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  東京版 平成27年11月下旬号  
「亡き息子からもらった第二の人生」  「殿さまキングス」元メンバー・多田そうべいさん

「今は“殿さま”から足軽になって 全国を足で回ってます」と笑う多田さん
骨髄バンク支援や講演通じ、社会に恩返し
 「およげ!たいやきくん」(1975年)、「女のみち」(72年)に並ぶ昭和の大ヒット曲「なみだの操」(73年)。同曲を歌い上げた演歌コーラスグループ「殿さまキングス」でバックコーラスを務めた多田そうべいさん(73)は、「これまでの人生で一度も主役をやったことはありません(泣)」と“自虐ネタ”で笑いを誘う。グループ解散後の現在、難病だった息子の早世を機に歌や笑いを盛った講演活動と骨髄バンク支援活動に取り組み、全国を駆け巡る。「亡き息子から与えられた第二の人生。皆さんに支えられてきた感謝の気持ちを笑いに変え世の中に返していきたい」とほほ笑む。

 多田さんの芸能活動の第一歩は高校卒業直後のこと。兄の影響もあってハワイアンバンド結成に加わりギターを始めたが、いつしか酒場で酔客の歌声に合わせ伴奏する流しのギタリストとなっていた。「今でいうカラオケを人力でやっていました(笑)」

 この“人間カラオケ”のわさを聞き付けスカウトに来たのが、共に殿さまキングスを結成することとなる故・長田あつしだった。バンドのメンバーは面倒見のいいリーダーの長田、苦労人の宮路オサム、やんちゃな尾田まさると、多田さんも含め皆それぞれ個性の異なる人間ばかり。そんなメンバーで6〜7年、コミックバンドとして全国の寄席やキャバレーで“どさ回り”を続けた。

 流れが変わったのはあの「なみだの操」の大ヒットだった。レコード売り上げ累計約300万枚。この大ヒットにより「殿キン」は芸能界のスターダムを駆け上がった。

 しかし、ブームはいつしか去るもの。徐々にステージや巡業にお呼びが掛からなくなり、昭和天皇崩御時の自粛ブームによる依頼激減をきっかけに、メンバーたちは余力のあるうちの解散を決断、皆それぞれの道を歩み出した。

解散で「無職に」
 だが多田さんだけは50の身空で全くの無職に。テレビ番組のアシスタントディレクターやお歳暮配達のアルバイトなどで糊(こ)口をしのいだ。だが、さらに多田さんを悲劇が襲う。骨髄移植が必要な難病に苦しむ次男が18歳で早世したのだ。骨髄は白血球の型が合わなければ移植ができない。家族全員が提供を申し出たが、残酷にも誰も合致しなかった。また当時骨髄バンクは民間のそれも小規模なものがあるだけ。わらをもつかむ思いで申し込んだが、提供の知らせが届くことはなく息子はこの世を去った。

 息子の死から3カ月後、多田さんは公営の骨髄バンク設立を訴えチャリティーコンサートを決行。これが呼び水となったのかその3カ月後に公的骨髄バンク発足に至る。ただ「自分はあくまで微力ながら後押しをできただけ」と謙虚だ。


コミックバンド時代の殿さまキングス集合写真=多田さん提供。右から多田さん、長田あつし、尾田まさる、宮路オサム。コミックバンドから歌謡グループに脱皮できたのは、ぴんからトリオ「女のみち」大ヒットの影響だという。「2匹目のドジョウを狙ったレコード会社がぴんからと同じお笑いバンドの『殿キン』に目を付けたのです」
全員で「なみだの操」
 また、この出来事をきっかけに徐々に講演の依頼が入るようになった。やがて多田さんは「大人の寺子屋」と題した本格的な講演活動に入ることになった。その講義はとてもユニーク。テーマはご近所付き合い、家庭内介護などさまざまだが、専門知識の披露ではなく、すべて多田さんの経験に基づいた身近な話題が特徴だ。一例を紹介すると、自身が詐欺に遭いかけた体験から振り込め詐欺の撃退方法を面白おかしく解説、時には息子との闘病記と骨髄バンクの啓発、そして最後には会場全員で「なみだの操」を合唱と、笑いあり涙あり歌あり…。「私の講演は『皆で楽しもうよ』というスタンスでやっています」と多田さん。講演は好評を博し、今では公民館や老人ホームなど年間約50回をこなすほどに。

 「幸せも不幸も自分の心ひとつです。聴講される皆さんには大いに笑って幸せを感じてもらいたい。笑いは心のビタミンですから」

多田そうべいさんの活動
「大人の寺子屋」…「心にビタミンを!」をキャッチフレーズに全国どこでも講演。Tel.03・3997・2472

骨髄バンク登録推進運動「命のつどい」…活動に賛同する歌謡、ダンスグループの公演に協力。出演者並びに集まった観客を対象に骨髄バンクの普及啓発活動中。事務局 Tel.03・3393・6093

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