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  東京版 令和2年8月下旬号  
「分断」ではなく…、「連帯」を!  劇団「温泉ドラゴン」代表・シライケイタさん

シライさんは演出の仕事を通し、「俳優は年を重ねれば重ねるほど“自由”になっていく」と実感する。「経験を積んで理性を獲得したからこそ、表現の世界では大胆にはみ出していけるのでは…。俳優の想像力を最大限に引き出した結果、僕の想像を超えた舞台が生まれれば、それはすごくうれしいことです」=東京都内の自宅で
コロナ後、「演劇は強くなって帰ってくる」
 演出家・劇作家・俳優として、幅広い活躍を見せるシライケイタさん(46)は今春、自身が代表を務める劇団の主催公演を中止した。新型コロナウイルス感染拡大を受け、開幕直前に苦渋の決断。さらに、補償を求める演劇界への批判には、「予想以上に辛辣(しんらつ)なのもあった」と話す。「コロナが価値観の異なる人たちの『分断』を浮き彫りにしたように思える」。それでも、「演劇は強くなって帰ってくる」と前を向く。キーワードに挙げたのは「連帯」だ。「多様性を認め合った上で、手を携える。その意識を“コロナ前”以上に強く持っていきたいです」

 劇団「温泉ドラゴン」は4月1日〜5日、創立10周年記念公演として、戦後も過酷な境遇に置かれた在日朝鮮・韓国人たちの物語「SCRAP」を上演するはずだった。「作・演出」は、劇団代表のシライさん自身。新型コロナウイルスの早期収束を祈りながら稽古に入り、当時考え得る限りの感染防止策の準備も整えた。しかし、会場となる東京芸術劇場からの延期要請、都の外出自粛要請…。そのころ、イタリアでは1日の死者が900人を超えた。

 出演者、スタッフ全員で議論し、開幕前日に中止を発表。翌々日、DVD収録のため、観客の居ない劇場で、一度だけの上演をした。「俳優たちの歯を食いしばるような演技と、スタッフの完璧な仕事を見た2時間を、僕は一生忘れません」

30代後半で“転身”
 東京出身のシライさんは大学在学中、蜷川幸雄に見いだされ、蜷川演出の舞台「ロミオとジュリエット」で俳優デビュー。しかし、その後はなかなか日の目を見ず、アルバイトで生活費を稼ぐ日々を過ごしている。「ここではないどこかへ—」。30代半ばを過ぎ、自分の思いを重ねるようにして劇作を開始。2作目の「BIRTH」は、振り込め詐欺に手を染めた男4人の葛藤を描いた物語だ。2011年の初演から演出も手掛けた舞台は反響を呼び、14年以降は韓国各地でも上演。15年の「密陽(ミリャン)演劇祭」では、戯曲賞を受賞した。日本での評価もやがて高まり、18年には「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」などの演出で、読売演劇大賞杉村春子賞に輝いている。「40代に入って初めて『演劇で食っていける』と思いました(笑)」。演出の仕事では、稽古でベテランの“引き出しの多さ”と若手の発想を絡めるなどして、芝居を完成形に近付けていく。「大変だけど、本当に面白い」

崩れた前提
 シライさんは言葉を継ぐ。「ただ、その面白さは、観客の前で演じるという前提があってこそです」。新型コロナウイルスに関する情報が刻々と変わる中での稽古は、「本当に異常で不健康だった」と唇をかむ。「人と人が出会い触れ合うという演劇の成立要件が、全て奪われてしまいました」。これまで発表された政府の支援策は、「短期的な緊急措置にとどまっている」と指摘する。「今、『食べていけない』と、演劇の世界から離れている人も少なくない。もし、彼らが戻ってこなければ、それは将来の“演劇の死”につながりかねません」

「たかが演劇」に衝撃
 朝日新聞の言論サイト「論座」に公演中止に至る経緯を詳しく記すなど、演劇界の苦境を積極的に発信。5月以降は映画界、音楽界の有志と合同で、公費による「文化芸術復興基金」の創設を各省庁に働き掛けている。しかし、ネット上には反対意見も。「演劇への恨みをあらわにしたものもあった。『たかが演劇。なくても生きていける』などと…」。シライさんは「演劇をより多くの人と結び付ける、僕たちの努力が足りなかったのかもしれない」と話す。その一方で、「演じる側と見る側とが一つの場で感動を共有する演劇は、行為自体が『連帯』をはらむ。演劇を攻撃する人にこそ、それを伝えていかないと…」。

9月に新作舞台
 シライさんは9月、「脚本・演出」の予定を入れている。韓国の国民的詩人といわれる尹東柱(ユン・ドンジュ)の“愛と死”を描いた小説「星をかすめる風」の舞台化だ。「ミステリー仕立ての原作を解きほぐし、(脚本を)良い意味でシンプルに仕上げました」。「劇場クラスター」などの“逆風”はやまないが、「それでも希望はある」と、自身に言い聞かせるように語る。中止となった舞台「SCRAP」では、チケット購入者の多くが払い戻しを求めず、代わりのDVD入手を希望した。批判をはるかに上回る「連帯」の動き…。感謝を抱きつつも、「本当はみんな『生の演劇を見たい』。その渇望感は、切ないほどに伝わってくる」と話す。「演劇を通して、人はいろいろな価値観を肌で感じ、相互理解に向け、それぞれの世界を広げていける。その貴重な『場』である劇場も、絶対になくしてはいけません」

「星をかすめる風」
 9月12日(土)〜20日(日)、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA(タカシマヤタイムズスクエア南館7F、JR新宿駅徒歩5分)で。全12公演を予定。

 第2次世界大戦中、福岡刑務所で1人の看守が殺された。犯人捜しを命じられた若い看守は、殺された看守の服から一片の詩を発見する—。

 治安維持法違反により日本で逮捕された韓国の国民的詩人・尹東柱。終戦を待たずに獄死した彼の“最期の日々”をめぐる物語。

 原作:イ・ジョンミョン「星をかすめる風」(論創社)、脚本・演出:シライケイタ、出演:葛西和雄、板倉哲、島本真治、北直樹ほか。

 全席指定。一般前売り5200円、同当日5500円。舞台のライブ配信も予定している。問い合わせは青年劇場チケットサービス Tel.03・3352・7200

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