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  東京版 平成24年8月上旬号  
介護の現実を映画に  精神科医の和田秀樹さん

老人問題や教育問題などの分野を中心に、テレビや雑誌などで精力的に活動する和田さん。「映画を撮れば、よりいろいろな人に伝える機会が増える期待があります。次は高齢者の恋愛映画を撮ってみたいですね」
原案・監督を自ら務める
 急増する介護離職者、介護うつ―。実際のエピソードを基に、現代の介護をリアルに描いた映画「『わたし』の人生(みち)」が11日(土)から公開される。認知症を患う父とその娘がタンゴを通じて家族の絆を再確認していく物語。監督・原案を務めた老年精神医学を専門とする精神科医の和田秀樹さん(52)は、これからの介護のあり方を問いかける。「一番恐れるのは、介護する人とされる人の共倒れ。介護に携わることを理由に人生を諦めてしまうのでなく、自らの人生の選択のきっかけにしてほしい」

 現在、1000万人以上の人々が介護に携わっているという日本。少子化が進み、親が要介護者になった時、介護をする側になりうる子どもの負担は今後ますます増えるはず。映画では介護社会の問題点を浮き彫りにしながら、「美談ではない、介護の現実を描いた」と和田さんは振り返る。

 監督2作目となる本作のテーマに選んだのは、女性の「介護離職」。年間15万人、すでに50万人以上が介護によって離職しているという切実な問題だ。自身の妻の“ママ友達”が話題にする介護事情に着想を得て、認知症患者「家族会」を継続する自らの経験も重ねた和田さん。「社会的進出も増えてきた世代なのに、子育てに追われ、それが終われば親の介護。女性の一生は、子育てと親の介護に縛られていくのか。介護のためにいろいろなものを犠牲にしている人はあまりにも多い」

 介護認定のハードルの高さ、特別養護老人ホームの不足、家族会、成年後見制度…。映画には介護に向き合おうとする家族の苦難や支援策も描かれる。「介護保険は、40歳になると給料から天引きになっているのに、いざ親の介護が始まった時にどんな手続きが必要か知らない人は多い。定年世代の中にも、これから経験する人がいるのでは」

“共倒れ”防ぐ選択を
 映画に「タンゴのステップ」を取り入れたのは、「タンゴには、人と人とを結びつける要素があるから。認知症の人は、機嫌のいい時に問題行動は少ない。音楽療法やダンスセラピーなど、機嫌のよさをどう維持していくかは重要です」。

 有料老人ホームで15年にわたり心のケアも行ってきた和田さんは、「精神科医の立場として、介護する側とされる側の共倒れが一番よくない」と考える。「医師や介護従事者などプロの目から見れば、解決や対応できることが多いという現実も示したかった」

 例えば、認知症の親を同居で介護するケース。トイレを汚したり、食事の内容を繰り返し質問したり…。親の「できないこと」に腹を立て怒ってしまう一方、親の側も「一番近くにいる人を悪く言う」「感情のブレーキが利かなくなる」という認知症の症状で同居する家族を傷つけてしまうことも。お互い頼りにしている存在なのに、いがみ合ってしまうつらさ。「親を在宅で介護するという風潮は根強いけれど、施設に入るという選択を考えてもいいと思う」

「幸せ」追求して
 和田さんの医師としてのスタンスは、自分らしい人生や幸せを自ら選択してもらうことだ。「60~70代の方によく言うのは、『老いと闘える限りは闘いましょう』。ただ、一生闘い続けるのも苦しいので、どこかで老いを受け入れる時期が必要です」

 施設への入居やデイケアの活用…。その時に備えて元気なうちから準備をしておくことも重要だという。「老人ホームなどにお金を使うことで子どもに残す財産は減るかもしれないけれど、それは仕方のないこと。定年後の考え方としても、自分のやりたいこと、自分の幸せを最大限考えればいい」

 経験を生かして詩や小説を書いたり、新たに資格試験の勉強をしたり…。「定年後20~30年あると考えれば、いろいろなことを始める時間はある」と和田さん。意欲や好奇心など「感情の老化」を防ぐには、日々の生活の中で“ハラハラドキドキ”の体験が大切だという。ポイントは、恋愛など結果が読めないものを選ぶこと。47歳の時、「受験のシンデレラ」で念願の映画監督デビューを果たした和田さん自身、「企画から資金集め、撮影、編集、公開の直前までハラハラの連続」と苦笑する。

 「一生懸命やると、それが天職になることはある」。老年医療、文筆活動に打ち込んできた和田さんは「後半生は作る仕事を。1本くらい死後も評価される映画を撮りたい」と意欲的だ。高校時代から映画ファンになり、20代で夢見た映画監督。「伊丹十三監督に影響を受けた」という和田さんは、社会派作品の少ない現状を嘆く。「日本の人口構成から見ても、もっとまともな介護ドラマがあっていい」と自らメガホンを取った。「介護の現実は続く、とリアリティーにこだわった作品。ラスト10分に私の本当の思いを込めました」

【わだ・ひでき】
 大阪府出身。精神科医。東京大学医学部卒業後、高齢者専門総合病院浴風会病院や川崎幸クリニックで20年以上にわたり老年医療の経験を積む。「困った老人と上手につきあう方法」(宝島SUGOI文庫)、「人は『感情』から老化する」(祥伝社新書)、「老人性うつ」(PHP新書)など著書多数。

(C)2012「わたし」の人生 製作委員会
「『わたし』の人生(みち)~我が命のタンゴ~」 日本映画
 子育てを終え、長年の夢である大学教授への道をかなえようとした百合子。父・修治郎の認知症発覚で介護に追われ、家族は離れ離れになっていく。そんな時、百合子は同じ状況の家族が集う認知症「家族の会」の存在を知る。そこで出会った患者たちとアルゼンチンタンゴを習い始めた修治郎。ステップを踏むたびに表情が和らいでいく父の姿を見た百合子も、再び夢に向かう決心をする。
 監督・原案:和田秀樹、出演:秋吉久美子、橋爪功、冴木杏奈、小倉久寛、松原智恵子。104分。
 11日(土)からシネスイッチ銀座(TEL.03・3561・0707)ほかで上映。

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