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  東京版 令和2年4月下旬号  
一生懸命の“滑稽さ”に共感  俳優・石橋蓮司さん

日本が敗戦した直後に子ども時代を過ごした石橋蓮司さんは、「当時はものすごく活力があって、面白い人がたくさんいました」と言う。焼け野原から1964年の東京オリンピック、大阪万国博覧会、バブル…とそれらを全部見てきて、「人間ってすごいな、と思います」
映画「一度も撃ってません」で、18年ぶり主演
 日本映画を代表するバイプレーヤー(脇役)の石橋蓮司さん(78)が18年ぶりに主演した映画「一度も撃ってません」(阪本順治監督)がこのほど完成した。同映画は石橋さんのほか岸部一徳や大楠道代、桃井かおりらが出演するハードボイルドならぬ“ハート・ボイルド”コメディー。理想の小説を書くために“伝説のヒットマン(殺し屋)”という裏の顔を持つ74歳の作家・市川進。そんな男の役を演じた石橋さんは、「妻の年金で暮らす売れない小説家・市川の、一生懸命に生きる滑稽さを感じてもらえれば」と、ひたすら真面目に演じたと話す。

 74歳の小説家・市川進は元教師の妻と2人暮らし。朝、率先してごみを出し、妻の作るシジミのみそ汁をだまって食べる従順な夫だ。日中は自室でパソコンに向かいハードボイルド小説を書くが、深夜になるとブラックハットにくわえタバコ、トレンチコート姿でバー「Y」に夜な夜な出掛ける伝説のヒットマン御前零児(おまえ・れいじ)という裏の顔を持つ。その店で“ヤメ検(元検事の弁護士)”の石田ら旧友たちと酒を飲み、情報交換をしている。

 石橋さんは市川の人物像をこう語る。「戦後の昭和を生きてきた、利口に生きることができない不器用な人間です」

 その上で「時代に合わせて変われないところが昭和の人間の良さであると同時に悪さですが、心情的には熱いものを持っているんです」と言葉を継ぐ。理想のハードボイルド小説を書くため、ひそかに悪党殺しの依頼を受けては、本物のヒットマン・今西に仕事を頼み、その暗殺の場面を小説に書く—。いつか自分は社会を動かせるような名作が書けると思い込み、リアリティーにこだわるが、その実体は長年付き合ってきた担当の編集者からも愛想を尽かされている作家。「小説が売れないのは、『自分が悪いのではなく社会が悪い』と思い込んでいる市川の錯覚がとても面白い。居酒屋などにも居そうな人物なんですよ」と石橋さんはにこやかに話す。

「生活の中に芝居」
 そんな市川に石橋さんは「大いに共感を覚える」と話す。というのも、市川とほぼ同世代の石橋さんも、戦後の焼け野原から高度経済成長、そしてバブル崩壊と、激動期を生き抜いてきたからだ。石橋さんは1941(昭和16)年、荏原区(現・品川区)生まれ。子どものころは近所の友だちと映画などのシーンをまねて、よくチャンバラや芝居ごっこをして遊んだという。「特に芝居が好きとか嫌いとかではなく、遊びという日常生活に芝居が入っていた」と言う石橋さんは成長するのに伴い、自然に俳優の道へと進んでいった。13歳で劇団若草に入団し、デビュー作の東映児童劇映画「ふろたき大将」に主演。「原爆孤児の話でした。戦後まだ9年程度しかたっておらず、原爆ドームが真っ黒焦げだった広島でロケをしました」と振り返る。

 同作に出演以降も東映の児童向け映画などに出演したが、声変わりで17歳のときに同劇団を退団。一時期、大学(日本大学芸術学部映画学科)に通うなどしていたが、24歳のときに「新たに勉強するつもりで演劇の世界に入ろう」と思い立ち、大学を中退して劇団青俳養成所に入所する。そこで出会ったのが、劇作家の清水邦夫や演出家の蜷川幸雄、それに俳優の蟹江敬三。後にこの3人とは劇団結成で行動をともにすることになる。「中でも、蜷川さんとの出会いは大きな刺激になった」と言う。その後、劇作家で演出家、俳優の唐十郎や劇作家、演出家の佐藤信、劇団黒テントのメンバーなど多くの演劇関係者とも知り合い、「演劇を本気でやってみようという気持ちになりました」。

舞台から軸足移す
 27歳で劇団青俳を退団した石橋さんは、劇団現代人劇場を経て31歳のときに清水、蜷川、蟹江らとともに劇結社櫻社を結成する。「このころは演劇の舞台に出演することが圧倒的に多くなり、映画やテレビドラマへの出演は限られました」。しかしこの時期、石橋さんが「最も印象に残る映画」と挙げる作品に出演している。それは「あらかじめ失われた恋人たちよ」(共同監督:田原総一朗・清水邦夫、71年)と「竜馬暗殺」(監督:黒木和雄、74年)。70年安保などを機に、「ちょうど時代の変わり目でした」。

 世相が変わっていく中で劇結社櫻社内部も各人のモチベーションの変化が目立つようになり、解散することに—。石橋さんはそれから劇団「第七病棟」を結成し今も主宰しているが、あるとき腰を痛めたのを機に次第に演劇から遠のく。今は主に映画やテレビという映像の世界で強い個性と演技力を示し続け、特に阪本順治、三池崇史監督らの映画になくてはならない存在になっている。またテレビでも、NHK大河ドラマ「義経」(2005年)で演じた役、富樫(とがし)泰家などは、見た人に強い印象を与えている。「富樫でも、何百回となく演じたヤクザでも、『一からやり直すことができないか』と、時間をかけて考えます」

 石橋さんは自分がその役を面白く演じるために、事前にその役について研究した上で意識から情報を捨て去り、まっさらな状態で役作りに取り組むという。今年、デビュー66年になる石橋さんだが、「役者として認めてくれるような役なら何でもやります。まだ、せりふを覚えられますから」と、今も仕事への意欲を失わない。


©2019「一度も撃ってません」
フィルムパートナーズ
「一度も撃ってません」 日本映画
 監督:阪本順治、脚本:丸山昇一、出演:石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおりほか。100分。

 TOHOシネマズ シャンテ(Tel.050・6868・5001)ほかで近日公開予定。

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