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  東京版 平成30年12月下旬号  
カクテル「雪国」生みの親、92歳の現役バーテンダー  山形県酒田市の井山計一さん

「ケルン」の3階に住んでいる井山さんは毎週水曜から日曜、午後7時から10時半まで店を開ける。カウンターでは社交ダンスで培った、背筋をピンと伸ばした姿勢でシェークする。写真内右下がカクテル「雪国」
半生がドキュメンタリー映画に
 冬は強い季節風が吹きすさぶ日本海に面した商業都市、山形県酒田市。この町の一角に92歳になる今もカウンターに立ち続けるバーテンダー、井山計一さんがいる。彼が半世紀以上も前に考案したカクテル「雪国」は現在も日本で飲み継がれ、海外でも多くのバーテンダーが作る“スタンダード・カクテル”だ。今も全国からバーテンダーがカクテルの話を聞こうと井山さんの店「ケルン」に足を運ぶという。そんな“伝説のバーテンダー”の半生を描いたドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」が1月2日から公開される。

 ウオッカ、ホワイト・キュラソー、コーディアル・ライムがシェークされた中に、まるで宝石のようにカクテルグラスの底に沈んだエメラルドグリーンのミントチェリー。グラスの縁にはミキサーで細かくした上白糖がまぶしてある。まさに「雪国」というイメージにぴったりくるカクテルだ。“スタンダード・カクテル”とは、レシピ本「カクテルブック」掲載後、長く飲み続けられているもので「マティーニ」や「スクリュードライバー」などがある。「雪国」は井山さんが創作してから約60年たった現在も飲み継がれている“定番のカクテル”なのである。

 「壽屋」(現サントリー)が主催するカクテルコンクール。腕に覚えがある全国のバーテンダーが注目していた同コンクールに応募しようと思い立った井山さんは、店の棚に並んでいたウオッカ、ホワイト・キュラソー、ライムジュースをシェークした中にミントチェリーを、ポトンと落としてみた。名前は、カウンターの後ろに掲げていた自作の川柳から「雪国」と名付けた。当時はカラーフィルムが一般に普及していなかったので、応募用紙に色鉛筆で新作のカクテルをスケッチしてポストに投函(とうかん)した。その後、応募したことすら忘れていたが、ある日、井山さんに東北地区予選を通過したとの報が届く。そして進んだ全国大会で「雪国」は見事、グランプリを獲得する。全国から約2万4000人が応募してきた創作カクテルの栄えあるトップに輝いたのだ。

「亡き妻のおかげ」
 「人の運命とは本当に分からないものですね。まさか自分がバーテンダーになって、全国コンクールでグランプリを取るなんて夢にも思いませんでした」と60年前を思い出し、好々爺(や)の顔をほころばせる。そのうえで「トップを取れたのは女房のキミ子(2年前に86歳で死去)のおかげです。それだけでなく、作ってから半世紀以上たった『雪国』が今も広く飲まれていて、今回映画にもなった。そんな恐ろしいほどの幸運をもらったことの起こりは女房なんです」と話す。

 時を超えて今も生き続ける“スタンダード・カクテル”を創作した日本人として全国のバーテンダーから敬意をもって語られる井山さんだが、若いころは社交ダンスに夢中で、ダンスで将来を築こうと考えていた。しかし、地元でダンス教室を開いていた井山さんが23歳で結婚したことで転機が訪れる。

 料亭などを営んでいた母も認めるほど愛想がよかった妻のキミ子さんだったが、ダンスは教師の井山さんから見ても「全く駄目」。「自分一人ではダンス競技会には出られない。妻がダンスを踊れないダンス教室では将来発展していかない」と思い、このままダンス教師を続けていいのか悩んだ。モヤモヤしているうち子どもが2人生まれ、その責任から将来がますます不安になってくる。

 25歳のとき、ダンス以外で生計を立てようと知人がいる仙台へと仕事を探しに行った。街をぶらついているうちに目にしたのが電柱に貼られた「バーテンダー見習い募集」の文字だった。その店で面接を受け、やっと入ったキャバレーの見習いから井山さんのバーテンダー人生が始まる。「女房がダンスを踊れていたらバーテンダーにはなっていなかった」としみじみ語る。

新しい材料生かす
 氷の割り方やおしぼりの洗い方から始まったバーテンダーの修業だったが、チーフバーテンダーがカクテルを作るのをメモして覚えたり、他店の先輩を訪ねてカクテルのレシピを教わったりしながら独自に勉強を続けた。そんな井山さんは、いつか「将来、コンクールで賞を取りたい」と思うようになっていた。55(昭和30)年に酒田で喫茶店兼バー「ケルン」を開店、キミ子さんと2人で繁盛店に盛り上げていく。「雪国」を創作したのは開店後3年が過ぎたころだった。

 井山さんはこれまで「雪国」はじめ10種類以上のオリジナルカクテルを創作しており、92歳になった今もカクテル作りに取り組む。最新作は「おばこ」。かつて酒田から北前船で京都に運ばれたベニバナ。そこで口紅となって再び酒田に土産物として運ばれてくる。そんなことを連想しながら作ったという。若い女性(出羽地方の方言で“おばこ”)がさす口紅のように鮮やかな色合いのカクテルだ。

 井山さんは「今まで使われてなかった材料を使ってカクテルを作るのが好き」。創作のヒントを得るため、街中をぶらつくこともあるという。「雪国」にはミントチェリーを、「青いリンゴ」には青色のソーダ飴(あめ)を入れ、「おばこ」はにごり酒をベースにし、「ボサノヴァ・デイジー」はシナモン・スティックで撹拌(かくはん)するなど、そのセンスが光る。何より来店してくれた客と話すのが大好きで、「体力が続く限りカウンターに立ち続ける」と決めている。


映画館「グリーンハウス」から出火した酒田大火で「ケルン」を現在地に移してから、既に40年がたった。撮影:阿部翼
「YUKIGUNI」
 監督:渡辺智史、撮影:佐藤広一、出演:井山計一、長嶋豊、秋田治郎、桐竹紋臣、菅原真理子、井山多可志、荒川英二、小林薫(ナレーション)ほか。87分。

 ポレポレ東中野(Tel.03・3371・0088)ほかで1月2日(水)から上映。

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