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  東京版 平成27年6月上旬号  
今と重なる“核の悲劇”  俳優・辻萬長さん

「父と暮せば」では、「バラックに毛が生えた程度の家」で物語が進む。 辻さん演じる父親が鼻歌交じりに「はたき」を使う場面も。「『ふかいことをおもしろく』という井上さんの信念は、この舞台にも生きている」と 辻さんは話す
原爆テーマの舞台「父と暮せば」上演
 原爆投下の後、父と娘が交わした“命の会話”─。井上ひさしの戯曲を舞台化した「父と暮せば」が7月、都内で上演される。「地獄の中から生まれる真実の親子の物語」として、再演を重ねる二人芝居の名作。戦後70年の今、父親役の俳優・ 辻萬長(かずなが)さん(71)は、「この作品は単なる反戦ドラマではない」と話す。「3・11」後に演じる意味を自らに問う。「核の悲劇は今と重なる。井上さんは『人間が使いこなせない原子力を、勝手に使うのは許されない』とのメッセージも作品に込めている」

 《うち、生きているんが申しわけのうてならん》

 「父と暮せば」には、娘が泣いて突っ伏す場面がある。広島の原爆で身近な人を皆亡くし、生き残ってしまったという罪悪感…。東日本大震災があった2011年の夏、 辻さんは「父と暮せば」の全国巡演で東北も訪ね、同様の肉声にたびたび接した。「家族や友人を失った人たちの思いが俺の心に染みてきて…、次第に演技に厚みを与えてくれた気がする」。さらに、福島の原発事故が招いた“核の悲劇”。「父と暮せば」は94年の初演から11年まで、484公演を数えたが、「演じる重みが軽くなることは決してない」と話す。

 佐賀市に生まれた 辻さんは高校の時、演劇部に所属。高校卒業後、俳優座附属俳優養成所を経て65年、プロとして初舞台を踏んだ。俳優の村井國夫は高校の演劇部と俳優養成所の1年後輩。現在、古里の中高年世代による劇団の顧問を、村井と共に務めている。

 「地域に根差した芝居の文化を大切にしたい」。テレビドラマや映画にも活動の場を広げているが、役者としての軸はあくまでも舞台だ。「観客と直接感動を分かち合える喜びは高校の頃から変わらない。それは俺の原点です」

井上ひさしの薫陶
 91年、井上の誘いを得て、井上作品を上演する劇団「こまつ座」に入団した。平和や憲法の問題について、「以前は、人並み以上の関心があったわけではない」と明かす。しかし権力と相対する人間のありようを追求し続けた井上に、「40代半ばにして、俺の生き方が変わるほどの影響を受けた」。現在は、こまつ座唯一の所属俳優として、井上作品最優先でスケジュールを組む。

 こまつ座の“ライフワーク的作品”といわれる「父と暮せば」は、もともと俳優・すまけいの父親役を念頭に、井上がペンを執った作品だ。奔放でちゃめっ気のある父・福吉竹造は、「物事を突き詰めて考えがちな俺とは違うタイプ」。すまの後は、前田吟、沖恂一郎が竹造を演じ、 辻さんは04年から“四代目”として出演を重ねる。「自分なりに表現を膨らませれば、すまさんたちとは違う“味”を出せる。役者の創造性の見せどころです」

 “辻版・竹造”はヘ200公演を超え、「広島弁もようやく板に付いてきた」と笑みを見せる。半面、膨大な被爆者の手記を読み込んだ上、二人芝居に仕立てた井上の創作力には「何度演じても、新鮮な驚きを感じる」。竹造が万感を込めるせりふは、誰も救えなかったという自責の念のあまり、幸せになることを自らに禁じた娘の心を揺り動かす。

 《わしの分まで生きてちょんだいよォー》

 戦争や原爆への非難を声高に叫ぶことはない舞台。原爆がテーマの創作に執念を見せた井上を間近に見てきた 辻さんは、その心中を推し量る。「親子の情愛からにじみ出てくるものを伝えることで『人類の犯罪』を告発した」

「3・11」後の視点
 「父と暮せば」では、娘が自分の「原爆病」について話す場面もある。「3・11」の前年、病死した井上を、 辻さんは悼む。「生きていたら、きっと原発がテーマの新作を書いてくれたはず」。ただ、「3・11」後、被ばくが大きな問題になっている中、4年ぶりとなる全国巡演への注目度は高い。「放射能の被害は『父と暮せば』にも描かれている。人間が原子力を思うように動かせない以上、安易な利用に“否”を唱える思いも舞台に込めたい」

 戦後70年…、安保政策の転換などにも危機感を募らせるだけに、言葉が熱を帯びる。「俺は一人の人間として、歴史から目を背けず、現実の問題と向き合い続ける。自身の信条をメッセージとして発するのも、役者の仕事と考えています」


「父と暮せば」2011年の舞台
撮影:谷古宇正彦
「父と暮せば」
 7月6日(月)〜20日(月・祝)、紀伊國屋サザンシアター(紀伊國屋書店新宿南店7階、JR新宿駅徒歩5分)で。全19公演。昼公演は午後1時半開演。夜公演は同7時開演(11日、18日の夜公演は同5時半開演)。

 原爆投下から3年後の広島。図書館勤務の傍ら、独り暮らしを続ける福吉美津江の前に、父親の竹造が現れる。美津江が抱いた恋心を実らせようと、「恋の応援団長」を自任する竹造。しかし美津江は「うちはしあわせになってはいけんのです」と父親の助言をかたくなに拒む─。

 作:井上ひさし、演出:鵜山仁、出演: 辻萬長、栗田桃子。全席指定、昼公演4500円、夜公演4200円。こまつ座 Tel.03・3862・5941

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