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  東京版 令和3年5月下旬号  
終末医療の実情知って  作家・医師 南杏子さん

「夫とカルチャースクールの小説教室に通うようになって小説を書き始めた」という南さん。医師として多忙な毎日を送っているため、小説を書く場所は通勤電車の中。「自宅から勤務先の病院まで電車で1時間半くらい。その間スマートフォンで文字を打ち込んでいます」。スマホでの原稿執筆に熱中しているため、「通勤時間があっという間に過ぎてしまいます」と笑う。休日になると、スマホで書きためた原稿を整理。現在、認知症と看護師の過重労働をテーマにした2つの小説を執筆中だという
自身の小説「いのちの停車場」が映画化
 最期の一瞬の輝きに家族が寄り添い、自分らしい“いのちのしまい方”をやさしく問う映画「いのちの停車場」。近日公開予定の同作は、2020年に発表された、作家の南杏子さん(60)による同名小説が原作。「終末期医療の実情を知ってもらいたい、という思いが強かった」と執筆の動機について話す南さんは、老年期医療の現場に携わる現役の医師でもある。迷い、そして苦しみながら在宅で世話を続ける家族の姿を描いた自分の小説が映画化されることで、「終末期医療のあり方について、社会で議論が深まってくれれば」と話す。

 南さんは日本女子大学家政学部被服学科を卒業後、編集者として働き、結婚・出産を経て33歳で東海大学医学部に学士編入し、高齢者医療専門の医師になった異色の経歴を持つ。さらに、16年に終末期医療の問題を扱った「サイレント・ブレス」で作家デビュー。以降、「ディア・ペイシェント」「ステージ・ドクター 菜々子が熱くなる瞬間(とき)」と高齢者医療を扱った医療小説の分野で次々と作品を発表。長編4作目となる「いのちの停車場」を基に製作された今回の映画には、高齢者医療に長年携わってきた南さんの思いが投影されている。

 物語の舞台は石川県金沢市。東京の救命救急センターの医師だった白石咲和子は父が一人で住む金沢の実家に帰って在宅医療専門の「まほろば診療所」で在宅医として再出発することになった。現場で起きた医療行為の責任をとって、同救急センターを退職したためである。しかし、それまで「命を救う」現場で闘ってきた咲和子は、在宅医療で必要なのは必ずしも医療行為だけではないことを目の当たりにし、戸惑ってしまう。「自分らしい生き方をするため」「穏やかな時間を過ごすため」など、さまざまな思いから在宅医療を選択した患者たち。咲和子は治療が困難な彼らと向き合ううち、その人らしい生き方を患者や家族とともに考えるようになっていく—。映画「いのちの停車場」で咲和子を演じた俳優の吉永小百合は、「最期のときを迎えた人々が安らぎの時間を持ち、家族や親しい人々と別れを告げて旅立っていく場所が“いのちの停車場”だと捉え、撮影に臨んだ」と言う。

祖父の介護を経験
 62歳の咲和子と同世代で、同じくベテラン医師の南さん。若いころは雑誌や書籍の編集者だった彼女が「医師になろう」と決心したきっかけとは何だったのか。新聞記者の夫に伴って3年間イギリスに住んだときのこと。出産後、「子どもの命を守るためにも病気のことを真剣に勉強したい、と思うようになった」と言う。もともと小さいころから「人体図鑑」などを熱心に読んでいて、医療分野に関心を持っていたこともあった。そして、南さんは医者になる際、「高齢者医療専門」の道を選ぶ。なぜ、“高齢者”だったのか。それは約3年間経験した祖父の介護の影響が大きかったようだ。

 大学進学のために名古屋から上京し、祖父と祖母が住む家から大学に通い始めて間もなく、祖父が自宅で寝たきりの状態になった。「私は孫という立場で祖母の手伝いをしていたんですが、時にうめき声が聞こえてきたり、背中が痛いと訴えたりと—。呼ばれたら昼夜を問わず、祖父のところに駆けつけていました」。当時は1980年代。2000年に始まる介護保険制度は創設されておらず、訪問介護や訪問看護は整備されていなかった。そんな中、祖母と南さんは医者ではない自分たちが祖父をみとることへの怖さや不安、それに迷いにさいなまれた。「肉親が在宅で死期を迎えたとき、家族はどうすればいいのか」という終末期医療の問題は学生だった南さんの生々しい経験として、その後も長く心の中に残った。「祖父がもっと満足できる介護はできなかったんだろうかと…、ずっと後ろめたいような気持ちを抱えていました」と話し、「その答えを見つけるために高齢者医療をやってきたのかもしれません」と振り返る。

専門病院に勤務
 イギリスから帰国後、猛勉強して東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年科の研修医となった南さんは再び、夫の海外転勤でスイスへ。そこで、日本法人グループ顧問医として約2年活動した。このときの関係者から紹介され現在勤めているのが、患者の平均年齢90歳、病床650床という都内にある高齢者医療専門病院だ。南さんは同病院の内科医として、約14年前から現場で“いのち”の終わりを見守ってきている。

 同病院で長年、高齢者医療専門に携わって分かってきたのは「高齢者医療は患者だけ診ていればいいのではなく、家族を含めての医療」ということだった。「本人はもちろん、家族も『ああ…、いい最期だったね』という思いで終わらせてあげたい」。日々の診療で感じるそんな思いを込め、患者を支える存在としての在宅医を描こうと思い立つ。「いのち」の終わりが、少しでも温かいものであるために高齢者医療はどうあるべきか、という問いに対し南さんの見いだした答えが「いのちの停車場」なのである。


©2021「いのちの停車場」製作委員会
「いのちの停車場」 日本映画
 監督:成島出、脚本:平松恵美子、出演:吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、石田ゆり子、田中泯、西田敏行ほか。119分。丸の内TOEI(Tel.03・3535・4741)ほかで公開予定。

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