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  東京版 平成28年5月上旬号  
原発事故から5年…忘却にあらがう  ジャーナリスト・古居みずえさん

小柄で物静かな印象の古居さんは、「(原発事故で)避難した家族の分断の問題は深刻さを増している」と話す。長く離れて暮らすうち、高齢者たちが「今から子どもや孫たちと同居しても迷惑を掛けるのでは…」と思い悩む姿に接してきた。飯舘の“帰村宣言”の後を心配する。「家族が元通りになるのは、すごく難しいことです」
「飯舘村」のドキュメンタリー映画製作
 高原の美しい自然に恵まれた福島県飯舘(いいたて)村。福島第一原発事故の後、避難を強いられた村民に寄り添ったドキュメンタリー映画「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」が都内の映画館で上映されている。監督の古居みずえさん(67)は長年、パレスチナ問題に取り組むジャーナリスト。故郷を奪われたパレスチナ人と飯舘の人々の姿が「私には重なって見える」と話す。原発事故から5年余り。“フクシマ”への関心が薄れつつあると憂えるだけに、「私は忘却にあらがいたい」と言葉を紡ぐ。

 東日本大震災の4日後からビデオカメラを手に被災地を歩いていた古居さんはその年の5月、飯舘に足を踏み入れた。阿武隈山地の高原の新緑がまばゆい季節。ウグイスが鳴く中、放射性物質の影響で、村は「全村避難」の混乱の中にあった。殺処分のため牛を引き渡す酪農家の女性、雑草が伸び始めた田畑に立ち尽くす家族…。「かけがえのないものを奪われる悔しさ、それはパレスチナと相通じていた」。その後、仮設住宅の人たちと会話を重ね、農業と飯舘の食文化を愛する女性2人に焦点を絞った。高齢の2人は“ばば漫才”と称し、冗談を飛ばす。《笑ってねぇど やってらんねぇ》

 島根県出身の古居さんは「社会に出てからは、ずっと普通の会社員でした」と話す。ところが37歳の時、関節リウマチを発症。自力で立てなくなり会社を辞めた。回復の希望が持てない中、全身の激痛とともに“心の痛み”にも襲われた。「自分は後悔しない生き方をしていたのか…」。薬が医師の予想以上に効き、行動の自由を取り戻した後、たまたまフォトジャーナリスト広河隆一らによるパレスチナの写真展を見て刺激を受けた。「厳しい状況の中でも子どもたちの表情が輝いている。こんな写真を私も撮りたい」

 アルバイトの傍らカメラの勉強をした上で40歳の時、パレスチナに渡った。「人情味ある人たちと接し、そこを離れられなくなった」。その一方、銃撃で命を落とした子どもの家族の嘆きなども目の当たりにした。写真やルポルタージュを発表し、40代半ばからはビデオカメラによる撮影も。12年間にわたって1人のパレスチナ人女性の心の軌跡を追った「ガーダ パレスチナの詩」(2006年)、イスラエル軍攻撃後のガザ地区を歩いた「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」(11年)。二つのドキュメンタリー映画は、パレスチナ人の素顔と彼らを襲った悲劇を映し出す。

支え合う姿撮る
 「3・11」の前は国内の取材経験はほとんどなかったが、「(取材)対象が違っても、被害に遭う側と共に居る姿勢は同じ」とよどみない。原発事故で故郷を追われた人の多くは、被ばくの不安もあり、家族が離れ離れになって避難生活を送る。事故から1カ月以上たって計画的避難区域に指定された飯舘村の世帯数は震災前に比べ実質的に急増。公開中の映画「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」の“主人公”2人も以前は家族と穏やかな日々を過ごしていた。息子夫婦や孫たちは遠方に逃れ、自身は福島県内の仮設住宅に入った菅野榮子さん(79)。村で隣に住んでいた菅野芳子さん(78)は避難後、両親を相次いで亡くし榮子さんの隣室に移ってきた。映像は独り暮らしの2人が互いの心の支えとなる姿、みそや凍(し)み餅といった飯舘の食文化を守ろうと全国を回る様子を捉えている。

 近くにアパートを借り撮影に通った古居さんは「私は(カメラを意識させない)空気のような存在でいたい」とほほ笑む。「そのためには共感と信頼関係が不可欠。私自身が『一緒に居て心地よい』と思えないと続かない」。榮子さんは飯舘の山並みを眺め、つぶやく。《どこもここも荒れ放題。でもここが一番心が安らぐ所だったんだ》

映画完成後も撮影
 ただ、避難生活が長びく中、2人はこうも言う。《(2017年に)『戻れ』といわっちゃら、これ困ります》

 村内の大部分について、来年3月までの避難指示解除を目指すという村の方針に、古居さんは疑問を投げ掛ける。「除染後も放射線量は高いのに…」。映画完成後も2人にカメラを向ける。「お二人を通して飯舘全体、そして原発そのものの問題が浮かび上がってきます」。酪農家の女性たちの取材も進めている。「多くの人にとって原発事故が『ひとごと』になりつつあると感じる今、こちらも何とか形にしたい」

 現在もパレスチナの人たちと連絡を取り合う古居さんは、「パレスチナも私の予想以上にひどい方向に進んでいる」と唇をかむ。国内外の「弱者」に目を配る中、「やるせない気持ちが湧くこともある」と話すが、大病後の生き方を変えるつもりはない。「理不尽な目に遭う人たちを孤立させてはいけない。飯舘とパレスチナ、どちらにも通い続けます」


©Mizue Furui 2016
「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」
 監督・撮影:古居みずえ、出演:菅野榮子、菅野芳子ほか。95分。日本映画。
 ポレポレ東中野(Tel.03・3371・0088)で上映中。

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