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  東京版 令和2年7月下旬号  
“ヨタヘロ期”体験を「私語り」で  評論家・樋口恵子さん

樋口さんは、自宅の門の脇に椅子を置いている。「座れる場所があるというのは、高齢者にとって大きな安心材料。街中にもたくさんつくっていただきたい」。“ヨタヘロ期”に大切な“三つのショク”を挙げる。「食事の『食』、触れ合いの『触』、仕事の『職』」。中でも「職」に関しては、「高齢者は非力ではあっても無力ではなく、地域や社会のお役に立つ働きができる。まして、みんなが力を合わせたら相当な力になります」
エッセー集「老~い、どん!」に反響
 ヨタヨタ・ヘロヘロの“ヨタヘロ期”真っただ中―。評論家の 樋口恵子さん(88)のエッセー集「老~い、どん!」がシニア層を中心に反響を呼んでいる。大病、自宅の建て替え、「金欠ウツ」、「調理定年」による栄養失調…。自身の“ヨタヘロ体験”をユーモラスにつづった上で、「超高齢社会」に向けたさまざまな提言を交えている。「プライバシー全開」の理由をこう語る。「私たちの世代は『人生百年丸』の初代乗組員。私的な出来事を通して気付いたことを発信していくのは、『公』の意義を持つ。それは、次の乗組員のためにも必要です」

 健康寿命と平均寿命の間のおよそ10年間―。それが 樋口さんの考える“ヨタヘロ期”だ。「自立して生活できる期間が健康寿命だそうで…、私の場合、それはとっくに過ぎました(笑)」。77歳で胸腹部大動脈瘤(りゅう)の大手術を受け、肺活量は同年代女性の6割ほどに。その後、耐震性の不安から自宅建て替えを決断し、「仮住まい」との行き来のため、84歳で2度の引っ越しをした。「これがひどくこたえました」。有料老人ホーム入居資金のはずだった貯金を使い果たし、「心細さから『金欠ウツ』になった」と言う。300メートルを歩くこともままならず、検査を受けると「大変な貧血」。一人での食事を思い返し、合点がいった。「私も食事作りが面倒になる『調理定年』を迎えた」。それでも、ユーモア精神は健在だ。「“食い改め”まして…、今は回復しました」

“成り行き評論家”
 東京・練馬に生まれた樋口さんは東京大学文学部を卒業後、会社に勤めたが、女性の待遇に「“ぺしゃん”となった」。退職、結婚、出産、「3行広告」を頼りに2度の再就職…。「大きな転機になった」と言うのが、労働省婦人少年局初代局長を務めた山川菊栄らによる婦人問題懇話会への参加だった。「私にとっては大学院のような存在。そこで書いた文章が多くの人の目に留まり、“成り行き”で評論家と呼ばれるようになりました」

 以降は、女性問題を軸に、幅広い分野で著述活動を展開する。1983年に「高齢社会を良くする女性の会」を立ち上げるなど、「高齢者問題も専門領域の一つ」。介護保険の基本骨格を検討した国の研究会委員も務め、2000年創設の制度に女性の視点を反映させた。「少子化などのデータを示し、『介護は嫁の役割』と言い張る人たちを説得した。『昔のままでやっていけますか…、これは算術の問題です』と…」。現在の高齢女性を取り巻く問題も数字を挙げながら解説する。好例が“ヨタヘロ期”の男女差だ。「男性9年、女性12年。女性の方が3年も長い」。その理由を推測する。「50代以降の女性の就労率は、男性に比べ格段に低い。健康寿命に関係すると考えていいのでは…」。就労率の違いは、資産形成の隔たりも生む。「年金だけで暮らせない“貧乏ばあさん”はすごく多い。男女を問わず、いくつになっても働けるシステムづくりは急務です」

老いの「三番底」
 とはいえ、「自身が老いて、初めて分かったこともいっぱいある」。昨年末発行の「老~い、どん! あなたにも『ヨタヘロ期』がやってくる」は、隔月刊誌「明日の友」(婦人之友社)の連載「人生百年学のすすめ」に、書き下ろしを加えて再構成した一冊だ。自宅建て替え直前の16年春の連載開始とあって、「私のヨタヘロ期のドキュメントになりました」。これまでは客観性を重んじる評論家として、「自分のことは話さない」と心掛けていたが、あえて「私語り」に踏み込んだ。

 03年の東京都知事選に出馬し、「平和ボケばあさん」を自称した樋口さんはかみ締める。「上の世代は大勢、戦争で命を落とし、私も大切な人を奪われた。それでも、私たちは平和の恩恵を受け、『人生100年丸』に乗れた最初の世代。老いの現実を正確に伝える責務があります」。60代の老いが“一番底”なら、「今は二番底を過ぎて三番底かな?」と苦笑するが、前向きな姿勢は揺るがない。「たとえ楽しくなくても楽しげに…。それが(戦争で)早く亡くなった人への供養にもなる気がします」

「コロナの記録も」
 そんな思いも込めたエッセーは、老いに向き合いながらも、軽やかな筆致。「トイレやいずこ」と題し、自身のエピソードを明かした上で、清潔で安全な公衆トイレの必要性を説くなど、「人生100年時代」に向けた提言を欠かさない。「助けを『弱者』として受け入れた上で、『弱者』の視点から意見もすべき」。高齢者の犠牲が目立つ新型コロナウイルスに関しては、05年にNPO法人の認証を受けた「高齢社会を良くする女性の会」理事長として、こう呼び掛ける。「高齢者の『記憶』を『記録』して、お寄せいただきたい。医療・介護現場で危険に身をさらしながら職責を全うする人たちの声にも耳を傾けていきたいです」

 65歳以上の高齢者人口の割合が28.4%(19年・総務省推計)に上る日本は、「世界でも断トツの高齢国」。ただ、「(高齢化で)日本の後を追う国は少なくない」と指摘し、言葉を継ぐ。「大震災、コロナ…、大変なことが相次ぐ中、急激な高齢化をうまく乗り切った姿を世界に示せたら、それは大きな国際貢献になる。私も命ある限り、そのお役に立っていきたい。介護保険の“後退”にも『ノー』と叫び続けなければいけませんね」

「老~い、どん !  あなたにも『ヨタヘロ期』がやってくる」
 樋口恵子著  (株)婦人之友社・1485円

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