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  東京版 平成31年3月下旬号  
「音楽に生かされている」  “左手のピアニスト”舘野泉さん

生家のピアノの前でくつろぐ舘野さん。1972年に、この部屋と隣の部屋に人を入れ“ミニリサイタル”を開催した。「実は上野のリサイタルで予定曲を全て弾けず、申し訳ない思いから『残りは家で弾きます』と言ってしまった」と笑う。「280人を三つに分けて演奏しました」。このときの聴衆が中心になり73年、「クラシック音楽界では初めて」といわれたファンクラブを結成。舘野さんが倒れた後は、復帰を後押ししている
脳出血から再起…“歴史”刻み15年
 脳出血から再起して15年—。「左手のピアニスト」として活躍する舘野泉さん(82)は、「僕は音楽に生かされている」と柔和な笑みを見せる。右半身は不自由なままだが、「左手の表現の可能性は大したもの」。募金を基に「左手の作品」の作曲を依頼し、レパートリーを100曲以上に増やしている。「左手のピアノが世界の音楽の一ジャンルとして根付いてきた」。日本とフィンランドを行き来する舘野さんは、両国の「国交樹立100周年記念公演」を5月に控え、目を輝かせる。「僕がこよなく愛する二つの国に“音楽の花束”をささげたい」

 「自分を閉じ込めていた氷河が一瞬にして解け、青い大海原が目の前に現れた」。2002年1月、脳出血で倒れた舘野さんは、「左手の音楽」に開眼したときの心象風景を、こう言い表す。それは、第1次世界大戦で右手を失ったピアニストのため、イギリスの作曲家ブリッジが書いた楽譜を見た瞬間。右手が思うように動かなくなって、1年3カ月がたっていた。ピアノに向かうと、「左手一本なのに音が立ち上がってきた」。左手の練習に熱中し04年5月、本格復帰した。「今は2年半近い(演奏活動の)空白に感謝する。それは、僕が『新しい世界』に行くためには、なくてはならない、大切な時間でした」

新作に挑み“常識”変える
 目黒区に生まれた舘野さんは現在、生家を日本での住まいとする。チェロ奏者の父やピアニストの母ら家族と、つましくも楽しい日々を過ごした、築80年以上の木造家屋。弟と妹2人のきょうだい全員も演奏家で、「僕も自然と音楽の道に進みました」とほほ笑む。

 自身は1960年、東京藝術大学音楽学部を卒業し、ピアニストとしてデビュー。64年には北欧文学への傾倒や風土への親近感がきっかけとなり、フィンランドに移り住んだ。時にクラシックの枠を超え、「人間味にあふれ叙情豊か」と愛された音楽。40年余りにわたった“両手の演奏会”は、世界各国で3500回以上を数えている。

「手職人」の努力
 演奏を終えた直後、ステージで倒れたのは65歳のとき。引退を勧める声に接しながらも、「ピアノから離れては生きていけないという、確信に近い感覚があった」と振り返る。左手での復帰を決意してすぐ、作曲家の間宮芳生に創作を依頼。完成後、程なくして間宮自身が、指使いが楽になる“修正版”を示したほどの難曲だったが、「左手一本だからといって、音楽に妥協はできない。心遣いに感謝しながらも、初めの曲に挑んだ」と言う。

 舘野さんはピアニストを「手職人」と心得る。「毎日、ピアノを手でこねくり回しているような意識。その努力を続けないと、インスピレーションは湧いてこない」。今、左手の5本の指は鍵盤の上を変幻自在に動き回る。足では三つのペダルを巧みに操り、曲によっては手のひらも使う。「右半身不随のはずなのに…、ペダリングは自分で言うのも何だけど、神業です(笑)」

「左手の文庫」
 06年、優れた新作の創出を目的に「舘野泉左手の文庫(募金)」を開設。自身が「この人なら…」と思った作曲家に作曲を委ねている。これまで「左手の文庫」から生まれた作品は、独奏曲やオーケストラとの協奏曲、さまざまな編成の室内楽曲などを合わせ約100曲。ブリッジやラベルらによる“左手の古典”も弾きこなす舘野さんは、「『左手だけでは(表現力は)どうしても貧弱になる』という“常識”を吹っ飛ばすのに、10年以上はかかった」と笑う。今や「ピアノの地平を広げた、奇跡のピアニスト」と称賛されるが、自身の功績に言葉を費やさない。「木や草が太陽の光を求めて伸びるように、僕は僕なりに理想の音楽を求めてきただけ。今も毎日、発見があり、変化を楽しんでいる。本当に幸せです」


5月のコンサートで演奏されるノルドグレン「左手のためのピアノ協奏曲第3番〜小泉八雲の“怪談”による『死体にまたがった男』」の直筆楽譜(部分)。舘野さんと11年前に死去したノルドグレンは、強い信頼関係と友情で結ばれていた。舘野さんのために書かれた同作も、ピアノの低音部から高音部まで幅広く使われている=(株)ジャパン・アーツ提供
両国交流の調べ
 5月には「日本フィンランド国交樹立100周年記念公演」を全国5カ所で開催する。舘野さんの長男でバイオリン奏者のヤンネ舘野がコンサートマスターを務める、フィンランドの楽団「ラ・テンペスタ室内管弦楽団」との協演だ。プログラムは、フィンランドを代表する作曲家シベリウスの作品に始まり、日本文化の影響を受けた同国の作曲家ノルドグレンが舘野さんのために書いたピアノ協奏曲などに続いていく。「両国それぞれの魅力と交流を雄弁に物語る、最高の構成です」

 「これから(演奏会で)弾きたい曲もまだまだある」。80歳を過ぎても年間50回ほどステージに立つ舘野さんは、「僕は音楽を生かそうと努め、音楽は僕に『生きる力』を与えてくれている」と歯切れ良い。そして、今は揺るがない確信を語る。「僕は右手を奪われたんじゃない。左手の音楽を与えられたのです」

日本フィンランド国交樹立100周年記念公演
♪舘野泉&ラ・テンペスタ室内管弦楽団 〜2つのピアノ協奏曲(東京公演)♪

 5月25日(土)午後2時、東京オペラシティ(京王新線初台駅直結)コンサートホールで。

 予定曲:シベリウス「ラカスタヴァ(恋する人)」、ラウタバーラ「フィンランド神話」、ノルドグレン「左手のためのピアノ協奏曲第3番〜小泉八雲の“怪談”による『死体にまたがった男』」、光永浩一郎「左手ピアノと室内管弦楽のための『泉のコンセール』」ほか。ピアノ:舘野泉、管弦楽:ラ・テンペスタ室内管弦楽団、指揮:エーロ・レヒティマキ。

 全席指定。一般S席8000円、A席7000円、B席5500円、C席3000円。65歳以上S席7200円、A席6300円。ジャパン・アーツぴあ Tel.03・5774・3040

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