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  東京版 令和5年4月上旬号  
「80歳は出発点」  チェリスト・堤剛さん

堤さん愛用の楽器は「290年前のもの」と言う名器「モンタニャーナ」。作曲家の権代敦彦は堤さんの演奏を聴くため、群馬県高崎市のリサイタル会場まで足を延ばした後、「80歳記念チェロ・リサイタル」のための新作を仕上げている。「高崎から帰ってきてから、演奏の難度を上げたそうです(笑)」。楽譜に目を通し、レッスンを積んだ手応えを語る。「(記念リサイタルの)プログラムの他の曲に劣らない優れた作品。こうした曲を真っ先に弾けるのは喜びです」
4月22日に記念リサイタル開催
 戦後、日本のクラシック音楽界をけん引してきたチェリスト・堤剛(つよし)さんは22日、自身の「80歳記念チェロ・リサイタル」でサントリーホールのステージに立つ。ほぼ70年に及ぶ演奏活動の「到達点」が聞ける絶好の機会。ただ、堤さん本人は「80歳は出発点ともいえます」とよどみない。数知れず弾いてきた名曲、日本人作曲家の新作世界初演—。「野心的」とも評されるプログラムを組んだ理由を語る。「チェロ、そして音楽芸術の世界をこれからも深め、広げたい。記念リサイタルは、私が目指すものをお示しする好機でもあります」

 「今度は初めから終わりまで出ずっぱり」。記念リサイタルを控え、堤さんは柔和な笑みを見せる。昨夏、満80歳になった後、「記念スペシャル・コンサート」をサントリーホールで開催。多数の日本人チェリストが「主役」を交え、「音楽家・堤剛の歩みと、戦後日本のチェロの軌跡」をたどる曲の数々を披露した。一方、今度のリサイタルは、後進を引き立て自分の出番を控えめにしたコンサートに対し、「私の全貌というか、『現時点の集大成』をお聞かせしたい。でも、決して『生涯の集大成』ではありません(笑)」。

8歳でリサイタル
 父は管弦楽団のコントラバス奏者、母は小学校の音楽教師で声楽家—。渋谷区に生まれた堤さんは6歳から父親にバイオリンとチェロを教わり、その後、チェリスト・指揮者の齋藤秀雄の指導を仰いでいる。才能の目覚めは早く、8歳でリサイタルのステージに。中学1年生のときは齋藤の指揮の下、交響楽団と協演した。「あえていえば、これが私の演奏家デビューかな?」。桐朋学園高校を卒業後、米国・インディアナ大学に留学し、齋藤の後押しも得て世界的チェリストのヤーノシュ・シュタルケルに師事している。「齋藤先生とシュタルケル先生…、お二人の教えは私がキャリアを重ねるにつれ、ますます腑(ふ)に落ちてくる。感謝と尊敬の念は消えません」

 大学在学中の1963年、ミュンヘン国際音楽コンクールで最高位に輝き、パブロ・カザルス国際コンクールでは1位入賞。卓越した演奏技術と豊かな音楽性が注目され、世界全域に活躍の場を広げた。クラシック音楽の演奏は、「複製ではなく再創造」。穏やかな口調で理由を説明する。「名曲は弾くたびに発見がある。『同じ』になるはずがありません」

「日本人として」
  その一方、日本の現代音楽の紹介も「私の使命」。初めはクラシック音楽のスタンダードを中心にしていたが、「日本人なのに、なぜ日本の曲を弾かないの?」。欧米で折に触れ、そう問われ、「ハッとさせられました」と苦笑する。民謡や尺八・三味線音楽などの要素を取り入れた現代音楽は、「それまで勉強してきたものとは違う演奏技術が必要。簡単ではありませんでした」。

 それでも間宮芳生、黛敏郎、矢代秋雄、武満徹、三善晃らの作品を海外で演奏し、「反響の大きさに勇気づけられました」と回想する。22日の80歳記念リサイタルでは、権代敦彦の新曲「無伴奏チェロのための“Z”ゼータ」を世界初演。「斬新でありながら難解ではなく、面白く聞いていただけるはず。もし難解に聞こえたとしたら、それは私の技術不足です」と意気込みを語る。

 権代のチェロ独奏曲を、ベートーベン、R・シュトラウス、プロコフィエフ、マルティヌーのソナタ、変奏曲が挟むプログラム。協演のピアニスト・河村尚子の実力を高く評価する。「河村さんだから、ピアノパートの難度が高い曲を入れられた。彼女との『丁々発止』から、どんな音楽が生まれるか? 私自身も楽しみです」。コロナ禍で自らが関わる公演の延期・中止も相次いだだけに、「お客さまの前で弾けるのは喜び」と言う。「(クラシック音楽の)演奏会は一方通行のようで、実は双方向。お客さまの反応から気付きを得ることも少なくありません」

「心棒」を自認
 堤さんは留学3年目にシュタルケルの助手となって以来、音楽教育にも情熱を注ぐ。「演奏と教育は活動の両輪。教えることで気付かされることも多い。私は二つをつなぐ『心棒』を自認しています」。インディアナ大学教授などを経て、04年から13年までは桐朋学園大学学長。現在は同大学特命教授を務める傍ら学外にも積極的に出向き、齋藤やシュタルケルの教えを「私なりに咀嚼(そしゃく)して後進に伝えている」と言う。01年からは霧島国際音楽祭(鹿児島県)音楽監督、07年からはサントリーホール館長も務め、趣向を凝らした企画を発案するなど、活躍の領域は、クラシック音楽全体に及ぶ。「チェロの可能性はまだまだあって、音楽芸術の可能性も果てしない」。20世紀最大のチェリストといわれながら、96歳で亡くなる直前まで演奏活動を続けたパブロ・カザルスの名も挙げ、強調する。「私も年を重ねてなお“新たな到達点”に向かっていける。そのおかげで心も老けないでいられます(笑)」

♪堤剛 80歳記念チェロ・リサイタル(東京公演)♪
 22日(土)午後2時、サントリーホール(地下鉄六本木一丁目駅徒歩5分)大ホールで。

 出演:堤剛(チェロ)、河村尚子(ピアノ)。予定曲:ベートーベン「チェロ・ソナタ第4番 ハ長調」、R.シュトラウス「チェロ・ソナタ ヘ長調」、権代敦彦「無伴奏チェロのための“Z”ゼータ〜堤春恵委嘱作品〜」、プロコフィエフ「チェロ・ソナタ ハ長調」、マルティヌー「ロッシーニの主題による変奏曲」。

 全席指定。一般S席7000円、同A席5000円。カジモト・イープラス Tel.050・3185・6728

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