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  東京版 平成27年5月上旬号  
非戦への思いが「創作の軸」  演出家・栗山民也さん

インターネットの普及などにより、「現代はコミュニケーションが“機械の中”にあまりにも偏っている」と栗山さんは話す。「生身の人間同士の交流・ぶつかり合いが、人間性を育む」。海外に出向いた際は、仕事の用件以外にも劇場通いを重ね、客席に身を置く。「劇場は単なる“ハコ”ではなく、生身の人間が演じ、生身の人間が見入る貴重な空間。そこで感動を分かち合えたら、劇場は人と人が心を通わせる“広場”になり得ます」
手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」を舞台化、6月に公演
 歴史の記憶をよみがえらせる—。演出家の栗山民也さん(62)は幅広い分野の舞台を手掛けながらも、非戦への思いを「創作の軸」と言い表す。手塚治虫がナチス・ドイツの興亡を背景に描いた漫画「アドルフに告ぐ」の舞台化を自ら提案。6月の上演を控え、「戦争に翻弄(ほんろう)される人間の姿を、今の日本に届く形で表したい」と意気込む。「僕の両親は戦争の犠牲者」。演劇人としての責務を自身に課す。「戦争の悲惨さを伝える“心のモニュメント”を人間の五感で築いていく。演劇には、その力がある」

 栗山さんは母親の葬式の席上、「母は再婚だった」と初めて知った。「演出家として駆け出しに近い頃でした」。第2次世界大戦中、ビルマ(現ミャンマー)に送り込まれた父親は復員後、戦友の遺骨をその妻に届けた。「やがて2人は夫婦になった。それが僕の両親です」。終戦から2年近く、強制収容所での生活を強いられた父親の書棚には、芝居に関する手書きのノートがあった。収容所の中には、捕虜自身が運営した劇場。「父は芝居の脚本を書き、演出もしていた」。栗山さん演出の「GHETTO/ゲットー」(1995年)はナチス政権下、ユダヤ人強制居住区に居た人々が虐殺される直前まで、演劇や音楽の公演をした実話に基づく物語だ。「文化を捨てず人間の尊厳を守り抜いた姿に、僕自身が感動した」

能に感動、「演劇に開眼」
 町田市に生まれた栗山さんは高校生の時、ドストエフスキーをむさぼるように読み、早稲田大進学後、インドを放浪した。ただ、「演劇にのめり込んだきっかけは能でした」。人間国宝の能楽師・櫻間道雄が生涯で一度だけ演じた秘曲に心を奪われた。「老女の悲しみと人としての美しさが、ものすごい勢いで迫ってきた」。演出家として経験を積んだ今、「能と同様、演劇でも微妙な所作で強烈な表現ができる」と断言する。「世界の多様性、日本の伝統…、全てが僕の糧になってきた」

 栗山さんは大学卒業後、演出家の木村光一の助手を経て27歳の時、不条理劇「ゴドーを待ちながら」で初の演出を手掛けた。以来、特定の劇団などに属しないフリーの演出家として、商業演劇やミュージカル、オペラなど、分野の枠を超えた活躍を見せる。「ただし、作品のえり好みはする(笑)。奥に巨大なテーマがうごめいている戯曲に挑みたい」。「東京裁判三部作」など井上ひさしの作品を多く演出する一方、手塚の「火の鳥」と「ブッダ」を舞台化させている。井上と手塚の共通点を指摘する。「広大な視野を持ちながら“ひとかけらの命”への愛情に満ちた作品を残した」

“時間の芸術
 「アドルフに告ぐ」を読み込んだ印象をこう話す。「少年たちを主人公にしながらも、実は大いなる世界史を描いている」。自身が「転機の作品」と明言する「GHETTO/ゲットー」と同じ時代設定。「演劇は、歴史の記憶を今の人間の声でよみがえらせる“時間の芸術”。その力を思い知ったのが『ゲットー』でした」。ベルリンなどドイツの街を歩くたび、至る所で戦争の過ちを伝えるモニュメント(記念碑など)を目にしてきた。「人間は過去を忘れる生き物。だからこそモニュメントは必要」。戦後70年の日本の現状に話題が及ぶと、柔和な表情が険しくなる。「戦争の記憶を消し去る動きは犯罪的行為。歴史の直視は、より良い未来を築く第一歩です」。戦争を扱う舞台の演出を「心のモニュメントを築く作業」と言いながらも、作り手の意見を前面に出すことはない。「見る人がそれぞれの価値観に基づき、答えを探してくださればいい」

 「アドルフに告ぐ」では、2人の少年が初めは固い友情を約束しながらも、時代の激変に飲み込まれるうち、抜き差しならぬ対立へと突き進んでいく。栗山さんは最近のむごい少年犯罪に触れながら言葉を継ぐ。「境遇や環境は人を変える。『アドルフ』の悲劇は、現代のさまざまな問題と重なります」

 栗山さんは2000年から7年間、新国立劇場演劇部門の芸術監督に就き、現在は同劇場演劇研修所所長を務める。若い俳優らに「世界の多様な価値観と出合い、それまでの価値観をいったん壊せ」と説く。自身も各国を巡り、国内外の演劇人と仕事を共にする中、「幾度となく自分の価値観をつくり変えてきた」。還暦を過ぎた今も「その繰り返し」とほほ笑む。「だから、僕の演出の仕事に到達点はありません」

「アドルフに告ぐ」
 6月3日(水)〜14日(日)、KAAT神奈川芸術劇場(みなとみらい線日本大通り駅徒歩5分)ホールで。全14公演。

 ナチス・ドイツの威光を誇示したベルリン五輪のさなか、ある機密文書が所在不明になった。そこに記されていたのは、アドルフ・ヒトラーの出生の秘密。文書をめぐる争いと時代の激変は、多くの男女の運命を翻弄する。神戸に住む2人の少年アドルフ・カウフマンとアドルフ・カミルも、やがてその渦中に巻き込まれ…。

 原作:手塚治虫、演出:栗山民也、脚本:木内宏昌、出演:成河、松下洸平、髙橋洋、朝海ひかる、鶴見辰吾ほか。
 全席指定S席9500円、A席7000円。チケットかながわTel.0570・015・415

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