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  東京版 平成25年2月下旬号  
人生の岐路、心を開いて…  映画プロデューサー・原正人さん

「生涯、一映画人」を貫く原さん。くしくも取材日は「戦場のメリークリスマス」の大島渚監督が亡くなった翌日だった。「戦友たちが逝くことに感慨はありますが、行けるところまで行ってみようという気持ちです」
宮本輝の小説を映画化
 人生半ば、自分の居場所を探して—。芥川賞作家・宮本輝の小説を映像化した「草原の椅子」が23日から公開される。人生の岐路に立つ男女が出会い、新たな一歩を踏み出す物語。「戦場のメリークリスマス」「失楽園」「武士の家計簿」など数々のヒット作を手掛け、本作を「最後の作品」と公言する映画プロデューサーの原正人さん(81)は、「定年こそ良き人と出会う最高のタイミング。相手を認め、心を開くことで思わぬ生き方をつかめる」。転機となった自身の50代を振り返り、混迷の現代に「人間賛歌」の物語を贈る。

 「体が弱く、いつまで生きられるかという思いは常にあった」。埼玉県熊谷市出身の原さんは少年時代、戦火の中を逃げ回った。戦後、早稲田大学に進んだものの18歳の時、結核を患い中退。療養のため戻ってきた熊谷で映画サークルを手伝ったのを縁に今井正、山本薩夫監督らの下で第一期独立プロ運動に参加した。

 その後1958年に日本ヘラルド映画に入社し、宣伝を担当。「わんぱく戦争」(63)、「エマニエル夫人」(74)など洋画ヒット作を生む傍ら、手塚治虫監督の“大人のためのアニメーション”「千夜一夜物語」(69)、黒澤明監督「デルス・ウザーラ」(75)など邦画製作にも携わった。

50歳で再出発
 映画人生の中でも50歳という節目は原さんの大きな転機に。ちょうど会社の代替わりと時期が重なり、再出発を考えた。頭に浮かんでいたのは、「健康」と「人生の着地点」。「当時は定年が55歳。体操競技の着地のように、自分の人生をどうやって完結させるかは大事。今まで築いてきた方向性で進むのか。定年を目標にもう一度何かを始めてみるのか…」

 こうして“のれん分け”の形で81年に新会社ヘラルド・エースを設立した原さんは、小規模会社ならではの挑戦を開始。「“シェフの料理店”のように、自ら選んだ良作を届ける方法として単館上映を考えた」と、「ニュー・シネマ・パラダイス」(89)など個性的な洋画の輸入・配給でミニシアター・ブームの基礎を作れば、映画製作では大島渚監督「戦場のメリークリスマス」(83)や篠田正浩監督「瀬戸内少年野球団」(84)、杉井ギサブロー監督「銀河鉄道の夜」(85)など多様な作品を手掛けた。

 黒澤明監督の「乱」(85)では興行的に奮わず4.5億円の負債を抱えたことも。「50代の前半は成功と挫折。後半はビデオの登場や単館上映の作品が軌道に乗り始めて会社も安定してきた」と原さん。60代以降も、角川書店と提携し、「失楽園」(97)、「リング」(98)などヒット作を連発。「人との出会い、流れに任せ、映画の道で80歳まで生きてこられた。まずはいろいろな人と出会うこと。その時、相手の役に立とうとすることで、思わぬ展開が生まれてくるんです」

「喪失と再生」描く
 構想10年という映画「草原の椅子」は、95年の阪神・淡路大震災で自宅を失った宮本輝の小説が原作だ。「喪失と再生」—。震災から半年後、シルクロード6700キロ、40日間におよぶ過酷な旅の体験を基に“人間力のある大人”を描いた。

 同作に原さんが出合ったのは00年、69歳の時。持病の胸部疾患の影響で肺に機能障害が起き、1日中酸素ボンベの携帯が必要な体になった。「もう21世紀は迎えられないと思っていた時に読んだ本。幸せとは、生きることとは—。10代で結核を患った時に読んだ宮沢賢治の作品の世界観に通じるものを感じた」

 50歳で親友になった男性二人と、つらい過去を持つ女性、親の育児放棄で心を閉ざした4歳の少年…。映画では、自分の居場所に迷う男女4人の心の葛藤や、今後の生き方を模索しようと異国へ旅立つ姿を丁寧に描く。

 監督は、映画「八日目の蟬」(11)で日本アカデミー賞を受賞した成島出。物語の設定を東日本大震災以後の東京に変更し、「世界最後の桃源郷」と呼ばれるパキスタン・フンザでの長期ロケも敢行。7000メートル級のヒマラヤの山々やカトパナ砂漠など雄大な自然風景も収めた。成島監督と主演の佐藤浩市、西村雅彦が同い年(撮影時50歳)という奇縁もあり、「素晴らしい作品ができた」と原さん。

病気からの3部作
 「映画は作って半分。観客に届けて初めて完成する」が原さんの信条だ。映画プロデューサーとして一貫してきたのは、「情熱(才能)とそろばん(ビジネス)を持ち、観客の目線をいつも忘れないこと」。右手に製作者の情熱を、左手にビジネスという出資者の信頼を集め、多くの観客に届く映画を作り、未来に残していく使命があるという。

 原さんは「病気からの3部作が完成した」と話す。戦中育ちの人間としてリーダーの責任論を作品に込めた「明日への遺言」(08)、刀でなく会計処理の能力で一家を守った“そろばん侍”の姿に映画プロデューサーという仕事を投影した「武士の家計簿」(10)、そして「草原の椅子」には「未来は信じられるよ、というメッセージを託しました」とほほ笑む。

 「病気や定年、離婚など、どんな時代や困難が来ても、自分の居場所は見つけられるはず。人は自分のことしか気づかないものだけど、映画では心を開き、相手を認め、その痛みを自分のこととして感じようとする人々の姿が描かれます。どれだけ良き人と付き合ったか、どれだけ自分が心を開いたかが問われてくる。定年世代こそ、人との出会いを楽しんでほしいですね」


(C)2013「草原の椅子」製作委員会
「草原の椅子」  日本映画
 監督:成島出、原作:宮本輝、出演:佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子。139分。

 23日(土)から、丸の内TOEI(TEL.03・3535・4741)ほかで全国上映。

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