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  東京版 平成24年9月下旬号  
現代の“鬼”を描く  劇作家・演出家の森井睦さん

「琉歌・アンティゴネー」で、主人公のニライを演じる伊東知香に演技指導をする森井さん。理想の演技を「詩的行為」と言い表す。「俳優が自分の生きざまを役に入れ込めたら、それは演技の技術を超えた詩的行為となり得る。そこまでいけば俳優も芸術家です」
沖縄の悲劇、10月に上演
 現代の“鬼”を描く―。劇団「ピープルシアター」を主宰する劇作家・演出家の森井睦さん(73)は、鬼をモチーフにした作品を手掛ける。ただ、森井さんのいう鬼は「悪鬼」や「鬼軍曹」といったイメージとは全く違う。「それは権力と闘わざるを得なかった人。愛を抱く受難の人といってもいい」。10月上演の舞台は沖縄の基地問題を扱った悲劇。沖縄の“心優しい鬼”にも心を寄せる。「不条理や悲しみだけでなく、次代への希望も感じていただければ…」

 体制からはじき出された人、権力者側の歴史「正史」から消された敗者―。1971年に出版された歌人・馬場あき子の著書「鬼の研究」(現在は「ちくま文庫」)は“鬼”とされた人々の本質に迫り、そこに「過酷な状況を告発した苦悩の表情」を見いだしている。

 この本を読んだ森井さんは「憤り、葛藤、そして愛。鬼の側にこそ人間味あふれる人がいるとあらためて感じた」。7人きょうだいの末っ子で、ろうあ者の姉と仲が良い。「差別の悲しみ、周囲の複雑な心情を肌で感じてきた」。穏やかな笑みを浮かべ言葉を継ぐ。「理不尽な目に遭う人に心が向くのは、姉のおかげかもしれない」

小劇場に軸足
 大阪市に生まれ、高校と大学の演劇部に所属した森井さん。大学卒業後、劇作家の木下順二や女優の山本安英がいた劇団「ぶどうの会」に俳優として入団した。その翌年の同会解散後は、映画やテレビドラマ出演を重ねながらも、小劇場での演劇に軸足を置いた。「役者の飛び散る汗が客に掛かるような空間。そこに演劇本来の姿があると思った」

 10年ほど演技に専念したが、高校のころから戯曲を書いていた森井さんは、劇作家の宮本研や秋浜悟史の影響もあり、30歳を過ぎてから執筆活動に重点を移した。81年には自作を上演する劇団ピープルシアターを設立。鬼退治の説話を鬼の視点からとらえ直した「異説・酒呑童子」、在日韓国人母子の苦難を描いた「鳥は飛んでいるか」など、その作品には愛と悲しみを背負う“鬼”が登場する。

 戦争や圧政、高齢社会など、社会性の高い問題を取り上げてきたが、「政治的なメッセージは主眼ではない」と歯切れ良い。「少しキザですが…」と照れながらも、「最も表現したいのは愛です」。権力と衝突し生命が危機にさらされるといった極限の状態でこそ、「愛がシンプルに際立ってくる」と力を込める。

「10年前と同じ」
 沖縄米兵少女暴行事件(95年)を機に、反基地運動が高まりを見せていた10年余り前、沖縄を舞台とした戯曲を書いた。10月に都内で上演する「琉歌(りゅうか)・アンティゴネー」は、その戯曲を「ことしの問題」として全面的に書き直した作品だ。米兵2人から暴行された女性「ニライ」の“魂の救済と復活”が、沖縄の歌謡「琉歌」やジャズの流れる中、つづられる。言葉の不自由な妹に「生の希望」を託したニライは、婚約者らの制止を振り切り決死の行動を繰り返す。基地問題が2つの家族の反目も生む中、ギリシャ悲劇の構図も取り入れた物語が進行する。「10年以上前と今、沖縄の状況は何一つ変わっていない」と断言する森井さんはこう続けた。「例えば福島や(原発再稼働に揺れる)福井…、こうした愛憎は沖縄だけの問題ではない」。普遍性のある“心模様”を通し「理屈抜きで沖縄の未来に託す希望を感じていただけたら、この作品は成功」と言う。

船戸作品も舞台化
 近年、ピープルシアターは森井さんの書き下ろしに加え、海外の戯曲と小説家・船戸与一の原作舞台化を上演の「3本柱」に掲げる。クルド人問題を扱った船戸の代表作「砂のクロニクル」は06年の初演。壮大なスケールと複雑な社会的背景から「舞台化も映像化も不可能」と言われた大作だが、舞台を見た船戸は「僕の作品全てを戯曲にしてもいい」と森井さんに話した。ことし7月に「新宿・夏の渦」を上演し、来年秋には「砂のクロニクル」以上の大作ともいわれる「蝦夷地別件」の舞台化を予定する。「船戸さんの小説の“鬼”はすごく魅力的。それを舞台にできるのは喜びです」

 森井さんの作品はすでにヨーロッパやロシア、韓国でも上演され、国境を超えた共感を呼んだ。ただ「自分の舞台に満足することはめったにない」と苦笑する。「目指すのは、世界のどこに出しても胸を張れるレベルです」

 10月の上演準備の傍ら、数年先の舞台の構想も練る。95年の阪神・淡路大震災では、大阪の実家が被害を受け、被災地に立ちつくした経験を持つ。東日本大震災の発生直後から、戯曲の基になる資料集めに乗り出した。だが、「急いで芝居にすることは、あえてしない」。「阪神」に対する周囲の記憶の風化を身をもって知る森井さんはこう語る。「他の人が忘れかけたころ『3・11』の舞台化に挑みます」


台本の読み合わせの稽古に臨む(左から)伊東知香、コトウロレナ、岡安由美子
「琉歌・アンティゴネー」
 10月10日(水)~16日(火)、シアターX(JR両国駅徒歩3分)で。全10回公演。

 作・演出:森井睦、出演:岡安由美子、伊東知香、コトウロレナ、二宮聡ほか。全席自由前売り4000円(当日4500円)、65歳以上3500円。上演時間などは問い合わせを。

 劇団ピープルシアター TEL.042・371・4992

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