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  東京版 平成27年6月下旬号  
魂との対話 生きる力に  画家・作家の司修さん

武蔵村山市にアトリエを構えて約40年。緑豊かな環境で司さんは創作に励む(隣は司さんが原作・美術を手掛ける舞台「幽霊さん」の原画)。最近は展覧会に合わせて、「幽霊さん」の朗読会も。「福島のいわき弁や京都弁に書き直して行った。その土地の言葉で語られることで理解も深まり、東北の今を考えることになる。広がっていけばうれしい」
高齢者の愛の物語「幽霊さん」舞台化
 「困難だった幼年期に立ち戻ることで、僕はいつも勇気付けられてきた」。画家で作家の司修さん(78)は戦争の記憶を“生の原点”と位置付ける。「僕にできることは何か」。自己との対話を繰り返し、絵本制作や書籍の装丁の分野でも活躍してきた。今、震災後の東北を見つめる。今夏上演される劇団文化座・佐々木愛の一人芝居「幽霊さん」は、司さんが「3・11」後の東北を歩く中で着想を得た高齢夫婦の愛の物語だ。「悲しみを受け止め、生きる力を掘り起こす。人の魂は、その人を思う人がいる限り生き続けていく」

 前橋市出身の司さん。9歳の夏に体験した大空襲の爪痕を心の原風景に持つ。「広島に原爆が投下された前日。焼け野原の街で実感したのは絶望より『もう戦争はない』という喜び。何もない環境から探し出す生活で、雑草を食べ孟宗竹を裂いて家も建てた。生きる執着心をたたき込まれた」

 中学卒業後、看板描きの仕事に就きながら独学で絵を学んだ司さん。画家を志し24歳で上京するも、力不足を痛感。絶望の底で読んだ同郷の詩人、萩原朔太郎の詩「死なない蛸」が人生観を変えた。「薄暗い水槽の底で孤独と飢えに耐えるタコ。自らの足や体を食べ、最後に肉体は消滅してしまうが、その憤りや精神力は永遠に生きていく—。その詩を読んだ時、自分の絶望感がちっぽけに思えた」

“忘れられる何かに関心
 言葉の力に感動し、今に続く読書習慣が始まった司さん。「描くことへの貪欲さ、『目に見えないものをいかに表現するか』という絵の姿勢も完成した」

 食べるために始めた絵本や装丁の仕事も成長の糧に。「野間宏さんから差別の問題、大江健三郎さんからは広島や長崎の現実。装丁の仕事を通して現代文学を読み解き、他者の問題を自分に引き付けて考えるようになった」。作家活動も行い、広島の「原爆幽霊戸籍」を題材にした戯曲や、妻の出身地である奄美群島(鹿児島)の民話を基に物語を作るなど、忘れられていく島々の問題にも寄り添ってきた。

 現代社会の特徴を「現実や困難を直視せず、少し離れたSF的な世界に目を向けている」と分析する司さん。「新しいニュースや事件が肝心な問題を上書きしていく」と危ぶむだけに「広島、長崎、沖縄そして東北。僕は忘れ去られる人々や問題を思い出してもらうための仕事をしたい」。

賢治の“魂
 そんな司さんが東北の“今”を伝える物語が「幽霊さん」だ。2013年に東北を歩き見聞した津波災害の傷痕、「多くの死者の霊が生き延びた人たちを慰めていた」という話が創作のきっかけに。一人芝居の会話劇を想像した時、86年に水上勉作「越後つついし親不知」を一人で演じた劇団文化座の佐々木愛の姿が頭に浮かんだという。苦しさを押しのける軽快な笑い声、佐々木の秋田弁を耳にしながら、高齢夫婦の愛の物語を書き下ろした。

 人間と自然の生命力—。物語は宮沢賢治の震災体験を呼び出し、ユーモラスな会話で死に別れの悲しさや生きる希望を描く。詩を読み塗り絵もできる「雨ニモマケズ」(12)、「絵本 銀河鉄道の夜」(14)など、震災後も宮沢賢治の世界を表現してきた司さん。「賢治の童話には、救いや癒やしが詰まっている。死に別れの悲しみもあるし、亡くなった人の命によって生かされている人がいるということも。今読むことで生きる力になる」と話す。「幽霊は見えるものではなく、その人の心のあり方。心の中にいるもの」と断りながらも、「幽霊も出なくなって寂しいと話す老人がいた。ぎりぎりの救いであった死者との対話まで消えていくという現実、そして復興とは遠い世界で置いてきぼりになる人がいることを伝えたい」。

自己との対話を
 「いくつになっても自分の人生に責任を持ち、積極的であることが大事。鍵は全て自分の中にある」。司さんは定年世代に“自己との対話”を勧める。「僕の場合、悩みや課題があるといつも焼け跡で生きた9歳の自分に立ち戻って考える。一番困難で答えがなかった時代。生きる原点だからこそ、凝り固まってしまった今の考えもゼロから見つめ直せる。再生できるんです」

 自分の孤独や悲しみを受け入れることも大切だという。「年を取れば取るほど孤独感は増すし、親しい人が亡くなる寂しさは募ります。でも、『幽霊さん』のように、これからは自分が(亡くなった人を)呼び出せばいつでも会えるし、相談できる存在になると思う」

 司さんは亡き母の最期の言葉を回想する。死の直前、意識がない中でつぶやいた「すいせん」という4文字。その年の春、司さんはアトリエ近くの土手で真っ白に咲く水仙を見つけ、ハッとしたという。「亡くなったのは1月で、病院からも遠かったのに…。花になって帰るということだったのか」。それから毎年春には、母が好きだった日本酒を供えて花と語らう司さん。「死者との会話はそういう風に可能だし、生きる力にも変えられる。人間の魂というのは、それを思う人がいる間は生き続けていけると思う。そういうつながりも大切にしたいですね」


佐々木愛 1982年
「越後つついし親不知」より
劇団文化座公演143「佐々木愛ひとり芝居 幽霊さん」
 7月29日(水)〜8月2日(日)、シアターX(カイ、JR両国駅徒歩3分)で。全5公演。

 震災後の三陸海岸。「最近は爺(じ)さまの幽霊も出ない」と嘆き、孤独のうちに死を選ぼうとする婆(ば)さまの前に、「ケンズさん」こと宮沢賢治の幽霊が出現。そこへ爺さまの幽霊も現れ、「生きろ」と励ます。

 作・美術:司修、演出・音楽・映像:金大偉、出演:佐々木愛。全席指定一般5000円。劇団文化座 Tel.03・3828・2216
【つかさ・おさむ】
 画家・作家・装丁家。絵本に宮沢賢治作「セロひきのゴーシュ」「雁の童子」、松谷みよ子作「まちんと」など。小説「犬(影について・その一)」で川端康成文学賞、「本の魔法」で大佛次郎賞を受賞。

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