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  東京版 平成23年12月上旬号  
母の「介護の日々」歌う  熊本の濱野裕生さん

濱野さんは“介護ブログ”に日々の出来事や自らの思いを記す。デビューCDに収録されなかった曲の「短縮版」も聴けるとあって「多くの方が小まめにチェックしてくださる」
61歳でメジャーデビュー
 〽時に母は童になり 時に母に戻る事も…

 認知症を患った実母の在宅介護を続けながら、その日々を歌につづる濱野裕生さん(61)=本名:高橋尚宏、熊本市=がこの夏、プロの歌手としてメジャーデビューした。7月発売のCDには「蝉(せみ)しぐれ〜老いゆくいのち〜」など4曲を収録。戸惑い、葛藤、母への愛情…。九州で静かな感動を呼ぶ“介護ソング”は今、全国に反響を広げる。「過酷な介護の悩み、思いを共有できれば、それは癒やしです」

 〽母は浮雲 流れゆくちぎれ雲 遠い記憶の狭間(はざま)を彷徨(さまよ)う老いた旅人…

 濱野さんは「蝉しぐれ」で実母の高橋ツヤさん(98)を“旅人”と歌う。「私を息子と認識する時もある。ただ、それは長い時間続かない」

 濱野さんがツヤさんを古里の長崎県佐世保市から熊本市の自宅に迎えたのは2003年春。「(母の)正常な時間が短くなっていくのを見つめ9年目に入った」。CDには濱野さんを自分の兄と思い込んだ母を歌った「兄(アン)ちゃま」も。

 〽私を母が呼ぶ 私の事を兄ちゃま、と呼ぶ…

 同居を始めた頃、ツヤさんは要介護「2」だったが、現在は最も重い「5」の認定を受けている。

聴衆に「一緒に泣こうよ」
 高校生の時から佐世保の米軍基地に出入りした濱野さん。ロックなどアメリカの音楽に夢中になり、基地内のステージでベースやピアノを演奏した。その頃、作詞・作曲も始め、「命そのものをテーマにしてきた」。

 大学卒業後、自ら手掛けた事業で借金を背負ったこともあり、「音楽家になる夢は若い頃、捨てた」と苦笑する。妻と居を構えた熊本で音響・照明管理の会社経営を軌道に乗せ、経済的安定も取り戻した。

 しかし64歳で夫と死別したツヤさんは、やがて心臓発作や意識消失などに襲われるようになる。転倒して重傷を負う時も。80代後半から、濱野さんの姉と兄の家族が交代でそれぞれの家に呼び寄せたが、濱野さんは「母はすぐ『一人で大丈夫』と実家に帰ってしまっていた」と明かす。「今思えば、異様なほどの頑固さは認知症の初期症状」。姉と兄の家庭の事情もあり、90歳になった母を末っ子の濱野さんが引き取った。同居を始めた頃は濱野さんも母の言動に「パニックになった」。

 日記をきちんと書く余裕のない毎日。そんな中、再び始めたのが曲作りだった。「いわば介護記録代わり。初めは人に聴かせる気などなかった」と言う。母の症状、自らの胸中…。うつ状態に陥った時も思いの丈を歌に込めた。

 〽時折、俺は狂う 得体の知れない運命を憎む…

 〽だけど命は一つ 細る命を見捨てちゃいけない、と…


 濱野さんは9歳の時、大病で生死の境をさまよい、不眠不休の母に看病された。「この時、母から“2度目の命”をもらった」。穏やかな表情でこう語る。「人に『マザコン』と言われても、今が“母に命を返す時”と思う」

 同居を始めてから作った曲は120以上。そのうち52曲を自主制作CDとして親戚や友人、知人に配った。それが評判となり入手希望が殺到するように。05年から始めた“介護録ブログ”も共感を呼んだ。(株)テイチクエンタテインメント(渋谷区)からメジャーデビューの話が来た時は、「私自身が一番戸惑った」と快活に笑う。

「USEN」1位
 デビューCDには、母の老いと蝉時雨のはかなさを重ね合わせた詩情豊かな「蝉しぐれ」や、心の叫びをあらわにした「兄ちゃま」など、作風の違う4曲を収めた。「蝉しぐれ」は8月、USENチャート(演歌/歌謡曲部門)1位になり、その後も上位を維持している。濱野さんは「大変な思いをしている人が歌を聴き、『自分だけではない』と孤独感を癒やしてくれたらうれしい」と話す。

 今、介護と仕事で睡眠時間を削られながらも、地元を中心にコンサート活動も始めている。「『暗い』『重い』と言われても、表面的な笑いでごまかすような歌は歌わない」。聴衆の“介護仲間”に語り掛ける。「一緒に泣きましょうよ」と…。「今は母の変化を心静かに受け入れ、母とのやり取りに安らぎさえ感じるようになった」と言う濱野さんは、言葉を継ぐ。「悩み、苦しみを突き抜けてこそ解決できる事もある。その時、笑顔も戻ってきます」


濱野裕生さんと母親の高橋ツヤさん=2008年10月、熊本市内の神社
「蝉しぐれ 〜老いゆくいのち〜」
 作詞・作曲:濱野裕生、編曲:鈴木豪。タイトル曲のほか「ホッホ」「兄ちゃま」「金木犀(きんもくせい)」を収録。1200円。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 CDアルバム「母に生命(いのち)を返す時」は14日(水)発売。「母のクーデター」など、デビューCDに収められていない12曲を収録。2500円。

【濱野裕生の介護ブログ】http://inotinouta.otemo-yan.net/
【濱野裕生office】TEL.096・338・5632

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