りんご」で木村さん役を務める長野博は、先日の製作発表で木村さんのリンゴをこう表現した。「(堅い)しんが無い。種以外、全部おいしい」。木村さんは、長野が人気アイドルグループ「V6」のメンバーとあって、「こんないい男に演じてもらえるなんて…、恥ずかしいなあ」と声を上げて笑う。自殺の瀬戸際まで追い詰められた苦悩の影は、そこにない。

「大切なことは目に見えない」
 青森県岩木町(現・弘前市)の農家に生まれた木村さん。22歳の時、中学校で同学年だった美千子さん(60)と結婚し、「わたしは二男だったから木村家の婿になった」と語る。リンゴ栽培で「初めは農薬と肥料をばんばん使った」。しかし農薬散布後、美千子さんは体調を崩し寝込むことも。自然農法の本を読んだ木村さんは減農薬を経て78年から無農薬栽培に切り替えた。「そこは地獄の一丁目でした」

 大量の虫が発生し、病気のため葉は落ちた。農薬の代わりになりそうな物は何でも試した。卵の白身、ニンニク、ワサビ、泥水…。しかし「全くといっていいほど駄目でした」。雑草を採り食費を切り詰める極貧生活。3人の娘は1個の消しゴムを3つに分けて使った。

自殺寸前での転機
 手作業で害虫を取ったが、約800本あった木は80本以上枯れた。「自分も死のうと思った」。85年7月、首をつるためのロープを手に岩木山をさまよった。その時、「ドングリの木を、なぜかリンゴの木と見間違えた」。農薬も肥料も無いのに、濃い緑の枝葉を広げる野生の木。根元を掘り返し、土が“ふかふか”として軟らかいのに気付いた。「山の土を畑でも再現できれば、リンゴの木は元気になってくれるかも…」。木村さんは自殺寸前からの転機を振り返る。「大切なことは土の中、目に見えない所にあったんです」

 それから雑草はあえて伸ばしたまま。畑の土を自然の状態に近づけ、カエルやヘビもいる多様な生態系をはぐくんだ。「害虫を食べる虫が被害を減らしてくれる。葉の表面の菌は病気の発生を抑えてくれる」。木村さんは「間違った常識はいっぱいあると思う」と言葉を継ぐ。例えば「肥料をやらなければ作物は育たない」という“常識”。「肥料は作物本来の生命力を引き出すには、むしろ邪魔」

 徹底した観察に基づく管理で微妙な生態系を保ち、花が一斉に咲いた88年にはピンポン玉大のリンゴを収穫した。90年代半ばには「ようやく売り物らしくなった」。06年12月、NHK総合テレビの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介されてからは、生産量をはるかに超す注文が押し寄せる。

舞台は「照れる」
 舞台上演を控え、木村さんは照れる。「失敗だらけの過去を見られるのは恥ずかしい」。半面、「わたし、投げ出さなかったでしょ。そこは共感していただければうれしい」と笑顔を見せる。無収穫の時期、周囲の農家から変人扱いされても揺らがなかった家族の愛情と信頼感。舞台では義父母を含む木村さん一家の姿が、周りの意識を「冷笑と非難から、理解と共感へ」と変えていった様子も再現される。

 木村さんは自身の取り組みを「まだまだ試行錯誤の段階」と語る。現在、病虫害防止のため散布するのは酢だけ。法律で酢が特定農薬とされているのは「変だと思う」と話すが、「将来は酢もやめたい。それがわたしの自然栽培の完成形」と先を見据える。

 高額な機材を必要としないだけに、「最高の農産物を誰もが買える値段で、という目標は実現できる」と力強い。リンゴ以外にも、米や野菜の自然栽培普及のため全国を巡る。「仲間が増えてきた。笑顔で農業ができる時代が近づいてきたようでうれしいです」


独自の自然栽培を行っているリンゴ畑で笑顔を見せる木村さん
舞台「りんご」木村秋則物語
11月5日(金)〜14日(日)、ル・テアトル銀座(地下鉄京橋駅徒歩1分)で。全14回公演。
 作:藤井清美、演出:栗山民也、出演:長野博、佐藤江梨子、浅野和之ほか。
 全席指定8500円。上演時間などは問い合わせを。サンライズプロモーション東京TEL.0570・00・3337

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