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  東京版 平成23年5月上旬号  
平穏死―安らかな看取りを…  特養医師/石飛幸三さんが提唱

昼食を取る入所者と笑顔で言葉を交わす石飛幸三さん。感染症対策など必要な場合を除き、白衣を着ない。「ホームは暮らしの場。その雰囲気を壊さないよう、私も普段着です」
 平穏死—。世田谷区の特別養護老人ホーム(特養)の医師、石飛(いしとび)幸三さん(75)が著書「口から食べられなくなったらどうしますか『平穏死』のすすめ」で掲げた人生の幕の引き方だ。血管外科医として先端医療に携わってきたが5年余り前、活動の舞台を特養に移した。そこで痛感したのは、延命至上主義が天寿を全うしようとする高齢者を苦しめている現実。短期間で救急搬送を激減させるなどの実績を挙げた石飛さんは、「安らかな看取り(みとり)のお手伝いをするのも医療の役目」と話す。

 「平穏に暮らし最期まで。話は単純だね」。石飛さんは「平穏死」を明快に定義する。平穏死は、昨年2月に出版された著書のタイトルとして考え出された「新しい言葉」。本人の意思が前提の尊厳死と違い、意思表示できない認知症の高齢者の看取りにも有効だ。

 石飛さんは歯切れ良く続ける。「問題は、いずれは訪れる最期に向けて、家族や(医療・介護現場の)私たちが、どうすれば良いかです」

エリート外科医
 広島県に生まれた石飛さんは慶應義塾大医学部卒業後、血管外科医として難手術に挑んできた。1980年代には加藤初、新浦壽夫ら肩を痛めたプロ野球投手の手術を次々成功させ、新聞などで大きく報じられた。勤めていた都内の大病院では副院長に。「エリート医師として、ちやほやされていた」と苦笑する。

 しかし90年代半ば、病院理事の不正疑惑をめぐる調査委員長を務めていた石飛さんは突然、「定年」を理由に解雇を言い渡された。解雇の不当性を訴えながらも、「屈辱に耐え、自分の生きざまを10年間、とことん考えた」。病院を去り05年12月、世田谷区社会福祉事業団が運営する特養「芦花ホーム」の常勤配置医になった。「人生の終末における医師の役割を確認したい」という思いは以前からあったが、「あれ(解雇通告)がなかったら、自分は大病院でふんぞり返ったままの一生だったと思う」。

9割は認知症
 芦花ホームの入所者100人の平均年齢は87歳前後で、ほぼ9割は認知症。着任当初、鼻に通した管や腹部に開けた穴から栄養を送られ、言葉を発することもない入所者を目の当たりにし、「人間、こうまでして生きなければならないのかと…、『理不尽』と言いたい思いさえした」と回想する。口から食べた物を飲み込む機能が低下している認知症の入所者は、気管に食べ物が入ることによる誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすい。頻繁だったホームからの救急搬送。病院に運ばれた人は腹部の穴から胃に栄養を送る胃瘻(いろう)の処置を受け、ホームに戻されるケースが多かった。胃瘻の後、確かに長生きする人もいる。ただ、直接胃に入った栄養分が食道に逆流し、再度の誤嚥性肺炎を引き起こす症例も、また多い。

 「口から食べられなくなったらどうしますか」。著書のサブタイトルに取られた言葉は、石飛さんが入所者の家族に尋ねる言葉でもある。胃瘻を全面否定しないが、「自然の寿命を無理に延ばすことが、本人を苦しめることもあると、お話ししている」。現在、胃瘻を選ぶ入所者の家族はほとんどいない。

 石飛さんは点滴などによる水分・栄養補給の問題点も挙げる。「常識のようにいわれていた量は、やり過ぎだ。肺や心臓に負担を掛ける」。着任後、介護士や看護師らホームのスタッフ、家族らと徹底的に話し合い、栄養・水分の量をきめ細かく調整している。激減した肺炎や窒息による救急搬送。代わって増えたのは、老衰に伴うホームでの穏やかな看取りだった。

平穏死を普遍化
 石飛さんは、ホームの職員から「私たちの取り組みを普遍化できないか」との提案を受け、本を書いた。ホームで起きていたこと、成果、課題…。ペンは医療・介護制度の矛盾、平穏死を妨げる“法の壁”も鋭く突く。

 出版から1年以上たった今、「バッシングが無いことに、むしろ驚いている」と笑う。10年余り前、平穏死に近い考えを公にした人は、激しい批判にさらされた。「とりあえず延命治療をすれば、治療放棄と責められないという事なかれ主義は今なお根強い」と指摘するが、「新たな看取りの文化の芽生えも感じる」。出版後、全国各地の特養や医師会だけでなく、医療・福祉とは直接関係ない市民団体からの講演依頼も相次ぐ。

看取りの“黒子”
 石飛さんは「人生の幕の引き方を、日本人はもっと正面から考えるべき」と言葉に力を込める。「死をタブー視せず語ることは、自身の生きざまを見つめ直すことにつながる」。身も心も凍るような孤独感を経て、「私自身、順風満帆の人生では見えなかった“本当のこと”が見えてきた」と話す。「地味な現場で身を粉にして働く人が看取りの現場を支えている。今は心からそう思える」

 着任後、“人生の最終章”を見つめ続け、「幸せは名誉や富だけでは決まらないと、あらためて思う」と話す。

 「人の幸せは、精いっぱい生きて、心安らかに最期を迎えること」

 自らを安らかな看取りのための“黒子”と位置付ける。

「口から食べられなくなったらどうしますか 『平穏死』のすすめ」
石飛幸三著 (講談社・1470円) ブックサービス
フリーダイヤル 0120・29・9625

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