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  東京版 平成25年9月上旬号  
人間の“質的変化”書く  作家・船戸与一さん

資料が山積みになった書斎の椅子に座る船戸さん。「資料調査と現地取材、どちらも大切」と話す。現地取材では紛争地や密輸現場にもたびたび足を運んだ。紛争地を離れた直後、「一緒に行った人から『(船戸さんの)背中に銃が向けられていた』と教えられたこともある」
自作「蝦夷地別件」の舞台化に期待
 極限状態は人を変える—。壮大なスケールの小説で名高い作家・船戸与一(ふなど・よいち)さん(69)の確信は揺るがない。「戦争や内乱、革命…、そうした状況は人間の質的変化を生む」。その“劇的変化”を書くことが「僕にとっての小説の面白み」と明言する。アイヌ民族の蜂起を題材にした「蝦夷地別件」は、そんな思いがにじむ大作だ。「砂のクロニクル」に続く代表作の舞台化を前に、こう話す。「この前(『砂のクロニクル』)は、僕の世界観が見事に演劇になっていた。今度も良い意味で原作者を驚かせてくれるのでは…」

 「映画化も舞台化も不可能」。船戸さんは時折、映像・演劇関係者の“嘆き”を耳にする。辺境地を主にした広大なエリア、ストーリーに絡む世界情勢や複雑な人間関係…。映画の構想はあっても、具体化することは少なく、「舞台の依頼は聞いたこともなかった」。

 ところが2006年、初めて舞台化を了承した「砂のクロニクル」(91年刊)の初演に目を見張った。クルド人問題を扱った長編だが、「包括的に捉えた上で、立体的に表現し切っていた」。脚本を書いた劇作家・演出家の森井睦にこう言った。「これからは僕の小説、どれでも好きな物をやっていいですよ」。森井が主宰する劇団ピープルシアターは同作再演に続き昨年夏、新宿のゲイや不法滞在者が登場する中編「夏の渦」(01年刊「新宿・夏の死」所収)も上演している。

世界の辺境地へ
 山口県下関市に生まれた船戸さんは早稲田大在学中、探検部に所属し、アラスカでイヌイットと生活を共にした。卒業後、就職した出版社を1年ほどで退社。アフリカなどの辺境地に長く滞在した。「初めは冒険心と好奇心。小説の取材という意識はなかった」。だが、フリーのライターとしてルポルタージュを書き、やがて劇画「ゴルゴ13」の原作執筆に携わった。79年、中米・北米を舞台にした「非合法員」で小説家デビュー。その6年後、“南米3部作”の一つ「山猫の夏」で吉川英治文学新人賞を受賞し、冒険小説の旗手として注目された。辺境地を書く理由を語る。「世界の矛盾は辺境地に凝縮して現れる。例えば都市部ではダイエットだけど辺境地は飢餓」

 苦笑を交え「社会矛盾を告発するような高尚な気持ちでは、小説は書けない」と言うが、権力者の歴史「正史」にあらがう“船戸叛史(はんし)”は、体制から疎外された人々の心奥に迫る作品を生み出してきた。

全て“骨絡み”
 東西冷戦時代は南北問題をテーマの中心に据えたが冷戦後、「米ソ対立に辺境地紛争…、世界のあらゆる問題は、僕が現地取材で感じていた以上に“骨絡み”と思い知った」と回想する。資料調査をそれまで以上に重視し、“東南アジア5部作”の一つ「虹の谷の五月」では00年、直木賞に輝いた。

 江戸時代の北海道東部、国後島を主舞台にした「蝦夷地別件」(95年刊)を皮切りに、歴史小説も手掛けている。「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない」。読み物としての迫力、面白さを求めるあまり、史実をゆがめることを意識して避ける。「蝦夷地別件」で取り上げた「国後・目梨の戦い」(1789年)についても、アイヌ最後の蜂起とされる史実と創作を矛盾なく融合させた。文庫本で約2千ページもの大作だが、「最初から長く書く意図はなかった」と言う。根底に流れるのは少数民族への愛惜。極限状態を機に変質するアイヌの少年らへの思いが募り、「ペンに力が入ったかな」と笑みを見せる。約2時間15分の上演を想定した森井の脚本を評価する。「短くしても小説の“ツボ”は外していない。同じ発想でも紙の上(小説)とは表現法が全く違うので、僕自身が(上演が)楽しみ」

「満州」完成に意欲 
 船戸さんは6年以上前から歴史小説「満州国演義」の執筆を続け、第7巻までを発表した。独自の史観で“満州の全容”をつづる群像劇。第9巻で完結という構想を抱きながら、「ようやく第8巻を書き終えた」とあって、「何とか完成に持っていきたいね」と言葉を継ぐ。

 近年、体調や年齢的な問題から、辺境地取材などは控えているが、「新・雨月 戊辰戦役朧夜話」(10年刊)を「満州国演義」と並行して書いた船戸さんは「次はまた違う視点から幕末・維新の真実にも迫りたい」と衰えない情熱を見せる。対象にする時代、地域が異なっても一貫して描くのは「人間の変化していく面白み」。その変化を生む「外界のすさまじい状況」は、「今も世界各地にある。そして、歴史の中にもたくさん埋もれている」。

「蝦夷地別件」
 10月10日(木)〜16日(水)、東京芸術劇場(JR池袋駅徒歩2分)シアターウエストで。全10回公演。

 江戸時代、「蝦夷地」といわれたアイヌ居住地。松前藩御用商人のあこぎな商いと横暴な振る舞いに、アイヌの憤怒は極限に達しようとしていた。そんな時、江戸からやって来た3人の日本人は、それぞれの信念や思惑からアイヌの人々と関わっていく。一方、蜂起をめぐる意見の違いはアイヌの中にも深刻な亀裂を生み、3人の日本人を含む“北の人々”の運命を変えていく—。

 原作:船戸与一、脚本・演出:森井睦、出演:いしだ壱成、コトウロレナ、白石奈緒美、二宮聡、伊東知香ほか。  全席自由一般前売り4500円(当日5000円)。65歳以上前売り4000円。上演時間は問い合わせを。劇団ピープルシアターTEL.042・371・4992

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